「あれ、ユウ! 早いね!」
「あ? ……チッ…やっと起きたか」

 もう皆起きている時間だというのに、堂々と寝坊をしたコイツ…なまえ。すでに朝食を済ませて鍛練をしに行こうとしていた俺に、“早いね!”だと…?
 こんな奴と双子なんて、恥ずかしいぜ……モヤシもこっちを見てやがる。

「…あのな、今はもう9時になるんだぜ。早くも何ともねぇ。なまえは寝過ぎだ」
「へ? ………あー!」

 時計を見直して大声を上げるなまえを見て、深い溜息を吐く。堪えきれなくなったのだろう、モヤシ達が笑いながらこっちへ歩いてきた。面倒だからこっちに来んな…なんて念は、もちろんやつらには通じない。

「なまえ、おはようございます。もう皆、朝ご飯食べちゃいましたよ?」
「なまえがどうしてもって言うなら、俺が一緒に行ってやってもいいさー!」
「ラビ、抜け駆けですか?」
「そ…そんなんじゃないさ!!」
「ふふ、皆おはよう」

 ああ、うるせぇ。

「おい、なまえ。俺はもう行くぞ」
「え、ユウ…どこ行くの?」
「…修練場に決まってんだろ。鍛練しに行くんだからな」
「私も行く!」

 また始まった。なまえの“私も行く!”。昔から俺の行く先々、全てについてこようとするから困る。教団入りしたのだって、エクソシストになる事ももちろん大きな理由だが、一番は俺から離れたくないからと無理についてきたからだ。

 俺から見れば、なまえにとっては危険な事だ。なるべく俺と同じ道になんて、来てほしくないのが本音。俺自身がどうなろうと構わねぇが、なまえに万一の事があったら…なんて、柄にもなく考える自分が居る。鍛練も、俺と同じ内容じゃ怪我をするかもしれねぇし、ついてきてほしくはない。

「…怪我するぞ。なまえはモヤシの根みたいに細ぇからな」
「いい。怪我なんか怖くない、ユウと行く」

 昔から、強情なのも変わらない。

「…知らねぇぞ」
「うん!」

 満面の笑みで後をついてくるなまえの軽い足音に、思わず口元を緩ませちまったのは、俺しか知らない。



「……あのユウが、笑ったさ」
「しっ! ラビ…きっと神田は、今の笑顔は誰にもバレていないと思っています。内緒にしておきましょう」
「…分かったさ」


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