俺がせっかく作ったゴーヤチャンプルー、ゴーヤとオクラの醤油和え、ゴーヤの味噌汁、ゴーヤの炊き込みご飯。ゴーヤによる栄養たっぷりのこのスペシャルメニューを、この妹は全て食べ残した。

「なまえ、また残しましたね」
「だって…ゴーヤばっかりさぁ」
「…全て箸はつけているのに、なんで全部は食べないんですか」
「ゴーヤは大好きなんだけどさ…苦いし飽きるさー」
「………」

 溜息をひとつ吐き、仕方なく残りの料理をタッパーに詰める。入り切らなかった分も、もちろんラップをかけて保存。こうなったら意地でも明日の朝、また出してあげましょう。



「…にーにー、これは何ね?」
「昨日の残りですよ。食べなさい」
「………」

 顔を青くして箸を置くなまえの小皿に、ゴーヤチャンプルーを少し分けてやる。頬を膨らませながらも食べ始めるのを見て、それでいいんだと言わんばかりに頷くと、髪のセットを直しに洗面所へ向かった。何とか髪を纏め直して部屋へ戻ると、なまえがテーブルに突っ伏していた。呼んでも反応が無いので駆け寄って額に手を当てれば、どうやら熱があるらしい。

「にー、に……」
「これは…今日は学校に行くのは無理ですね、仕方ない」
「けほっ……にーにー…?」

 咳をしながらこちらを見上げるなまえには、部屋で着替えて寝ているように言い付けて、俺はなまえの欠席と自分の遅刻を学校に連絡した。そして再び、キッチンへと向かう。

 風邪を引いた時は、やはりお粥でしょう。



「でね、凛先輩! にーにーってば、私にゴーヤ粥なんか作ったわけよ!」
「おえぇ…よく生きてたさー、なまえ」
「全体的に緑でさ? もう、にーにーの前で二度と寝込まないって誓ったさー…」
「今度熱出た時は、見舞いに行ってやるさー」
「…なまえ、帰りますよ」
「……は、はい…」
「………(まぶやー、まぶやー)」



―――――

にーにー:お兄ちゃん
まぶやーまぶやー:怖い怖い

※地域や言葉によって、言い回しや意味が違う事があります。



[ back ]