私の兄は、エクソシストをしています。そう言う私もエクソシストですが、兄にはまだまだ及びません。

「おい、なまえ。酒」
「まだ朝よ、兄さん」
「いいじゃねェか、少しくらい」

 むくれながら、一息ついて水を口に含む。不満そうな顔がこちらを向いた。

「何よ、兄さん」
「……物足りねーな、水じゃ…」
「リナリーと考えての事よ」
「あ? リナリーと?」
「最近飲み過ぎだから、しばらく水を出しましょうって。禁酒、禁酒!」

 兄さんはしばらく黙ると、水を一気に飲み干して私を傍に呼んだ。嫌な予感はしているけれど、行かなかったらきっと怒られるだろう。そっと兄さんと向かい合って立つ。

「……何?」
「相手しろ、俺の」
「はい?」
「一人っきりで水なんか飲んでられるかよ…酌しろ、酌」

 ん、とグラスを向けられて、仕方なく水を注ぐ。満足そうに微笑んだ兄は、その一杯を酒のように再び飲み干した。すると兄さんが私にもグラスを持たせ、その中になみなみと水を注いでいく。

「兄さん?」
「お前も飲め。水だけどな」

 ふっと笑いかけられれば拒否もできず、水を一気に飲む。はあ…と軽く息を吐くと、兄さんは目を丸くした。

「ん…何、今度は」
「なまえ、お前…“女”になったな…」

 まるで口説くかのように優しく髪を梳かれて、飲みかけの水を全て噴き出してしまい、げほげほと咳込む。……実の兄を相手に、私はきっと今真っ赤なんだろう。


 妹がに見えた日


「しっ…師匠! なまえにまで何を…!」
「ん? 一緒に水飲んでるだけだろうが」
「手っ、肩抱いて…っ! その手!」
「…妹の肩を抱くくらい、いいだろ?」
「妹だってなまえだって、女性ですよ! セクハラですよ師匠!」
「うるせーな、黙れバカ弟子」
「何とでも言ってください。そしてさっさとなまえから離れて下さい」


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