暁のアジトから少し離れた所にある、俺のもう1つの家。そこには、俺の大切な人が暮らしている。

「なまえ姉さん! 今帰ったぞ、うん!」
「デイダラ、久し振り。今回はずいぶん長いお仕事だったのね、ご苦労さま」
「…ああ」

 姉さんには、"仕事"の内容は告げていない。きっと優しい姉さんの事だ、内容を言えば当然反対するだろう。この家に入る時には、あの暁での服も着替えて、暁に入る前と何ら変わりはないごく普通の服を着ている。暁のやつらには、この家の事も姉さんの事も、何も話していない。姉さんにだけは、危険が及んでほしくないからだ。

「デイダラ、どうしたの?」
「……え」
「何だか難しい顔をしているわ」
「あ…ちょっと、仕事で旦那…いや、先輩に怒られただけだ。うん」
「そう。しっかりね?」
「分かってる…うん」

 悟られちゃ、いけない。

 少し奥で休んだらまた出かけるからと言って席を立つと、なまえ姉さんが柔らかく――しかし哀しげに――微笑むのが見えた。


 本当は、知っているの
 あなたの仕事の事も、私に心配や苦労をかけまいとして隠している事も


「デイダラ、無理はしないで」
「分かってるぞ、うん!」

 本当は知ってたんだ。勘の良い姉さんは、知っているんだろう。それでも黙って見送ってくれる姉さんの事を、俺は護りたいんだ。うん。


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