俺が散歩に出ようとしたら、背後からなまえに大声で呼び止められた。このなまえというのは俺の姉で、高校生だ。

「侑士、頼みがあんねん」
「何やねん。そない急いで」
「アイス買うてきて。散歩なら、コンビニの1つや2つ通るやろ」
「…………」

 この寒い時にアイスを買うてこいと。我が姉ながらどんな腹してんねん。壊すで、絶対。しかし俺は情けない事に、この姉には逆らえない。ずいっと差し出された500円玉を仕方なく受け取り、外へ出た。

「もうすっかり冬やな」
「ああ…って、なんで居んねん」
「私も散歩しよー思て」
「…………へえ」
「なんや、その冷めきった反応」

 今度は真横から急に聞こえた声に、多少驚きつつも冷静にツッコミを入れる俺。なんで人にアイス代預けといて自分も来んねん。そんなら最初から自分で買いに行った方が早かったんちゃうか?
 なまえのする事は、たまによく分からない。

「……俺、一緒に行く意味あるんやろか」

 気になったので問い掛けてみると、数歩先を歩くなまえが振り向いた。

「たまには、姉弟だけで並んで歩くのもええやろ?」


***


「次は謙也も一緒がええなあ」
「なまえは彼氏でも作ったらええやん」
「そない簡単に彼氏出来るなら弟となんて歩かんわ阿呆」
「………(触れたらアカン所に触れてもた)」


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