Underdog

「大海賊時代 唯一のギャルじゃん?」

ド派手に生きなきゃ損じゃんね?

令和を生きるギャルが大海賊時代にトリップ。ギャルマインドで周りのペースを乱し、場を引っ掻き回しながら、楽しく自由奔放に生きていく話。

※自我強め固定夢主、名前アリ

※書き殴り&拙い文章がにこいち

※n番煎じ

※時系列やキャラ口調、設定があやふや

※展開が急。全てが有耶無耶。もはや雰囲気。「マァそんなもんか」でご覧になって ※なんでもいける方向け

※全ての作品を網羅している訳では無いので、似たような作品があったらすみません

※読了後の文句は受け付けておりません

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エースはこのキチガイ女が嫌いだ。

だってアタマが可笑しいから。

「エ、ウマ。コレはやべえ、今まで食べてきた中で一番ウマいかもしれない」

手元の肉を眺めて目を丸くしたのは、百目木 優(どめき まさる)である。

その言葉に不思議そうに首を傾げて、「そうかぁ?」「そうだよウメーよ」「いやウメーのは分かるんだけどよ」「肉っていう事実だけでウマくね」「いやそれも分かるんだけどよ」とアホとアホみたいな会話をするルフィ。分かっちゃうのかよ。エースには馬鹿共の感性は分からないので、黙って食事を続ける事にした。

女は骨付き肉を「一番」と表したが、切ったモノをそのまま焼いた程度で、塩やら胡椒やらの調味料がかかっている訳ではなく、特に手が加わった訳でもない。本当にただ焼いただけ。ウン、いつもの油っこい味。美味いには美味いのだが、突出した美味さがないようにも思える。コレのどこが一番なのか。

そういえば、女はこの前も果実を分け与えたら

『金払うレベルだわコレ。一番ウマイわ』

とスイカ程の大きさの果実を6つ美味そうに平らげていたので、口癖なのだと思う。多分。2日に1回は更新されてるので、女の云う「一番」は、とんでもなく軽い。

「ヤバ…深夜に食べるポテチくらいウマ……背徳的すぎじゃん」

「ハイトク敵? 何だソレ つえーのか」

「強い。我々の一生の敵。背徳的な飯を前にダイエットを中断せざるを得ない同胞を何度見てきたことか…」

「そ…そんなにつえーのか、ハイトク敵…!」

「ルフィにとっても間違いなく強敵だね」

どんな敵を想像しているのか、神妙な面持ちで喉を鳴らすアホな弟と、真剣に頷く これまたアホな女。なんだか話が噛み合ってない気がしたので、混ざるのもバカバカしいと思ったエースは食事を再開した。

百目木 優はギャルである。しかもかなりアホ。

『いいかい、よく聞くんだぞショーネン。私(あたし)はギャルなの、この大海賊時代で唯一のギャルなワケ。だから重宝して♡』

初対面でこのアホっぷり。アホ世界選手権大会でも目指してるのかしらとエースは沈黙した。架空の大会を思い浮かべるレベルのアホ。

意味分からん事を並べて 星が飛んできそうな華麗なウインクをかましたギャルというかメンタル強のキチガイ女に、エースは「ア関わらんとこ」と思った。巫山戯んなこんなアタオカと暮らしてたまるか。ヒグマの方がまだマシ。

けれどこの女、どれだけ隠れて避けようが必ず見つけだして「エ〜〜ス♡」と甘ったるい声で食事を求めて擦り寄ってくる。この前だって、森の中で1番高い木の上のテッペンで身を潜めていたというのに、通り過ぎるかというところでグリンッッと首を捻って「見っけ♡♡」とエースを真っ直ぐに見詰めてきた。フクロウも後退する首の動き。こわ。

それを2ヶ月ほど繰り返した後、エースは避けるのを辞めた。避ける方がエネルギーの無駄だと気づいたので。あと見つかって抱き着かれた時の、あの、ふくよかな胸が、その、鬱陶しかったというか。お察しの通りエースは思春期であった。

マァでも確かにこの女、キチガイではある。だが毛先にいくにつれ緩やかな波を描き出した金糸の髪に、スイスブルートパーズの瞳が特徴的な麗人でもあるのだ。

そう。この女、顔はいい。顔面だけなら100点満点中120点を行く女。パーフェクト。

「ア見てみエース、もがき苦しむカナブン。ウケる」

「ヤメロ」

だが口を開けばコレである。ウケるってなんだ。カナブンだって必死こいて生きてんだぞ失礼だろ。フンッとそっぽを向いてまた肉に齧り付くエースに、アタマのネジが綺麗に吹っ飛んだ女はケラケラ笑っていた。思春期揶揄うのチョ〜楽しい。

思春期を揶揄うのを楽しんでる女はルフィと同時期にやって来た。

『制服』なるものを着崩した見目好い女に、正直に言って最初はエースもドギマギした。思春期だから。

ジジイ曰く、女をここに預けるのは社会見学とかナントカカントカ。けれど初対面は上記の通りだったので、近所の綺麗なオネエサンに抱くような少年の淡い気持ちは呆気なく崩れ去った。なんかもう返せ。色々と。

それからこの女のキチガイっぷりは存分に発揮された。

何かしてると思えばチンピラの口に爆竹ぶっ込んでたり。

金槌でチンピラの股間潰そうとしてたり。

戦闘力雑魚の癖に力だけは強いから、抵抗できないチンピラの服ひっぺがしてグレイターミナルの扉に全裸で磔にしたり。

全裸のチンピラ見て「…ちっせ〜笑」て鼻で笑ったり。

必ず被害に合うチンピラ。

チンピラが可哀想だからやめてやれ。

『だって私に襲いかかってきたんだもん。せいとーぼーえーだし』

爪とか見ながら胡座かいてるキチガイはそんな事云ってた。「過剰防衛って言葉もあるんだぜ」と内股で顔を青くしてるサボにキチガイは顔を上げてニコォ…て笑った。百目木のターン、キチガイスマイル召喚。

2人してタマがヒュンッとなった。

唯一分かってないのはルフィだけ。「? マサル勝ったのか?」「そーよマサル勝ったのよ」「へー! すっげ〜〜な! 俺にも戦い方教えてくれよ!」「ヨシじゃあ金槌を持って着いておいで♡」「分かった!!!」てして街へ繰り出した2人を止めようとしたがもう既に現場は手遅れだった。

『ここにチンピラがおるじゃろ?』

『おう!!』

『これを〜こうして〜こう♡(キンタマ殴って気絶)』

『ぷぇ』

気丈なルフィが初めて腰を抜かした。skyみたいな声と3つの点があるだけの顔。ボーリングの玉みたいな顔してる。

その後暫くはキチガイがルフィと話そうとするとあの顔で「ぽゎ」「ぷあ」「ぷわ」だとか怯えたように首をゆるゆる振って静かに後退してた。あのルフィが。猿みたいにウキウキうるせー元気が服を着たようなモンのルフィがである。

ギャル、未来の海賊王にトラウマを植え付けるの巻。

『ルフィ〜…? この前はごめんねぇ、ほらネーチャン怖くないよぉ』

『ぷぁ』

『ヤメロこれ以上ルフィに近付くな!!! 妖怪金玉潰し女!!!』

『ルフィの金玉を潰すくらいならいっそ俺のを…!!!』

『いやそんな事しないて』

『やめてくれエーズッザボォ、2人の金玉まで潰れちまうよォ……!!!!』

『バカヤローッ!! 弟の金玉が潰されるのを黙って見る兄貴がいるかよ!!!』

『エース…!』

『お前は俺達の大事な弟なんだ!!!』

『サボォ……!』

『コイツらタンスの角に小指ぶつけねーかな』

事の元凶は髪とかいじりながら死んだ目をしてた。

なんか兄弟愛のダシにされてんのは気の所為かしら。いや気の所為ではない。

とマァこんな感じで反語を使いながら元気にキチガイしてる女だが、狩りができなくてもダダン一家の拠点に置いてもらえているのは訳がある。

このキチガイ、料理がべらぼうにウマイ。

『ハ? 食べるモンが芋と肉だけ? 馬鹿じゃん栄養管理どーなってるワケ』

生活習慣病がドーチャラコーチャラなどとダダン達を説教する女に、珍しくダダン達はガープ以外で怯えた。だってギャルの凄む姿、迫力が凄いんだもの。

そこから栄養満点の野菜スープだったりエース達が仕留めたイノシシを野菜と炒めて卵で閉じた料理だったり、家庭的な料理が食卓に並ぶようになった。金は百目木がガープに「子供預けんなら教育費くらい充てろよ」て凄んで脅し取ってた。怒り狂った女は海王類より怖いらしいので。

「どしたんエース、こっちチラチラ見てっケド」

「ハ? 自意識過剰もいい加減にしろよ」

「照れんなって。アもしかして人肌恋しくなっちゃった感じ? ネーチャンの胸くる?」

「行かねぇし俺はお前の弟になった覚えはネェ」

「ウケる、すげ〜冷て〜〜〜」

歯茎剥き出しにして威嚇するエースを見てケラケラ笑うキチガイ。いつ俺はお前の弟になったってんだ。確かに盃を交わすところを女は横で見てたけど。そうヘラヘラ笑う女に無性に腹が立った。

エースはこのキチガイ女が嫌いだ。

弟の金玉潰そうとしやがる癖に、ルフィとサボを、そして己の事を一番に考えているのがあけすけに見える。

何か企んでいるのかと言えば違うし、何かを対価に求めてるかと言っても違う。女はただ自分達の隣に居るだけ。そして時折、海のように穏やかな微笑を向けてくる。まるで無償の愛を注がれてるような。それが酷くむず痒い。

自分が怪我したらお節介焼きまくるし。

姉ぶって説教してくるし。

お前は姉じゃないと言っても学習しないし。

ウザ絡みしてくるし。

勝手に人の寝床に潜り込んでくるし。

自分を抱き枕代わりにするし。

その体温が心地好いと思ってしまうし。

このまま女の体温で溶けて一つになってしまえばなんて馬鹿げたことを考えてしまうし。

嫌い、嫌いだ。

こんなキチガイ女なんか。

「寂しくなったらネーチャンのとこおいで♡」

「一生行かねぇよ!!」

姉じゃないと訂正してもやはり学習しない女に、あぁ、やっぱり嫌いだと思い直した。

⟡ ⟡ ⟡

小戦争が勃発しそうな勢い。

絶賛 肩を痛めそうな百目木は密かにそう思った。

「マサルはおれの船に乗るんだ!!」

「いいや俺の船だね!」

「ね〜貴重なモテ期をこンなトコで使いたくないンだケドぉ」

サボとルフィに挟まれた百目木はうげ〜と顔を顰めた。口先だけの取り合いだけならまだいい。可愛いのでヨシ。けれど両側から引っ張られて取り合い(物理)されるのは予想外。どこの少女漫画よ。もしかして引っ張ったら伸びるオモチャだと思ってらっしゃる? そんなルフィみたいなゴム人間じゃあるまいし。

「おれの船でコックをやるんだマサルは! そんでおれはウメェ飯たらふく食う!」

「マサルを過労死させる気か? ルフィの船のコックなんてやったらいくつ腕があっても足りねぇに決まってるだろ!」

「じゃあもう一人コックを仲間にする!!」

「ソイツだけでいいじゃねぇか!!」

「嫌だ!!! マサルがいいんだおれは!!!!!」

取っ組み合いに発展しそうな雰囲気を察知しながら百目木は景色とか見てた。アりす見っけた。

ちなみにエースは石の上に座って此方をじぃ…と見てる。見てるなら助けてくれや。抗議の視線を送ったらそっぽを向かれた。あんのクソガキ!

「「マサルはどっちの船がいい!?」」

「オウすげぇ仲良し」

綺麗なハモリ。義理とは言えど流石は兄弟だなと感服する。

2人が興奮した様子でガルガルしてるモンだから取り敢えず拘束からヌルッと抜け出してほんの一瞬考えた。本当に一瞬。多分1秒にも満たない。マつまり答えは決まってるのである。

「どっちもヤダ」

「ハ!? なんでだよ」

「エ。イヤだから」

いや睨まれても困る。

心底意味が分からないと不思議そうに首を傾げる2人を他所に、女は爪とか見だした。ウワ最悪チョット割れてる。そりゃ当たり前である。こんな山奥に手入れの道具なんてある訳が無い。あるとしたらダダンの爪切りくらい。しかもほぼハサミと変わらない。多分ペット用のヤツ。全くもって不便である。

だから前に「ダダンも私みたく可愛くなりたいっしょ? だからコスメ・スキンケア用品、全部買お?(拳を顎に添えるポーズ)」して交渉したら酒瓶が飛んできた。

\残念! ハニトラ失敗! また挑戦してね!☆/

「つーか海賊とか常に死と隣り合わせじゃん。そんな状況で寝るとか無理くね」

「なんでだよ〜! おれが守るから乗ってくれよマサル〜!!」

「あと戦闘に巻き込まれたら前髪崩れそうだからムリ」

「お、絶対ソレが本音だな」

戦闘に巻き込まれて前髪が崩れるだけで済むと思ってんのか。怪我とか命の心配しろよとエースは思った。顔の怪我以外気にしなさそうだけど。

だってアホだから。

「嫌だ!! おれはマサルと冒険がしてェ!」

「エ〜でもなァ…潮風で髪が傷んだら困るし……」

「そんなモン何とかなる!!!」

「そりゃ手入れを怠らなきゃ何とかなるケドモ」

女は非常に困った。こうなった末っ子は絶対に譲らないと知っていたので。

「ン〜じゃあ折衷案。3人が乗ってる船なら乗ってやってもイーヨ」

「おれの船じゃダメなのかよ!」

「ダメ、ヤダ」

「なんで!!」

「お前らさんこいちで私の一番だから。一人とか決めらんないの」

爪の間に挟まった土とか捏ねくり回してた百目木は肩を竦めてみせた。

ちなみにコレは百目木の奥の手である。何かで揉めた時にコレを云ったらイチコロ。喧嘩はすぐ止まる。現に今だって2人の口はキュッと真一文字に結ばれている。チョット擽ったそうな表情。ルフィは少し訝しげだが、思うところがあるのか黙っている。

この前食べ物で説明したのが効いたな。

計画通り。百目木はDEATHN〇TEみたいな作画でニンマリ笑った。

「エースとサボも乗ってたらいいんだな」

「マァマァマァ(笑)」

神妙な顔をしたルフィが腕を組みながら百目木に問う。適当に返事した百目木に、ルフィは「ヨシ分かった!」と大いに頷いた。

そう、まるでこれ以上の名案はないと言うように。

「じゃあおれが船長でエースとサボが船員(クルー)になればバンジカイケツだな!!」

「あ?」「は?」

ちょっと待てそれは違う。

2人の待てが入り、「いや巫山戯んな船長は俺だろ」「お前ら航海術分かるのか? 分かってる俺が船長になった方がいいだろ絶対に」「いんや俺が船長だ!」「「お前には絶対無理」」「何を〜!?」といった感じで遂に小戦争が勃発した。

ギャグ漫画の如く煙を起こしてボカボカ殴り合いをする3人の斜め後ろで百目木は虚無顔を貫いた。メンドクセェ。

今度こそ仲裁する気力をなくした百目木は3人の喧嘩を少し離れた先で傍観することに決めた。

アそういやダダンに洗濯物頼まれてたんだった。

マ、いっか。

「……。」

一足先に一抜けしたエースはコンパクトミラーとコームで前髪とか直してる元凶を見た。だって自分は特別あの女を船に乗せたいと思っている訳では無いので。弱虫が船長だなんて言い出すから挑発に乗ってしまったけども。

大体なんの役に立つんだあの女。確かに料理の腕はいいし顔も良い。でもただそれだけ。戦闘力なんて皆無。アレは小石ひとつで倒せそうだし。面倒臭いと思うけれど見捨てないのは、目の前で死なれたら夢見が悪いだけで。それ以外の理由はない。ある訳が無い。あっていい筈がないのだ。

それなのに何故か。

あの女が"3人"で一番と言う度。

一人に決められないとかほざく度。

どうしてか、胸がモヤァンとするのだけれど。

何かの病気かしら。

マ、別に知ったこっちゃないんだけど。

「……………は?」

────次の日、女は居なかった。

「あぁ、アイツかい。あの女なら朝イチでガープの野郎と一緒にここを出たよ」

別れも言わずに、姿を消した。

⟡ ⟡ ⟡

「貴様ァ……何じゃあその巫山戯た格好は」

「んふ♡ 可愛いっしょ、クザぴから貰った」

どお? どお? などとサカズキの周りをウロチョロする女は、海軍の事務員をしてる見目好いギャルである。

周りは終始胃を痛めながらその光景を見守っていた。

百目木 優は異世界人である。

その字面を考えた時 百目木はアイタタな記憶を思い出して暫く胸を抑えて蹲ってた。蘇るは疼く右手と眼帯。あの時の女は確実にアタマが可笑しかった。ヤメトケそんな本買っても神獣なんて出ねぇよ。

『エ何処ここ』

アここ元いた世界とちゃうな。

そう気づいたのは、スマホから視線を上げた先に広がる青海原と水平線と並行して進む"MARIN"を掲げた船があったからであった。なんか船の上で剣の訓練してる。一瞬なんかのドラマ撮影カナと疑ったが、先程まで自分はビルに囲まれた街中で信号待ちをしてた筈である。一瞬で景色が変わるとかはないだろう。流石に。それにしても何処だここ。小舟の上に居るようだけど。

『オ〜イ嬢ちゃん! 何でそこに居るんだアンタ! ここは凪の帯(カームベルト)だぞ!!』

『かーむべる…? 何それ来年流行するベルト?』

『な訳ねぇだろアホ!!!』

訳も分からず思った事を口にしたら怒鳴られた。解せん。

そんな常識みたく言われても、凪の帯(カームベルト)なんて初めて耳にした。地理に弱い百目木でも分かる、そんなモノはない。筈である。多分。きっと。

「とにかく上がってこい!」と縄ハシゴを垂らしたマリン服らしきモノを着た青年を困惑したまま見上げる。もしかして新手の誘拐か? 異世界に来た風にして売り飛ばそう的な。スゲェ斬新じゃんウケる。ストーリーで呟こと手元に視線を落として、そこで初めてビカビカにデコってたスマホがないことに気づいた。平成ギャルみたく大量のストラップを付けてたスマホ。

好きぴとのプリを貼ってたスマホが、ない。

『嘘でしょ……』

ついでに云うとコスメとか日焼け止めが入ってる鞄も無い。

『嘘でしょ!!!』

綺麗に膝から崩れ落ちた。好きぴとのプリを失ったと発覚した時より絶望した。この灼熱の太陽の下では焼ける、焼けちまう。オバアチャンに優ちゃんはお団子みたいな肌をしてるねぇ〜^^ 綺麗だわぁ^^ と褒めてくれた肌がみたらし団子になっちまう!

百目木 優は白ギャルである。この炎天下で日焼け止め等のコスメが無いのは死活問題だった。焼けるしメイクも直せない。死。

とにかく焼けたくない一心で危険など顧みずに日陰を求めて縄に手を掛けた。

その時魚の形をしたバケモンが百目木を喰らおうとばかりに後ろに潜んでいたのだが、運がいいのか悪いのか軍艦には拳骨中将も同乗していた。

轟音と爆風。

海にぷかぷか浮かぶバケモン。

そして目の前にはこれら全ての源である、軍艦から飛び降りてきた巨人の男。

『…マ、ぢか』

コレには楽観的にポケポケ生きてきた百目木もチョット驚愕した。こんなにドデケェ魚なんて令和ではお目にかかれないので。あと3m近くある男なぞ見た事なかったので。オジィチャンでけぇ。デカおじ。

『お前さん無事か!!』

『チョ〜無事、あざまる〜。てかオジィチャン力すげーね、やっぱプロテインとか飲んでる感じ?』

『イヤァ〜凪の帯に身一つで挑むとは、馬鹿な若者じゃわいまったく!! ぶわっはっはっはっ』

『すげ〜無視するじゃ〜ん』

とにかくながらスマホはやめようと決意した。ながらスマホなんてしてたらいつの間にか異世界(仮)に飛ばされる事が発覚したので。ながらスマホを辞めるよう促すポスターにはこの事を書いとくべきである。

「ながらスマホをした次の瞬間に異世界に飛ばされてる事が稀に有るよ! ながらスマホダメ絶対!」。

マァそのスマホは何故か手元から消えたのだけど。

それから帰る所がなく家族もいない、ついでにこの世界の事もサッパリ分からない事を話すと保護される運びになった。更には「エ オジィチャン私を孫にしたい系? ウ〜ン面白そ〜だからオケマル」的な軽い感じでオジィチャン(ガープ)の孫娘にもなった。

ギャルの心得その一。取り敢えず軽く生きとけ。

ワシの孫娘になったからには! と稽古を付けられる事もあったが、百目木は「汗で化粧崩れるからムリ」と胸の前で指を交差させた。その拒否も虚しく投げられたのだけど。けれどそれで全治3ヶ月くらいの怪我をして稽古は取りやめになったので結果的にはおーけー。良きです。いや良くはないんだけど。

それから血濡れのドジっ子を保護したり・ルフィに懐かれたり・赤髪とテンアゲでギャルギャルしたり・3人の弟たちとワチャワチャしたりと、etc. etc.で割と自由に生活していた。

オジィチャンの都合で海軍に逆戻りして更に事務員として働く事になった時は、百目木にしては珍しく落ち込んだ。

素直に慕ってくれる子供と離れるのはかなりキタの。流石のタフネスギャルでもやってらんない。

だって理由が「人手が足りないんじゃもん」て。私じゃなくてもいいぢゃん。知らね〜よバイト雇えよ(憤怒)とオジィチャンに肩パンしてこちらが骨を折った。アレは鉄壁。ギャルのノリで絡んだら骨折する。だめです。

けれど案外海軍は職場として快適だった。設備は完璧だし海兵達は優しい。飴ちゃんと出先の土産とコスメをくれる。飴ちゃんおいちい。けどコスメが無駄に増えてく。マァこんなんなんぼあってもいいですからね。

ただ一つ欠点なのが、労働量がブラック企業並。

百目木は見た目と反して事務作業に滅法強いギャルだったからまだ良かった。ギャルじゃなかったら耐えられなかった。割とリアルガチで。百目木のように愛想良くタフネスなギャルだからこそここまで長くやれているのだ。

三大将の内2人の見た目が完全に『仁義〇き戦い』て感じだし、もう一人は百目木のたわわなメロンを見て「マサルちゃんてさ相手いないの?(胸をガン見)」てセクハラしてくるし、七武海(おきゃくさま)はなんか個性強すぎて手に負えないし。特にヤベェのがドフラミンゴとミホーク。会う度に「よォマサルチャン(尻をまさぐる)」「………………(剣を抜いて襲いかかってきた後に茶を啜る姿)」てしてくる。もうやだよ。本気でボイコットを考えた。

それでもやめないのはお給料がたんまり貰えるのと海軍の女子メンツが可愛いからで。

ジンベエのオヤビンも可愛い。抱き着いた時に行き場のない手を彷徨わせてアタフタしてるの。

あともう一つ、ハンコックに会えなくなるのは嫌なので。七武海会議に出席するよう要請しに行った時に石になった野郎共は置いてお茶したりした。

『ハンてゃのリップかわよすぎじゃね? ちょどこのコスメ使ってるのぉ〜??』

『妾は紅になぞ頼らなくとも美しいわ』

『アハぁ♡ 言えてるぅ』

とか女子会した。結局会議には来てくれなかったけども。帰ると言ったら「…、そうか」て少し寂しそうにした美人が見れたので(百目木的には)良し。

マァそんな感じで何やかんややれてる百目木だったが、どうしてもサカズキとは馬が合わなかった。

ギャル(自由奔放)VS 熱血。

そもそも根本から分かり合うのは無理であった。だってタイプが違いすぎる。例えるなら生活指導の鬼教師と問題児ギャルなので。本で何度も読んできた関係。犬猿の仲。

けれど百目木は仕事の時はプライベートからは想像もつかない程 有能でキッチリしてやがるので、文句ひとつ言えることはなく。ただ怒りを貯めていく男とストレスを与え続ける女という図が出来上がった。あまりにも地獄。

ただ今回はタイミングが悪かった。

休暇を貰った百目木(プライベートの姿)と、これから任務へと赴くサカズキと出会してしまったのである。

良くも悪くもオンオフの切り替えが激しい百目木、口調はまるで違うし、職場では支給された制服を着こなしているが今は肩や腹や足を出したりと好き放題である。ここまで来たら最早水着。この娘には羞恥心がないのかしら。

「嫁入り前の娘がそがいな格好をするな言うちょるんじゃ わしは」

「サカたんさ〜堅すぎじゃね? もうちょい気楽にいってみよ、ホラさんはいニコォ」

「舐めちょるのか貴様ァ!!」

「やば激おこプンプン丸ぢゃん」

サカズキの口端を棒で持ち上げるという強硬手段をとった百目木は、ちょやだウケるぅとか笑いながら今にもマグマを降らせそうな男から距離をとった。だって背高いじゃんサカたん。棒を使わないと顔まで届かない。全くそういう問題じゃない。

てか何なんだその巫山戯た呼び名は。

全力でサカズキを止めてる海兵達を前に、百目木は懐から何かを取り出した。

「ごめんて。お詫びにコレあげる」

「サカズキ大将に捧げる前に俺達にその手の中のモノを教えてくれるかなマサルちゃん」

「飴の包み紙(ゴミ)」

「……………(海兵を投げ飛ばす姿)」

「サカズキ大将ッッッお気を確かにッッ!!」

ガチギレである。こりゃもうダメ。

海兵達は為す術なく飛ばされてはまたサカズキを取り抑えようと特攻している。百目木はなんか既視感あるなとか前髪いじりながら見てた。アぶつかり稽古だ。

「とにかくマサルちゃんはセンゴク元帥かガープ中将のところ行ってホラ早くッ」

「俺らが抑えてる内にってコト? りょ〜」

頑張ってねんと言い残してギャルはスタコラサッサと逃げるように去っていった。本当に嵐の海ような女。

けれどご丁寧に遠くから「サカたんお土産よろ〜〜!!」と叫びやがったので、荒れまくったサカズキによりその日の任務は秒で終わった。

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「てことがあったんだけどさ」

「マサルちゃん生きてる? コレ幽霊だったりしないよね」

「死んどらんて」

ケラケラ笑う百目木を爪先から頭のテッペンまで眺めて、クザンは安堵の息を吐いた。ア良かった足ある。

珍しく「避難させて」と転がり込んできたので興味本位で話を聞いてみればコレである。

彼女には危機感というものがないのかしら。ねぇな。だってドフラミンゴに「何してくれとんねんカス」言うてアツアツの茶が入った湯呑みを投げ付ける女である。「敷地内じゃないからあやつはもう客ではない」とか般若の顔して宣っていた。きっとアレが女の素。

「アイツを揶揄うのお前さんぐらいだぞ」

「つまり私はサカたんの唯一の女?」

「言い得て妙だな」

マァ何も上手くないんだけど。

堂々と寛ぎ始めた女を横目に、クザンは今頃荒れまくっているであろうサカズキについて思案した。

サカズキとて女が嫌いな訳では無い。と思う。

本当に嫌っているなら百目木は今この場にいないだろう。やるなら徹底にやるのがあの男のポリシーなので。つまりサカズキの手が届く管轄下(ここ)に女がいるのは、極端に言えばサカズキの好意の裏返しという訳で。

というか百目木を見る目が完全に父親のソレなのだ。この前なんか書類を届けに行った百目木に「あぁ…」とか言いながら撫でるように頭に手を乗っけていた。けれどそれは無意識だったらしく、二人の間には宇宙が展開していた。完全にサカズキの反応が宇宙猫。それをたまたま目撃したクザンが綺麗に膝から崩れ落ちて腹をつった。絶対腹筋シックスパックになったってコレ。

「マ揶揄うのも程々にしなさいな。そんな調子だとすぐ死ぬぞ…お前さん」

「や、でもそんな調子でもう三十路近くまで生きてるし〜? 大丈夫っしょ」

「あぁそうか…」

そういやこの女、見た目の割に歳食ってたなと思い出す。百目木は初対面の時から驚く程に見た目が歳を取らない。一時期は「女狐」なんて呼ばれたりしていたが、その印象はギャルで掻き消された。ギャルは強し。

百目木から言わせてもらえば「トリップ特典なんじゃね」という感じなのだが。だって不思議と老いてく感じがしないんだもの。

永遠の16歳とか言う奴がいるが百目木はまさにその完全版。見た目も中身も同じまま、年老いてく事を知らない。もはや一種の不老。

その外見に釣られ寄って集る男なんぞ、両手を使っても数え切れないほど見てきた。マァその全部が振られてるのだけど。

好きな人がいるのかと聞いても違うと言うし、恋愛感情がない訳でもないと言う。

女曰く、可愛い弟達が一番なのだと。

『それに恋人なんてできたらネーチャンが恋しくてアイツら泣いちゃうでしょーよ』

そう、カラカラ笑う女の瞳に、ありありと慈愛が浮かんでいて。

────あぁ、こりゃ敵わねェなとクザンは漠然と思ったモンである。

その弟達とやらに敵う何かを、クザンは、いやこの世の誰も彼もが、持ち得ていない。

「マサルちゃんはさ結婚願望とかねェの?」

「エなに急に。あるけど」

「俺いまフリーなんだけど、どう?」

「ウ〜〜ンなしよりのなし」

てか書類しろよ。といとも簡単に言い放つ百目木。一応アイの告白なんだけど。この女には情もないのかしらと特に気にもとめてない様子で椅子に凭れ掛かる。

「どんな男に引っかかるのよお前さんは」

「仕事を溜めず期限内に提出する人が良き」

「じゃあ俺がこの仕事片付けたらどーよ」

「マァ土俵入りはできるんじゃね」

「マジ? よっしゃ頑張ろ」

そう意気込むクザンに百目木は眉を寄せた。

だってこの部屋には書類の山が10以上あるので。

「何よその顔。できる訳ないって顔じゃないの」

「…マァ。明日提出のモンもあるっしょ」

苦々しげに呟く百目木を見てクザンは目を細めて、女の指先を絡める。華奢でしなやかな指。多分握ったら簡単に折れてしまう程の。

少し力を込めたら逃げるように後退する女。振りほどかんとする指を逃がすまいと雁字搦めにして、その瞳を見詰めた。甘い瞳。何もかも引き摺り込んでしまいそうで。危険で妖艶な。

傾国とはまた違う女。

けれどその完璧な造作に、視線に、声に、酔いそうになる。

「惚れた女の為なら、俺ァやるときゃやるのよ」

渇望に近いソレを呑み込むには鉛のような重さ。けれどそれが女が己に与えたものだと思えば悪くない。

────嗚呼。喉が、焼けるように痛い。

「女の扱いに慣れてんのがクズさ滲み出てっから無理」

次いでその唇を食んでやろうとすれば、近くにあった書類を顔に押付けて甘いムードを完全に崩しやがった。百目木は他人のペースに乗らないギャルなので。

クザンはいつの間にかヌルッと抜け出した指の温もりを残した掌を名残惜しそうに撫でてる。こんな女のどこがいいんだか。確かに私は可愛いけど。

「あらら…随分と手厳しいじゃねぇの」

「そりゃ私の人生が左右されるかもしれないし?」

「そりゃ賢明な判断なこった。マお前さんは誰かの手に収まるタマじゃねぇしな」

「んふ♡ 分かってるじゃん」

角張った手の甲をツツ、と撫でてドロドロに溶けた砂糖みたいに女が笑う。それから「じゃもう行くわ」と部屋を出て行く女の背中をただ見詰めた。

そういう所が女狐とか言われる理由じゃないのかしらとクザンは思って、思うだけに留めた。

だって言ったら二度としないかもしれないじゃない。

「男ってのは下心しかねぇのに」

だから彼女のような女(ひと)に男は集るのだ。

女の特別を求めて。

「…やっぱ今度忠告しとくか」

そうして男は深くため息をついて、愛用してるアイマスクを着けた。

この関係を壊さぬように。

女の為にも、男の為にも。

⟡ ⟡ ⟡

ア〜焼き鳥食べてえな。

百目木は大破された軍艦を横目に目の前の青い鳥を見ながらそんな事を思った。

女は一応海軍のお雇い事務員である。基本的にはテレワークなのだが、たまにこうして気分転換として見回りに隠れて着いて行く事もある。その度に叱られるのだが。ギャルは自由奔放なので気にしない。だって人生楽しく生きなきゃ損じゃない。

だから今回もこうして着いて来た訳だが、如何せん乗る船と乗ってた将校の頭が悪かった。

なんと運が悪い事に白ひげ(四皇)の船と遭遇したのである。そして血の気の多いモブ少将が交戦をしかけ、ボロ負けした。そりゃ当たり前だろ凍ったバナナで四皇なんて倒せるわけないわ。馬鹿なんじゃないかしら。海に浮かぶ伸びきった少将を見つめて鼻で笑った。

てか視線が痛い。

「……不死鳥ってパイナップルで漬けたら美味そうじゃんね」

「ヤメロ俺は食用じゃねぇよい。涎も垂らすな」

青い鳥が言う。僅かに戦闘態勢に入りながら、女を真っ直ぐに見つめる。話し合いで解決できなさそうな雰囲気。とても面倒臭い。ギャルは人畜無害なのに。

というか焼き鳥はもうどうでもいいので早く帰りたい。だが軍艦は大破されたせいで使い物にならないし、そもそも船の運転なんてできないし。

「さてどうしたものかね」

ぷっくりとした唇に乗った鴇(とき)が不満げにへの字に曲がる。

あぁもう何もかも面倒臭いな。いっそのこと海の流れるままに身を任せて逃げてしまおうかしら。そうしよう。

青い鳥が目を見開き、船の上の半裸の男が海に落ちる勢いで身を乗り出す。「お前能力者だろ」「やめとけ隊長」なんて焦燥をBGMに、アレあのそばかす見た事あるな、なんて思いながら、フラリと体を傾けた。

バチャン。

「ア今日ウォータープルーフじゃねぇわ」

が、化粧を崩したくない女はすんでのところで踏みとどまった。落ちないのかよ。

「ガブッゴボッ! ゴポポボボ………」

「なんで落ちた?」

代わりに半裸の男が溺れていた。先程の水音も彼である。助けに行ってやってもいいが、ウォータープルーフじゃないので化粧が落ちちゃう。それだけはヤダ。男の命よりも自分の顔面を取った女はそのまま傍観を決め込む事にした。薄情ギャル百目木。

薄情ギャルはそのまま男が救出されるのを横目に天を仰いだ。空が青い。こんな日はBBQでもしたい気分。やっぱり焼き鳥が食べたくなってきたので青い鳥を見遣れば心底嫌そうな顔で見詰め返された。梅干の精ぢゃん。つまりブス。ドブスすぎて笑っちゃう。

百目木が笑っている合間に沈みかけた軍艦の上に引き上げられた半裸の男は、どうしてか百目木の裾を掴んで離さなかった。仲間達が離すよう促しても「ヤダ、ムリ、離さねぇ」の3点張り。5歳児かな?

現状整理も満足にできず困惑したまま、男の顔に張り付く髪を払ってみる。

そのそばかすが散りばめられてる端正な顔が目に飛び込んできて、百目木はピンと来た。

────アラマ、エースクンじゃん。

そういや白ひげ海賊団に加入してたなと思い出す。

自分は事務員なので噂は耳にしても「必要ないか」と疎かにして手配書は見ていなかったのだが。こうもイケメンに成長するものかね。

「ンマ〜〜〜ショーネンがこんなイケメンに…アラマァ…」

顔面の暴力に成長しやがった弟(仮)をゴミの語彙力で褒めようとしたが、流石はゴミの語彙力、まるでダメである。なんかW7の市長の口癖が出ちゃってるし。私あの市長のこと割と好きなんだよね、適当さがいい加減で好き。あと秘書のカリファちゃんも好き。オススメのコスメとかを教えてくれるし贈ってくれるので。ちなみにウォータープルーフのコスメを選んだのもカリファである。流石は秘書に選ばれるだけあってコスメも凄く使いやすかった。

思えば百目木は、GCの社員からかなりのコスメを貰っているように思う。

実際に今使っているリップは「紅を送った相手には返すのが基本じゃぞ、ホレ返してみい笑(唇を指差す)」してるカクに貰ったものだし、愛用してる化粧水は「俺の隣を歩く女の肌質が悪いのは恥ずかしいからな、ポッポー(裏声)」してるルッチに貰ったものである。どちらもオブラートに包んでお断りした。

百目木 優、ギャル、顔面と愛嬌から貢がれやすいタイプだった。

久しぶりに会いに行こうかしらなどと考えていたら、いつの間にかエースは回復していた。早。

エースも回復した事だし、じゃあサヨナラと立とうとした時。

お腹に何かが巻きついた。視線を下に動かせば、そこにあるのは筋肉質な腕とスブ濡れの黒髪のアタマ。腹に頭を押し付ける形でエースが抱き着いてると理解したのは一瞬だった。

ギャルは状況把握が早いので。

「…エースくぅん、オネーサン帰りたいんだけどぉ」

「ヤダ」

「でもホラ、オネーサンってば一応海軍なワケ。報告もしないとセンちゃん…上司がオコになっちゃう」

「それは俺より大切なのかよ」

「そりゃお仕事だからね」

「は?」

「は?」

沸点が分からん。取り敢えずグッと押してみたが流石は前線で戦う海賊と言うべきか、ピクリともしない。

完全に捕らえられた感じだった。

「お願いだから離しておくれエースチャン、ホラお駄賃やるからさぁ」

「駄賃は貰うが絶対離してやんねー」

「スゲェ欲張りじゃんウケる」

的な感じでどうしても離さないモンだからいつの間にか船の上にいたし、宴にまで参加することになった百目木は困った。早く帰らないと直属上司が胃を痛めちまうので。

「なら息抜きで軍艦に乗るな」と脳内でイマジナリー元帥が目くじらを立てている。いや知ったこっちゃないわ。上司を思っているのか思ってないのかよく分からないのが百目木である。

兎にも角にも、まずこのバブちゃんをどうにかしてやらなければいけない。

船の上でも変わらずベッタリな弟の髪を撫でてやりながら唸る。するともっと撫でろと言うように頭を押し付けてきた。次は強い力でガサツに撫でてやると、イテェと薄く笑いながら肩口に額をグリグリと押し付けては「ァ゙ー…。…ハハ、ンだよ、ちゃんと居るじゃねーか…」とか安堵の溜息を零している。

なんか凄くキャラ変してないかコイツ。

「今まで何してたんだよ」

「海軍で事務員。書類纏めたりしてたよん」

「俺達を放ってまでしなきゃいけねぇ事だったのか」

「いや私だって行きたくなかったわあんな社畜の溜まり場」

「じゃあ海軍なんてやめて海賊になれよ、オマエなら親父や仲間達だって気に入る」

「たぁんまりお給料貰ってるから無理♡ マ、でもあのまま彼処に居たら大怪我するのも事実だったし〜? ホラ私ってばか弱き乙女なワケじゃん?」

「だから俺が守ってやっただろ」

「ア〜昔オジィチャンに言ったわソレ。『ワシが守っちゃる』て何も聞いてなかったくさいけど。それにアッチに行ってから怪我が格段に減ったから、そこはマァ利点だったんじゃん? 何より顔を怪我することもなかったし」

「…オマエほんと自分の顔好きだよな」

「もち♡」

クッソ無駄に顔が良い。

無防備に晒された白い足を抱えて甘ったるく笑うものだから、何だかむず痒くて一気にジョッキを飲み干す。その豪快さと物珍しさにドヤドヤと視線が注がれた。

「なんだぁ? 振られたかエース」

「こっちに来いよ、慰めてやらぁ」

「なぁお嬢さん、ガキはやめてこっちで酌でもしてくれねぇか」

いやヤケ酒ちゃうわ。

こっち見んなという意味と、お前らさっきコイツを厭らしい目で見てたろという2つの意味を込めて仲間達を一睨すると、オ〜怖い怖いと烏合の衆が笑った。

どさくさに紛れて口説を投げたイゾウと「ガキに飽きたら行きま〜す」「そうかい、俺はいつでも大歓迎だからな」「ヤバもう飽きそう色気パねぇ」なんて会話する百目木にも無性に腹が立って、肉を口に詰め込んで飲み込む。

あぁ、クソ、ムカつく。

冷やかしだした周りを知らん振りしていい飲みっぷりじゃ〜んとカラカラ笑う女にお前も飲めよと奨めたらこの女、「イヤ敵陣(仮)で飲まねーし」と首を振りやがった。

敵陣。そうか。敵陣か。敵陣なのか。

懸命な判断だとは思う。確かに自分は海賊で女は一応海軍に属しているから。今思えば女が口にしていたのは必ず自分がひと口食べたモノだった。敵陣に身を置いてるからこその警戒。して当たり前の、あまりにも自然すぎるそれ。

けれど警戒はしていても敵意はないように思える。言うなれば、初対面の親戚を窺う子供のような。

マァ仮に敵意があったとしてもこの女は上手く隠すのだろうけど。本当に女狐という比喩がよく似合う女。そこも嫌いじゃないんだけど。

ただ。

近くにあった酒瓶を手に取り一気に煽る。

何故かそれを見てキャッキャしてる百目木。本当にツボが分からない。難解な女。

「……。」

「ン、なに、どしたん」

難解でいて、美しく強かな、人の機微に聡い女。

自分の胸の内は見せずに、人の箱庭を土足で踏み荒らしていく狡い女。

その女の箱庭にある硝子の破片を自分には踏ませてくれないのかしら。

足の裏が血で染まるくらい、破片の道の奥先まで。

「俺だってお前の顔に傷一つ付けさせねぇくらい、強ぇし」

女がエースを見上げる。泣きたくなるようなどこまでも透き通った瞳。引き摺り込まれそうな青。己が愛した海の青。噎せ返る程の、青。

その水面のような瞳に己はどう映っているのかしら。

そう、近くで見てやろうと。鼻先が触れるくらいに引き寄せたら。

女が耳の裏に指を這わせすりすりと撫でた。前戯とはチョット違う、厭らしくもない純粋な行為。

ア、イケる。謎の確信を持って顔を近づけたのに、眉根を寄せた女に「ヤメロお馬鹿」と額を指で弾かれた。まだ時が充ちた訳では無いらしい。

エースは少し拗ねたように、じっとりと湿った瞳でじぃ…と女を見つめた。オヤツをお預けされた猫ちゃあんのよう。それを知ってか知らずか、女は感慨深そうに呟いた。

「成長したね」

「…お前は何にも変わってねぇけどな」

「やだ私 口説かれてる感じ?」

本当に何も変わってない。顔も性格も、何もかも。恐ろしいくらいに全部。

もしかして今目の前にいるこの女は幽霊とか魑魅魍魎とかそういう類のものなのカナと頬を引っ張ってみる。よく伸びるとこも変わってない。

「ひょっと、えーふ、はなひへ」

「……。」

「えーふっへは」

「……。」

「はなへっふっへんはろ」

「痛ッてぇ!?!?」

綺麗に頭に拳が入った。安心してください愛ある拳ですよ。

若干赤みを帯びた頬を擦りながら、女は痛がるエースを鼻で笑う。それからローストビーフを一つ摘んだ。

────あぁ、さっき俺が食ったやつ。

「マ、元気そうで安心したよネーチャンは」

「…俺はお前の弟じゃねェ」

「まだ言ってんのそれ」

ウゲェと二重顎になるくらい顔を引いた百目木は大変嫌そう。すげぇドブスだがいいのかそれ。

「サボも安心してるダローヨ」

空を見上げて女が云う。

哀愁を含んだ沈んだ声。

エースは目をかっ開いて驚愕の意を示した。まさか今触れてくるとは思わなかったので。

「お前、知ってたのかよ」

「もち。おじぃちゃんから聞いたから」

「泣いたのか」

「ハ? そりゃ泣くっしょ当たり前。私の一番はお前らだったんだから」

訝しげにこちらを見る女。何言ってんだとでも言いたげに。眉根に皺を刻んで。

何故だか無性に腹が立つ。

何度も聞いてきたセリフ。その一番は女にとって「おはよう」と変わらないくらい軽いのに。軽い筈なのに。軽くてはいけないのに。

どうしてそんなに慈愛に満ちた顔をするのか。

ふと、あぁその顔をサボやルフィにも見せてたんだなと漠然と思って、臟(はらわた)が煮えくり返るような激情に変わる。腹の奥底から湧き出る、泥々としたナニカ。

どうして女の一番に己以外も含まれているのか。

どうして一番は己だけではダメなのか。

どうして。

「お前は俺の姉貴じゃねェよ」

「いや何回擦んのそのネタ。もう飽きた」

「きっとサボやルフィだってそう思っちゃいねぇ。…ルフィは自覚しちゃいねぇだろうが」

「…ハ? なに、キレるよ」

「姉貴じゃダメなんだよ」

だって俺はお前が――――――。

言葉が音になる前に。カサついた唇を華奢な指がゆっくり撫でる。浅縹(あさはなだ)で彩られた形のいい爪。女が大切にしてきたしなやかな指だった。

海が己を見つめている。落ちてしまえば溺れてしまうだけの厄介なそれ。溺れてやるものかと負けじと見つめ返すけれど、きっともう手遅れで。

それでも見詰め続けた。

女もエースも。お互いの存在を焼きつけるように。サッチが料理を持ってくるまでずっと。

翌日エースは酷い二日酔いを味わった。

⟡ ⟡ ⟡

「それは本当に欠かせない事項なのでしょうか」

緊迫した元帥室の中。珍しく壁の花になっていた女が声を紡いだ。全ての感情を削ぎ落としたようなビスク・ドールは、人間の形をしてただそこに立ち竦んでいた。

深海のような声色だった。

「わざわざ全戦力を挙げて挑むべき事ですか。今やらなければいけない事なのですか」

「…何が言いたい」

「いえ特には。単なる疑問にすぎません」

淡々としている割には握った拳が白くなるまで強く握られていた。

眉を顰めてブスな顔をしてる上司を一瞥し百目木は手元の書類に再び目を落とす。何度見てもくだらない内容。こんな事に息を巻く海兵の正義なんて気が知れない。その理由も。全て。

「意味はある。意義もある。この先を見据えて私がそう判断した」

「お言葉ですがあまり賢明ではないかと」

「それでも我々はやらなければいけないのだ。貴様には分からんだろうが」

「ええ。ええ。そうですね。私は正義や大義なんてそんな大それたモンがある訳では無いので」

そう。分からない。女は正義を掲げてないから分からない。分からない。分かりたくもない。分かったらきっと気が狂う。その重厚に押し潰されて消えてしまう。海上の霧みたいに。

「差し出がましいようですが。例えそれで海賊の勢いが加速しようと構わないと?」

音に乗る声が紡ぐのは最悪の結果。まるでそうなると言わんばかりに宣う女をセンゴクは一睨した。

「貴様、その意味が分かって言っているのか」

「……。」

引き際。

それを悟り百目木は1歩後ろに下がり深く頭を下げた。陽光の滝のようなそれがはらり、はらりと落ちていく様を、ガープはただ見ていた。

何ひとつ言えなかった。今の彼女に声を掛けても海に小石をひとつ放り込む程度でしかないから。

「大変、失礼致しました。分を超えたことを申しまして、心からお詫び申し上げます。お許しください。

それではこの件は書類内容のように手配しておきます。始末等はいつもの通りで宜しかったでしょうか」

「…あぁ」

「了解致しました」

失礼します、と一礼して元帥室を後にする。

逃げるように執務室へ戻ると、壁に凭れてズルズルと座り込んだ。

らしくない。

そう思って邪魔くさい髪をかきあげ大きな幸福を吐き出す。オンオフの切り替えの良さが評価していただいているところの一つだというのに。多分もう言われることは無いだろうなとか思いながら机の上に嵩張る紙等をぼんやり見た。新しい山がある。追加の仕事だろう。多分手元の書類と同じ内容の。

「徹夜は嫌いなんですけど」

<

頭に内容が何も入ってこないので確実に今日は朝までコース。有給も時間給も取れないので。ブラック企業 去ね。

「百目木」

「…スモーカー大佐」

扉を挟んで聞こえてきた声に即座に立ち上がる。そういや今は業務時間。

「今いいか」

「仕事ですか私用ですか」

「私用」

「りょ。で、どしたん」

泰然とした声色から一気に崩れた口調に変わる。初めてプライベートの百目木に会った時スモーカーは柄もなく感心したモンである。「ア スモやんじゃ〜ん。気分はどお? アゲ? サゲ?」なんて露出多めの服で話しかけてきたのだから。初対面で至極丁寧に挨拶してきた仕事も早い有能な女がである。しかもバックの中にはそこら辺で配られてるようなちり紙が溢れ出す程大量に入ってたので芯はアホとお見受けした。女の切り替えって怖い。

「土産だ」

「エあのスモやんが? なにどしたん拾い食いした?」

「ンな事する訳ねェだろアホか。アイツからのに決まってんだろ」

「あぁ。たしぎんね。あれっしょ、どーせまた たしぎんが土産の存在忘れてて賞味期限が今日付け、でも仕事で手が離せない。って感じっしょ?」

「……。」

「いぇい当たり〜。てかスモやんまたパシられてんじゃんチョーウケる」

嫁の尻に敷かれるタイプじゃんと揶揄う声にウルセェと一蹴する。プライベートの女と話してると頭が痛い。百目木は頭痛が痛いとか言い出しそう。そういう女。

いつもは直ぐ開くというのに、いつまで経っても開かない扉。部屋の前にでも置いときゃいいのかと思ったが、置いたら多分隣室のダラケ上司に食われてる。女に小言を言われるのは面倒なのでそれだけは避けたい。

「ア部屋の前に置いててイーヨ。今チョット書類作成で手が離せなくて出れないだけだし」

「それなら部屋に入った方が確実だろ」

「ウワ〜〜手馴れのメンズが言うセリフ」

「でも部屋汚いしそこ置いといて」と百目木。その割には声が近い。多分扉の前に女はいる。人当たりが良い女が出たくない理由をチョット思案して、例の件かとスモーカーは即時察した。

女は軽薄そうに見えて案外重厚だ。壊れたラジオと化した女が特に熱を持って語るのは3人の弟だった。微笑を浮かべて語る女をスモーカーは何度見てきたのだろうか。両手両足使っても数え切れない程は目にしている気がする。

前に一度よくもマァ話してて飽きないな等と問うた事がある。その話を聞くのは通算7回目であったので。ラッキーセブン。おめでとうございます。

葉巻を喫(の)むスモーカーをキョトンと見上げた後、女はブハッと吹き出した。

『そりゃそーよ。私の一番だから』

滄海のような女が紡ぐ漣の声。

それは酷く穏やかで嫋やかで甘美な恬愉。

その一番とやらになったら己にもその心地好い悦楽を与えてくれるのかしら。そう思案して、「そうか」と返すだけに留めた。

海になんて落ちたら能力者である自分はそのまま為す術なく死んでしまうから。

マァとどのつまり、あの案件は女に酷だろうなと紫煙を吐いた。

「私情は挟むなよ」

「………それって善意?」

「ただの忠告だ」

「あっそ」

それっきり返ってこなくなった無愛想な返事。少し踏み込みすぎたかと「邪魔したな」と一言謝りを入れて踵を返そうとしたのに。

女自身がそれを邪魔する。

扉からヌルッと飛び出してきた華奢な腕。戦闘力が雑魚な癖して怪力な女にされるがまま、ただ扉が閉まる音と漣(さざなみ)が脳を支配した。

「その忠告は、私が傷つかないように?」

目の前に広がる、女の奇麗な顔。

「手、離せねェんじゃなかったのか」

「んふ♡ スモやんて肯定の時 話逸らそうとするよね」

「…離せ。俺だって暇じゃねェんだよ」

「でも哀れな女に忠告する時間はあるじゃん」

なら少しは付き合ってよと女は葉巻を一本掠め取っていった。ゆっくり、その葉巻を食む真っ赤な唇。喫み方なんて誰に教わったのか。自分ではないだろうななんて当たり前な事を考えて顔を顰めた。何を考えてるんだ、俺は。

「知ってた? ギャル(あたし)って人情深いんだよね」

「……。」

「だからさァ。チョット傷心的なワケよ。本当は関わりたくもねーのにさ」

フゥーッと紫煙を吐き出した女が目を伏せる。

伏せた睫毛が白雪の肌に落とした影がくっきり見える程近くに在る顔をスモーカーが押し退けようとする前に、女の細い腕が首に巻き付く。

「私情は挟まないし与えられた仕事もこなすけどさ」

鼓膜を震わす燻る声。こちらの肺までドス黒くなりそうで中毒的な。燻った多幸感。

煙に巻かれるようだと思った。己自身が煙だが、女のは己とはずっと違う、一度巻かれてしまえば二度と逃げれないような、神隠しのようで、危うく神秘的な、そんな―――――――――。

「全部終わったら スモやんが慰めてよ」

────あぁ、なんと甘美な陶酔か。

唇から覗く血が滴りそうな程真っ赤な舌。酷く艶めかしく口内を這いずり回って、時折姿を見せず引っ込む。

それよりも目を引いたのは、舌よりも真っ赤で、陶器のような肌とは対象的な、蠱惑的な唇。啄むには充分すぎる程のそれ。

それを食んでしまえばこの胸騒もなくなるのかしら。

そう女の華奢な腰を抱いて獣のように貪り食おうとして、中途半端に開けた口を噤んだ。海を腕に抱く事は出来ないと思い直したので。

「生憎ガキを抱く趣味はねェ」

「ハァ〜? ひっど〜いスモやん、純情な乙女の心を弄んだってワケ?」

「テメェのどこが純情な乙女だ」

「言うじゃん」

ヌルッと腕の中から抜け出してカラカラ笑う。弄んだのはどっちだよとか思って深く息を吸った。この女を前にするとどうも己は面倒くさくなる。

「それ。今日の正午までだとよ」

「それ早く言ってよもう過ぎてんじゃん」

美味しい時を逃した! と騒ぐ女を一瞥して部屋を出ようと扉に手をかける。そこで女の待ったがかかり、平然と「この葉巻いーの?」と掲げやがった。

マジかこの女。

「他人が喫んだ葉巻なんぞいるか」

そう吐き捨てるように宣って扉が閉まる。赤い紅をつけた葉巻を置いて。

男が出て行った部屋で一人、女は葉巻を片しながら男の残り香なのか今手元にある葉巻のなのかよく分からない煙を深く吸い込む。副流煙ウメ〜〜^^ とか回らない頭でニコチン中毒者みたいな事考えてた。

末期かもしれない。

「ッハァーー……さて仕事するか」

首をコキリと鳴らして席に座り、握り締めすぎてシワクチャになった書類に目を通す。

ウーーーンやっぱり胸糞悪い内容。

「ニコ・ロビンといいアイツといい。海軍は若者に罪を背負わすのが好きなのかね」

隅々まで目を通して、もう用無しになった紙切れを細かく契った。あぁでも一応残しといた方がいいんだっけ。マ珈琲零したとか言っときゃ大丈夫っしょ。

机上に散らばる紙くずをかき集めて、手上の紙くずの山に息を吹きかける。イメージは某ジ○リの川の主。

「ルフィはどーするのか…私はどう動くべきか」

一体自分はどうしたいのか。

「わっかんねー……」

譫言のように呟いて、こりゃ仕事にならんわと悟って目を瞑った。

────瞼の裏に浮かんだのは、書類に連なる「ポートガス・D・エース 公開処刑」の文字。

⟡ ⟡ ⟡

泣きたくなるようなどこまでも透き通った瞳。引き摺り込まれそうな青。己が愛した海の青。噎せ返る程の、青。

『他人に左右される人生なら捨てた方が楽よ』

海賊王に息子が居たらどうするか。そう馬鹿みたいに真っ直ぐに問うた己を、大きな海は飲み込んだ。けれど何故かしら、溺れているのに母に抱かれたように暖かで息がしやすいの、凄く不思議でしょう。

『私は私、アンタはアンタ。それでいいだろうに』

馬鹿なこと聞くじゃん。女の形をして海は宣った。

真っ直ぐな鮮烈。きっと己が持ち合わせていないモノだから惹かれた。

けれどどう願おうとその眩さが己のモノになる事なんて未来永劫なくて。

忸怩たる思いが根を張る。

「エースゥウウ!!!」

何もかも掻き消す地獄のような戦場で、聞こえる筈のない漣に我に返る。女は髪を振り乱して、鬼気迫る表情で激情を叫んでいた。

「死ぬなんて絶対ェ赦さねェかんな!!! 死にてェなら私の後に死ねダァホ!!!」

オマエ海軍なのにいいのかよ。

目前に迫るマグマも女を見て、訝しげに顔を顰めた。この戦況下でも「うわサカたんの顔ブス」とか言ってるので切り替えの速さに思わず拍子抜けする。どこまで自由奔放なんだ。

「白ひげサンの願いを聞き届けないで親不孝者になるどころか姉不幸者にもなるつもりかこの愚弟!!!」

来るな。やめてくれ。なぁ、頼むから。そう言葉にしたいのに、何かが喉につっかえたようで何も音にする事は叶わず。きっとそれは女が立場も何もかもかなぐり捨てて己へと手を伸ばしているからで。

目が 眩む。

「お前はッ私達と一緒に幸せになるんだよ!!!!!」

気づいた時には女 目掛けて走り出していた。

あの手に触れたら救われる気がして。

体に鞭を打って走る、走る、女の元へ、ただひたすら一心に。

背後に迫るマグマが己の腹を貫く前に、一度だけ、あの手を、温もりを。

────手が、触れて、絡み合う。

「…は?」

けれど温もりを感じる事は無かった。

「……まさる?」

そこには髪飾りだけが在った。

所有者である女は何処にも居ない。まるで女なんて初めから居なかったように。

女は消えた。目の前から忽然と。

エースを、ルフィを残して。

女の姿が消えた事によって、皮肉にも幕は閉じた。

⟡ ⟡ ⟡

「なぁンか、壮大な夢を見てた気ぃすんだよネ」

いつもの街並み。

いつもの通学路。

いつもの横断歩道。

いつもの友人。

その『いつも』に囲まれた人混みの中で、鴇の唇にスマホを押し当てて信号待ちしてる百目木は唸った。

「フゥン。どんな?」

「イケメンが私に向かって叫んでる…ような……私がイケメンに叫んでるような…?? ン〜わかんね」

「ハ? 使えな。クソかよ」

「ウケる〜どちゃクソ暴言吐くじゃ〜ん」

訝しげにこちらを見ながらクレープを頬張る友人を横目に、百目木は霞がかった記憶を思い出そうと捻ったが ものの1秒で諦めた。

忘れるくらいなら瑣末なモノなのだろうと思い直したので。

「……。」

けれどどうしてか、時折 心が千々に乱れる。

9割9分も覚えていないけれど、大切なモノであるような気がしてならなくって。

忘れるな。思い出せと。本能がそう叫んでるような。

何も思い出せないのに?

…どうしてかしら。

なんて考えて、通知音を鳴らしたスマホへ視線を落とした。

赤信号が青へと変わる。

「ザボォ"〜ッ!!! マ"サ"ル"ゥ"ッッ!!!!!!」

「ハッ!? オマッ……ら、ハァ!?!?!?!?」

「エ〜〜〜また異世界じゃんウケる」

⟡ ⟡ ⟡

ギャル(百目木 優)

時(せかい)をかけるギャル。

2度も信号待ちのながらスマホでトリップした。

退職願はちゃんと元帥室の机上に置いといた。弟がヤベ〜のでやめます。引き継ぎばっちりデス♡ 後はよろ♡ センゴクは胃を痛めた。

この後ASLに取り合い(笑)されて四肢爆散する。

ヤメロあたしの体は一つしかね〜よ。

ポートガス・D・エース

ギャルに振り回される男子高校生。

オッ力試し大会(?)がある! と思ってドレスろうばに来たら幽霊を2人見たのでルフィと一緒に顔芸した。

この2年間で元々拗らせまくってた気持ちが更に膨大してる。

とにかく俺と一緒に来い、話(けっこん)はそれからだ。

他の方々

生きてた!!!! ギャル生きてた!!!!!!!!!