「パパー!」
「おっ! ただいまさー、なまえ!」

 大きく両腕を広げて走ってくるのは、大事な一人娘のなまえ。俺から見たらまだまだ小さくて危なっかしいけれど、可愛くて仕方ない。

「なまえ、大人しくしてたか?」
「うん!」
「そっか」

 元気に答えて頷くなまえに笑いかけ、頭を撫でてやると、ある異変に気付く。

「…なまえ、その膝…どうしたんさ?」

 異変とは、膝に貼られた血が染みたガーゼだった。細く白いその足には、酷く痛々しく映えている。なまえを一度ソファへと下ろし、わなわなと震えながら問う。

「これね、ころんだの。アレンおじさんが、ガーゼをはってくれたの!」
「そ…そっか…」

 これは、アレンに菓子折り持ってしっかりお礼しなきゃいけないさ…!
 その場にアレンがいなかったら、傷をほったらかしのまま、泣きながら俺を待っていただろう。しかし痛々しい。どうやったらこんなに派手に擦りむくのだろう、きっと薬や消毒がしみたろうに。お風呂でも、お湯がしみるに違いない。

「代わってあげたいさ…!」
「パパ…?」
「な…何でもないさ。ほ…ほら、なまえ! お風呂入るか!」
「うん!」

 笑顔で俺の手を取って頷いたなまえが、湯舟に浸かった瞬間にこの世の終わりかのように大泣きしたのは、言うまでもない。

 俺ならこんな傷、平気なのに。ああ…代わってやりたいさ…!

「なまえ…だ、大丈夫か?」
「もうおふろきらい!」
「………」


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