「おい、なまえ」
「何? 兄さん」
「俺の分の昼飯は無いのか?」

 任務を終えて家に帰ると、なまえが今まさに昼飯を用意しているところだった。なのにどういう事か、俺の分は用意されていない。まあ、特に連絡もなく急に帰ったんだし、仕方ないんだろうが……。

「だって兄さん、急に帰ってきたじゃない。もっと長期になる任務だと思ってたわ」
「……腹が減ってるんだ。何かないか?」
「りんご」
「…外で何か買ってくる」

 真顔でりんごを差し出され、面倒だが外に昼飯を買いに行く。こうなったらラーメンでも食べに行くか。そう考えて一楽へ向かうと、そこにはすでに先客がいた。

「アスマ隊長」
「イズモか。家で兄妹水入らずじゃなかったのか?」
「いや……急に帰ったもんで、家には昼飯になるような物がなかったんで」
「はは、そうか!」

 すでにラーメンを食べ終えていたアスマ隊長は、追加でもう一品頼むと、俺の昼飯に付き合ってくれた。腹も満たされ、盛り上がった話も一段落した所で、アスマ隊長に礼を言って家へと帰った。
 気付けば辺りはもう薄暗く、ちょっと盛り上がり過ぎたかと頬を掻く。すると、家の前で腕を組み、仁王立ちしているなまえが目に入った。

「何やってんだ、なまえ」
「それは私の台詞。どこ行ってたのよ」
「どこって……昼飯に」
「暗くなるまで?」

 両頬を膨らませるなまえの頭を撫でて、悪かったと一言謝って落ち着かせる。中へ入ると、もう夕飯が出来ていた。

「ずいぶん豪勢だな、今夜は」
「今日はちょっとだけ奮発。特別よ?」
「へえ? 珍しい事もあるもんだな」

 ふっと笑うと、脇腹を小突かれる。そして、任務でなかなか食べられない間にすっかり腕を上げたなまえの料理を、妹の成長を感じながら食べた。



「お前、料理上手くなったな」
「ありがと、兄さん」
「ん? 明日は弁当でも作るのか? 俺ら二人の朝飯にしちゃ、量が多いが…」
「…あ。明日はカカシさんに、お弁当を頼まれてて…」
「……………」

 ――そういう事、か。


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