「俺は鍛練に行くんだ」
「いや!」

 なまえは俺の言う事を全く聞かない。いや、全く聞かないわけでもないが、鍛練に行くから留守番していてくれと言っても「いやだ」の一点張り。こればかりは何度言っても言う事を聞かず、毎回なまえを留守番させて修練場へ行くだけでも、疲れてしまう。

「ユウの奴、またなまえを泣かしてるさ」
「なまえはまだ小さいですし…そりゃあ、お父さんが出かけると言ったら寂しいですよね。僕らにも、どうにも出来ません」
「そうだな…」

 あっちでモヤシ達が何か話しているが、それどころじゃない。今日のなまえは特に頑固で、なかなか離れてくれない。しかし、長期任務で教団を発つ日も近く、鍛練を怠るわけにはいかないのだ。

「おい、なまえ…いいか、俺は仕事で――」
「ユウ」
「あ?」

 何とか説得しようとしてなまえの前に座り込んで話し始めると、隣から名前を呼ばれた。テメェその呼び方をやめろ、と言おうとして振り向く。

「てめ、」
「待った待った! 別にちょっかい出しに来たわけじゃないさー!」
「なまえの事、僕らでよかったら鍛練中預かりますよ」
「…は?」

 いつもいつもお留守番で、なまえも寂しいでしょうから――と、モヤシが続ける。なまえを預かってくれるってんだ、こいつらに感謝するなんてこの上なく悔しいが、俺にとってはかなりの好都合だ。なまえも、お兄ちゃん遊んでくれるの?と喜んで寄っていく。

「……じゃあ、頼む」
「ほんとにユウは素直じゃないさー。もっと喜んだらいいのに」
「黙れ」

 なまえの頭を撫でて「行ってくる」と呟き、修練場へ向かおうとしたその時、なまえの発言はまた俺を困らせるのだった。



「お父さんも遊ぶの!」
「いや、なまえ! パパは用事があるんさ!」
「そうですよ、なまえ。なまえは僕らと一緒に、食堂でデザートでも食べましょう」
「え、ほんと!? パフェ? ケーキ?」
「………(あっさりかよ)……じゃあ、俺は鍛錬に行ってくる」
「あはは…いってらっしゃい」


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