今日は1日非番だ。さぁ、何をしようか。総悟からも仕事からも解放される……考えただけで心が軽い。とりあえず娘のなまえも待っているだろうし、そろそろ帰――。

「総悟お兄ちゃん、遊んで!」
「いいけど、ちょいと危ねェ遊びですぜィ?」
「あぶない?」

 障子の向こう側から聞こえてくる、聞き捨てならない不吉な会話。明らかに普段聞き慣れた声がふたつ。

「って、コラァ総悟! なまえに何て事吹き込むつもりだ! その前に、何でなまえがここに……!」
「何言ってんでィ。土方さんは勘違いが激しくて困りまさァ。それになまえは、わざわざアンタを迎えに来たんですぜィ」
「は…?」

 目の前には、シャボン玉を吹きながら楽しそうに笑うなまえ……を抱いている総悟がいた。くわえていた煙草を落とし、唖然とする。

「だってお前、危ねェ遊びって…」
「あー、なまえ。シャボン液飲むと腹壊すから、“危ない”でさァ。あんまりストローを上に向けちゃいけやせんぜ」
「はーい!」
「………」

 んだよ、俺ァてっきり総悟がバズーカの撃ち方でも教えてんのかと……。つーかコイツ意外に面倒見良いな。

「お父さん、見てみて! シャボン玉!」
「ああ、綺麗だな。なかなか吹くの上手ェじゃねェか」
「うん!」

 なまえは縁側から下りて、吹いたシャボン玉を追いかけながら中庭を走り回った。いつの間にか、それを見た隊士達も立ち止まって微笑んでいる。なまえのおかげで、疲れ切った隊士達の気も和んだのか。自分もまた微笑みながら、新しい煙草に火を点けた。



「何ニヤニヤしてんでィ、土方」
「うっせ。娘っつーのは可愛いモンなんだよ」
「まあ、なまえは母親似だからねィ」
「あ?」
「父親似だったら嫁に行けねェや」
「上等だ。嫁にやらなきゃいい話だ」
「……………」


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