今、俺は酷く苛ついている。任務は無事に済ませたものの、その後の処理に思いの外手間がかかり、帰りも遅くなってなまえにも心配をかけてしまった。とりあえず鬼鮫に少し当たり、落ち込む鬼鮫をそのままにして、アジト内の個室へと戻る。

「なまえ」
「あ…イタチ」

 個室に戻ると、室内の掃除をしてくれていたなまえがこちらを向いた。

「おかえりなさい。今回の任務はずいぶん長引いたのね。強かったの?」
「いや…後始末がな。もっとも…手こずったのは鬼鮫の奴だが」
「そう…でも、怪我がなくてよかったわ」

 鬼鮫も災難ね、と笑うなまえに軽く微笑して、布団へと向かう。双子であるなまえの力なのか、不思議な事にすでに苛つきは治まっていた。綺麗に整えられた布団は、なまえが用意しておいてくれたのだろう。

「イタチ、もう寝るの?」
「ああ…今日はもう動けんだろう」
「使ったのね、その瞳」
「………ああ」

 どこか哀しげな声に小さく返事をして、布団へと潜り込む。するとなまえが、また小さく呟いた。

「次にサスケに会うのは、いつになるかしらね」
「…さぁな」
「私は双子であるイタチについてきてしまったけれど…あの子はどうしているかしら」
「………いずれ分かるだろう」

 そう答えて、無理矢理眠る。なまえは、いつかまた兄弟揃って暮らす日を楽しみにしているようだが…きっと次にサスケに会う時は、そうはならぬのだから。


 来ることのない、いつか


 兄弟が再び揃うのは無理だろうが、なまえ――お前は、決して死なせない。
 サスケはお前を、最後まで好いていた。だから俺は無理でも、お前達2人でなら……きっとまた昔のように、暮らせるだろうから。


[ back ]