私は、砂隠れの里の風影の妹だ。通りへ一歩出れば、風影である我愛羅の妹だからと、様付けで呼ばれたり――歩いているだけで、挨拶やら何やらで疲れてしまう。そんな事を考えながら歩いていると、また挨拶をされた。

「なまえ様、こんにちは」
「……ええ、こんにちは」

 振り向いて、いつも通りに会釈をして頭を上げる。するとそこにあった顔は、とても見慣れた人のもので。

「なまえ、こんな所で何をしているんだ」
「兄さん…驚かさないで」
「確かなまえは…皆から俺の妹だからと特別扱いを受けるのを、嫌がっていただろう」
「……うん」
「なら、何故わざわざ外へ出るんだ」

 不意に聞かれた内容に、戸惑う。理由――そういえば、私は何故家を出て、こうして歩いているんだろう。仰々しい挨拶をされたりして、面倒なだけなのに。

「……わかんないや」
「………そうか」
「うん」

 兄さんと一緒に歩いていると、さっきまでよりも多くの人が声をかけてくる。にこにこと笑顔で寄ってきては、店の食べ物の試食や、新しい着物などを勧めたりもしてくれる。兄さんも笑顔でそれを食べたり、着物を合わせてみたり……なんだか、前よりも里の皆との絆も深くなったみたいで。

「なまえ、楽しいか?」
「え?」
「……笑っているぞ、顔が」

 知らず知らずのうちに、私も笑ってしまっていたらしい。

「分かったか?」
「?」
「“何故、外へ出てしまうか”だ」
「! ……うん」

 ――私って、この里も、皆も…好きなんだ。

「…それでいい」
「うん」
「俺もこの里も、皆も…好きだ」
「……うん!」


―――――


「風影様、どちらへ?」
「なまえと一緒に街を見てくる」
「……また、なまえ様とご一緒にですか」
「ああ。里はもちろんだが、俺にとっては妹との時間も大切なものだ」
「お気をつけて」
「ああ」


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