「なぁなぁ、なまえ姉ちゃん。なまえ姉ちゃんってば!」
「なーに、ナルト」
「ちょっと待っ……いったい、どこ行くんだってばよ!?」
「……さあ、どこかしら?」
「なまえ姉ちゃん?」
「いいからついて来なさい」
「…わ、分かったってばよ…」

 さっきからどこに何をしに行くのか知らされないまま、俺はなまえ姉ちゃんの後に続いて歩いている。もう昼も過ぎちゃったし、腹も空いてきたってばよ……でも、まだ目的地に着く気配はなく、ただただついていく。

「なまえ姉ちゃん…俺、お腹空いたってばよ」
「もうちょっとだから」
「……む…」

 少々不満を覚え始めたが、促されるまま森の中を走る。……なまえ姉ちゃんてば、足早いぜ。だんだん俺疲れてきたぞ? 最初に飛ばしすぎたってばよ…。
 疲労と空腹でフラつく足元に気を配りながら、なまえ姉ちゃんに必死についていく。……ほ、本当に、どこまで行くんだ…?

「ここよ」
「わわっ!」

 急に止まったなまえ姉ちゃんの背中に、突っ込むように停止する。しっかりしなさいよと背中を叩かれて、そんな事言ったって…と顔を上げた先の光景に、目を見開いた。

「遅ぇんだよ、ウスラトンカチ」
「あんたが遅いから、サスケ君やなまえさんにまで迷惑かけて!」
「まぁまぁ。ナルト…ま、おめでと」
「おめでとう、ナルト!」

 そこにはサクラちゃんやイルカ先生、カカシ先生や…ま、まぁサスケも…それに、他の皆や火影のじぃちゃんまで、皆居た。俺はまだ全く状況が読めていなくて、隣に立つなまえ姉ちゃんを見上げる。

「ほら、あんたにおめでとうって言ってんのよ。ナルトも何か言いなさいよ」
「え…だだだだって、俺ってば…ただなまえ姉ちゃんに連れて来られただけで、何で祝われてんのかサッパリだってばよ…!?」
「……あんた誕生日でしょう、今日」

 なまえ姉ちゃんの言葉に、はっとする。うっすらとしか覚えてないけど、確かに今日――10月10日は、俺の誕生日だ。でも、なまえ姉ちゃんしか知らないはず。仮にサクラちゃん達は知っていたとしても、皆や先生達は知らないはずだ。

「あんたねー、誕生日くらい皆に言っときなさいよ! 知らないって子がたくさん居て、驚いたんだから!」
「ほらほら、ナルトもなまえも。早くこっち座りなさいって」

 変な本を読んでいるカカシ先生に促され、姉ちゃんと一緒に隣に座る。

 ――何で、何で皆。

「じゃ、お昼も過ぎちゃってる事だし。2人も席についたし…そろそろ始めようか」

 ――何で皆、

 “誕生日おめでとう、ナルト!”

 ――何でこんな嬉しい事、してくれるんだよ。

 今までずっとひとりぼっちだと思っていた俺は、こんな風に皆に祝ってもらう誕生日なんか、初めてだってばよ。誕生日って、こんな嬉しくて、こんな楽しいもんだったんだな。へへ…1人で過ごしてた今までの誕生日、無駄にしちまったってばよ。

「ナルト、何泣いてんのよ!」
「そうよ。皆あんたの言葉待ってんのよ。主役のナルトが何か言わなきゃ、料理食べられないじゃない」

 皆の顔を見たら、姉ちゃんもサクラちゃんも笑ってて、火影のじぃちゃんも先生達も、シカマル達も…皆笑ってた。サスケは泣いてる俺に向かって「早くしろよ、ウスラトンカチ」とか言ってきたけど。

「皆ありがとう、俺…こんな楽しいの、生まれて初めてだってばよ!」

 そう言ったら、火影のじぃちゃんが乾杯の音頭をとって、里の森の奥のパーティー会場は、また優しい笑顔でいっぱいになった。


 初めての、誕生日パーティー


「カカシ先生! 人の誕生日パーティーでエロ本読むの、やめろってばよ!」
「んー? ま、ナルトも今日は誕生日だし…ちょっと読んでみるか?」
「………字ばっかりだってばよ」
「カカシ先生、ナルトに変な事教えないで下さいね!」
「なまえは厳しいなー……よかったらなまえも読む?」
「読みません! 嫌です、こっち向けないで下さい!」
「カカシ先生、姉ちゃんに変な事すんなってばよ! セクハラだっ!」
「セクハラ!? 先生、なまえさんにいったい何を…」
「サクラまで……これ、面白いのにな」


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