俺の妹のなまえは、昔からの甘え癖がどうにも直らない。シカマルと将棋をやっている間も、俺の隣にずっとくっついたままで。

「…またなまえくっつけてんのかよ」
「いや、くっついてんだよ……なまえ、お前ちょっと離れてろ。また負けちまう」
「やだ」

 ぎゅっと服の裾を握られて、仕方なく頭を撫でると嬉しそうに笑う。……シカマルが少し赤くなってんのは、兄としては多少気に食わねーがな。

「あ…また取られたか」
「これは今日もシカマルの勝ちだね」
「なまえ、お前がくっついてて本気出せなかっただけだ」

 悔し紛れの言い訳も、シカマルに鼻で笑われた。なまえもくすくす笑ってるし……まったくお前は、と軽く小突くと、額を押さえて大袈裟に「痛ぁ!」と反応した。

「なまえ、茶淹れてくれ。シカマルのもな」
「分かった!」

 ぱたぱたという軽い足音が台所の方へ向かったのを確認し、煙草に火をつけて先程より真剣な顔でシカマルに向き直る。

「なぁ、シカマル」
「あ?」
「お前、なまえを嫁にもらってくれねーか」
「……は?」
「いや、なまえの事嫌いじゃねーだろ? なまえもお前には懐いてるし。それに何より、お前ん所なら俺が安心できる」
「な……」
「ハハハ、冗談だ。……本気にしたか?」
「……めんどくせー…」
「……ハハッ、言うと思った」

 そこまで冗談混じりに話した所で、なまえが茶を持って戻ってきた。茶を受け取ったシカマルの顔が少し赤くなり、それを見てなまえもまた赤くなるのが、ちょっと微笑ましかったりする。



「な? なまえが淹れた茶は美味いだろ。いい嫁になるぞ」
「………」
「兄さん、何の話?」
「いや、ちょっとな。男同士の話だ」


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