「あ! なまえ姉さん。今日は遅かったですね、おかえりなさい」
「ただいま、アレン」
「お疲れ様です」
教団の自室のドアを開けると、中には大切な弟のアレンがいた。隣に来て私の荷物を持ち、奥へと運んでくれる。さりげないアレンの優しさに笑みが零れた。
「っ、痛……」
ベッドの端へ座ると、曲げた足に刺すような痛み。そうだ、数が多いAKUMAから距離を取ろうとして、方向転換した時に――きっと捻ったんだ。あの時は必死だったから気付かなかったけれど、意識してしまうと急に痛み出すもので。
「なまえ姉さん? どこかケガでも…」
「う、ううん! 何でもないのよ」
ただでさえ最近任務に引っ張り凧な弟に、これ以上心配をかけまいと足の事は隠したが、そんな嘘は彼には通用しなかった。
「なまえ姉さん、足を見せてください」
「…本当に何でも…」
「隠さないでください。足、捻ってるんじゃないですか? …動かせないほどに」
我が弟ながら、非常に鋭い。確かに動かせないのだ。余程強く捻っていたのだろう。その足でここまで歩いて帰ったのだから、今まで気付かなかった自分に驚いている。
「……ごめんね、アレン」
「いいんです。この程度なら、しばらく静かにしていれば治りますよ。おそらく」
にこりと微笑むアレンの髪に、指を通す。アレンは少し驚いたようで、目を丸くした。無理もない。こんな年になってから頭を撫でたのなんて、初めてなのだから。
「…いつの間に、こんなに強くて格好よくなったのかしら」
「なまえ姉さん…?」
「大きくなったよね、アレン」
「…背はあまり伸びてない…けど…」
「ふふ。背丈だけじゃないわ」
さらりとした髪を軽く指で梳いてやると、アレンは照れたように笑った。
「ほら、なまえ姉さん。早く休んでください」
「うん。ありがとうアレン」
「早く治してくださいね、足」
「…わかってる」
僕にとってなまえ姉さんは、ずっと一緒に生きてきた、たったひとりの大切な"家族"。
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