私のお兄ちゃんは、部活の時も普通に遊んだ時も、何かといじられています。もちろん悪い意味ではなくて、ふざけてのものだけど。

「ちゃんと部室の掃除はしたのか?」
「やってるぜぃ、ジャッカルが」
「え? 俺?」

 真田先輩がお兄ちゃんに目を向けた瞬間、お兄ちゃんはビクッと肩を震わせる。それもそのはず、お兄ちゃんは掃除なんかしていなかったから。だって、今日の部室の掃除当番はブン太先輩だもの。

「ブン太先輩、今日の当番は先輩ですよ! お兄ちゃんは今日はゴミ出しだけだよ」
「なまえ…居たのかよぃ」
「マネージャーですから」

 お兄ちゃんの手を引いて、ゴミ袋を持って部室を出る。背後の部室からは、真田先輩の怒声とブン太先輩の謝罪が聞こえてきた。ブン太先輩には申し訳ないけれど、妹としては兄を助けないわけにはいかない。

「なまえ、ゴミ袋貸してみろ」
「へ?」
「さっき助けてもらっちまったし、重いだろ。俺が持つ」

 ゴミ袋を渡してお礼を言うと、お兄ちゃんがそっと頭を撫でてくれる。途中で赤也に会って絡まれたけれど、直ぐさま飛んできた真田先輩に、たるんどる!と怒鳴られていた。どうやらボールが出しっぱなしだったらしい。

「ったく、赤也といい丸井といい…」
「でも皆面白いよね、立海テニス部は」
「…まぁな。それより、お前は真田とか怖くねぇのか?」
「私は別に、真田先輩に怒られた事もないからなぁ…別に」
「……なまえには甘いからな、真田は」
「え?」

 意味が分からずお兄ちゃんを見上げると、そんなのはいいから気にすんな、と髪をぐしゃぐしゃにされる。
 部室までの帰り道ですっと手を伸ばせば、優しく握り返してくれた。そのまま部室へ戻った数分後には、またお兄ちゃんが皆にいじられるのだった。



「何なまえと手繋いでんだよぃ」
「いてっ…おい、何すんだよ丸井」
「たっ…たるんどる!」
「は、はぁ? 妹なんだから別にいいだろ…」


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