君と48手♡

倦怠期
『互いに飽きてわずらわしくなる時期』
エースの関係を表すとしたら、これは違うと辞書を開いてナマエは首を振った。
エースのことが好きだとはっきり言えるし、エースもきっと、変わらずそうだと思う。
ハグだって、キスだって、セックスだってする。別の誰かとこういうことをしたいとは微塵も思わない。でも何かが足りない。

昨夜、愛し合った後のことである。

「よしっ、終わりっ!」

精を出し終わったエースは、ナマエの尻を軽快に叩いた。甘い余韻を一気に遮断する、『ぱちーんっ‼』という音が二人きりの部屋に響き、「お、いい音鳴ったな」なんてケラケラ笑う。情緒の欠片もない所作に「もうっ!」とナマエが頬を膨らませれば、大して悪いとも思っていなさそうに手が伸びて頭を撫でたのだった。
エースと男女の関係を持つようになった頃は、少しお互いの手が触れただけで心臓が破裂しそうなときめきがあった。初めてキスをした日はお互いはにかみあった。初めて結ばれたときはベッドで抱きしめあって、キスをして、二人で余韻に浸ったじゃないか。
それじゃ今では、尻をひと叩きである。キスもセックスも、回数を重ねるたびにそのときめきが減ってしまっているのを嫌でも感じてしまう。


「あ〜あ」

キッチン棚を整理しながら、誰もいないのをいいことにナマエは盛大にため息をついた。なくなりかけの調味料を補充したり、大小混在して不安体に詰まれた鍋を並べ変えたり。エースのことを考えながら、片手間にもくもくと手を動かしていた。
こんな時に相談できる、気心しれた女の船員がいればいいのだが。ナースたちはお喋りだし、こんな蜜事の悩みを相談したら、面白がって、あっという間に船中に知れ渡ってしまうので却下である。男女の悩みでなければ、所属隊の隊長であるサッチや、何かと世話を焼いてくれるマルコにも相談できるのに。
本人に直接いうべきなの?でも、何て?もっと、ドキドキしたいって?
何いってんだと呆れられるだろうか。いや、エースなら案外すんなり聞いてくれるかもしれない?
棚から歴代のコックたちがしたためたレシピノートを取り出してはパラパラとめくるが、内容はちっとも入ってこない。一冊、また一冊と取り出しては積んで。気がつけば棚は空っぽになっていた。何やってんだ私は。
でもせっかく全部出したのだから、軽く拭き掃除でもしとくかと布巾を手に取った。調理後にルーティンでコンロや流しやらは清掃はするけれど、こういった棚の掃除まではなかなか手が回らないものだ。ましてや男所帯の中では、気にするものも少ない。
(綺麗に見えて、案外油汚れがついてたりするのよね)
固く絞った布巾で棚を拭くと、予想通り布巾は黄色く汚れた。この棚は随分古いもので、思い起こせば幼いナマエが船にのった時からあるように思う。色は剥げていて、いつかのコックが八つ当たりしたのか、包丁の傷なんかもついている。
(これは根気をいれて掃除しないといけないみたい。よし、まずは内側から)
と棚を覗くと、背面にピタリと張り付いて、なにやらもう一冊本が残っているようだった。手に取れば、それは明らかにレシピノートとは違い、ずいぶんと古い本のようである。
臙脂色の表紙は所々破れて中の紙が剥きだしで、棚の奥にあったせいかカビっぽい。細い糸で束ねられていて、雑に扱えばすぐに糸が千切れてばらけてしまいそうだ。
表紙に題名のようなものが手書きで書かれているのだが、崩した文字で書かれていてとても読めたものではなかった。辛うじて数字のようなものが書かれているようにも見える。古い料理の本なのだろうか?イラストも一つもなく、外見だけでは何の本かさっぱりだ。
恐らく誰にも気づかれずに、次々に本を入れられて棚の奥へと追いやられたのであろう。長年そこに放っておかれたそれに興味が疼く。宝箱をみつけたような高揚さえ感じて、誰が見ている訳でもないのに、ナマエはその場にしゃがみこんで隠れた。そして慎重に表紙をめくったのだった。

「わっ!」
「きゃああ‼」

急に肩を叩かれて、ナマエの体は後ろに倒れた。しかし両肩を支えられ、尻もちをつかずにすんだ。ナマエの反応が予想以上によかったのか、脅かした張本人のエースはご満悦にゲラゲラと笑っている。

「何度も呼んだんだけどな?」
「…全然気づかなかった」

(エースともっとドキドキしたいとは思ったけど、こんなドキドキは求めてないんだけどな!)
内心で文句を言って呼吸を落ち着かせる。エースは同じようにしゃがみこみ、ナマエの手に握られた本をまじまじと見た。こっそり見ようと思っていたけれど、無理なことをナマエは悟ったのだった。

「棚を整理してたら出てきたんだけど…」
「そんな本。どっかで見たことあるような、ないような」
「本当?エースが知ってるってことは、実はそんなに古い本じゃないってこと?」
「いや、わかんねェな。思い出せねェ」

額の横に指をあてて一応思い出そうとはしたようだが、エースは早々に諦めた。そしてナマエの肩を抱き寄せて、ニッと口角をあげる。

「開いてみようぜ」
「え?」
「中身見たら、何か思い出すかもしんねェ」

それもそうかと納得する。エースの目がわくわくと輝いて見えた。
思っていたドキドキとは違うけれど、これ、ちょっと楽しいかも。二人でキッチンで身をかがめて、隠れるようにこそこそと話して。
それに二人は何ていっても海賊。目の前の宝らしきものを我慢することなんてできないのだ。


◇ ◇ ◇



(なっ、何よ、これっ!)
「ははっ!これはすげェな!」

一糸まとわぬ男女のまぐわう姿が見開き一頁目に現れて、ナマエは絶句した。エースは思い出すことは何もないのか、固まるナマエを他所に横から手を伸ばして頁を次々にめくっていく。しかし頁をめくれど、めくれど、出てくるのは男女のまぐわいばかりで、ナマエは目が回りそうになった。もしかしなくても、エロ本という類のものであるようだった。
男女のまぐわいといっても、それは絵であった。初めてみる独特な絵である。筆で描かれたようなタッチで、平面的な構造の絵ばかりだ。男女共に無駄なものを省き、強弱もなく簡潔に描かれている。陰影もなく、顔の表情も線を描いただけのように釣り目で質素で乏しい。人間を描いていることに間違いないのだが、手配書の写真とは余りに現実離れしている。しかし、なぜか男のアレと女のアレだけがリアリティを備えてえらく誇張されて描かれていて、ナマエは目を剥いて凝視してしまった。
本の中の男女は、寝転んだり、立ったり、座ったりと体位を変えて、中にはこんな体位でできるの?と疑わしいものまである。
次々に出てくる男女のまぐわいに、ナマエは少々気まずくなるが、エースは気にすることもなく、「すげェな」「おお!」「これはやりすぎだろ」とか何とか言いながら頁をめくる手をやめない。ナマエも興味のほうが勝って目を逸らすことはできなかった。
それに不思議とこんな現実離れした絵であるのに、見れば見るほど心拍数があがるものがある。質素だからこそ、なぜかそこに艶めかしさを感じ始める。乏しい女の表情から熱のある声すら聞こえてきそうである。
最後の見開きで、男女が立ち姿でまぐわった。女が男の首に手をまわし、男は女の尻を抱えて支え、向かい合って繋がっている。

エースとはこんな体位でしたことはない。
これって…気持ちいいんだろうか。
想像すると、頬が火照って熱くなった。
想像したのはエースも同じだったのか。

いつの間にか黙っていたエースが、ナマエの赤い耳に手を伸ばしたのだった。耳たぶを柔くもまれて、くすぐったくて目を瞑ればエースは笑う。そして、ゆっくりと目を開けると、タイミングを見計らったのか問いかけられる。
「シてみるか?」
羞恥心が湧き上がってくる。けれど一度想像してしまった手前欲望には逆らえず、ばくばくと心臓は脈打った。求めていたドキドキを遥かに超えるそれに、ナマエは頷くしかなかったのだ。



◇ ◇ ◇


「どれからするんだ?」
「えっとね…」

まるで買い出しで八百屋に来たときのような会話である。エースの部屋へきて、ベッドに座り、改めて本を二人で眺めた。一般的な体位も描かれているのだが、どうせなら初めてのものを試してみたい。ナマエはエースの表情を伺いながら、とある頁の男女を指さした。いつもエースに流されるままであったので、自分から要求するのはなかなかに恥ずかしい。

「こういうのがいいのか」

ニヤニヤとエースは笑ってナマエの顔を覗く。いつになく意地悪だ。

「い、いいから、早くやろうっ!」

ナマエはブラウスのボタンを外して恥ずかしさをごまかした。エースはその様子を面白そうに眺めながら、自身のズボンを脱ぎ払ったのだった。
本の中の男女と同じようにお互いに何も纏わない姿になり、ベッドの上で向かい合う。いつもはエースが服を脱がせてくれたので、自分から素っ裸になって抱き合うことも初めてであった。

「よろしくお願いします」
「よろしく、お願いします」

頭を下げてふざけてエースが畏まった挨拶をする。心臓がバクバクと鳴ってそれを咎める余裕などなく、ナマエも同じように頭を下げた。
エースはナマエの手を取って、立ち上がらせる。そして壁際へナマエを連れて行くと、壁と自分の間にナマエを閉じこめたのだった。エースに見下ろされて、それだけで疼くものがある。いよいよ、始まるのだ。

「緊張しすぎだ」
「だって…」
「そんなんじゃ、したいものもできねェぞ?」

トンと背を壁に押し当てられ、両胸を一度に掬いあげられる。無骨な指が胸にくいこんで、這い上がる快感に顎をあげれば唇を塞がれた。緊張で固くなっていた体の力が抜けて膝が崩れたところを、太い腕に支えられる。

「んっ…」

片手で乳房をもまれ、熱い舌が口の中に侵入してきた。ナマエの舌は絡め取られ、ゆるゆると口の中で蠢いた。乳房の先端を摘まれて、甘い声が零れる。
ちゅうっと離れた唇は、ナマエの乳房へと移り、優しくその先を食む。舌先で先端を転がされて、流れる電流に腰が引けそうになるが、エースの腕はそれを許さない。胸が吸われる様を見下ろすのは視覚的に昂るものがある。

「あぁっ、エー、ス、やだっ、こんなのっ、ほんに、のってない」
「いきなり挿れるわけにはいかねェだろ?」

ああ、そうか。確かに、前戯もなしに始められるものではなかった。
けれど、ナマエはもう自分の蕾が、十分に蜜を溢れさせていることがわかっていた。何も纏っていないそこに蜜を受け取ってくれるものはなく、太ももを伝って零れていく。
これから始まる行為への期待だけで濡れてしまったのだ。
はやく挿れてほしいなんていったら、エースはどんな顔をするのだろうか。口にするのも恥ずかしい。でも、気が付いてほしい。
下半身をエースの足にすりつければ、エースは足に触れた水気に少しだけ目を開いて、うんと頷き、口角をあげたのだった。

「準備万端ってことか」

エースは少し前かがみになって、ナマエに口づける。

「しっかりつかまっとけよ」

ナマエの手をとって、自身の首の後ろに回した。そしてエースはナマエの足の腿裏へと手を差し入れ、グイっと片足をもちあげたのだった。くっきりと割れた腹に柔いナマエの腹は密着して、そこに熱く硬くそり立ったエースの雄を感じる。

「挿れるぞ」

ナマエが荒くも甘い呼吸をしながらコクリと頷けば、エースは更に身をかがめた。
エースのものが腹をすべって、ナマエも秘所へと近付く。いよいよ待ち望んでいたものがくるのだと、胎の奥がきゅうっと閉まった。けれどエースのものは一向にたどり着かず、ナマエの腹を往復するだけであった。

「…んん?」
「どうしたの?」
「ちょっと待ってくれよっ、っと」
「わっ…」

エースは更に、更に膝をまげて身をかがめる。ようやく熱は入口へとあてがわれ、ひくつく入り口にズップっと先端が入り込んだ。ゆっくりと襞を開きながら押し入ってくる。

「んん…あぁっ…」
「ようやく…入ったな」

エースは安堵の息を出して、ぐりぐりと中で熱を動かした。今までにない角度の挿入に嬌声をあげれば、ゆっくりと下から打ちつけが始まる。
こんな気持ちいいの知らないっ…
突かれるたびに快楽の波が押し寄せて顔があがる。口をだらしなく開けて、とろんと目に力がなくなった。ぼやけた視界でエースが満足気に笑っている。

「どうだ?」
「聞かな、いでっ」

二人の身長差では、本の中の男女のようには行かず、ナマエの片足はつま先で立つのが精一杯であった。打ちつけるたびに、片足は宙に浮いた。エースが腰の手を緩めればあっという間にナマエの体はその場に崩れ落ちそうなぐらいに心元ない。
トン、トンと規則正しい拍子で突かれて気持ちがよい。けれどそれと同じぐらい、揺さぶられれば揺さぶられるほど辛うじて地についた足が引きつりそうな痛みをともなった。

「ちょっと辛いか?」
「え…?」
「体位変えるぞ?…よっ、と」

臀部を両手で掴まれて持ち上げられる。完全に身体が宙に浮き、視界がたちまち百八十五センチの男の高さになってナマエはぎゅうっとエースの首にしがみついた。熱塊はさらに角度をつけて奥へと侵入する。

「ああっ…これっ」
「興味ありそうだったろ?」

最後の頁に載っていた、男女のまぐわいであった。
そういえば、まじまじと見ていたのを見られていたのだった。現実離れしていると思っていたが、こんな体位でも本当に繋がることができるのだ。

「絶対手離すなよ?」
「うん…。重く、ない?」
「重くねェよ?それより、随分と余裕なんだな」
「あっ、ん、ん」

いきなり強くぐんっと突き上げられ、ナマエの甘い声が漏れた。耳の傍で、喉を鳴らして笑うエースの声が聞こえる。もうっと、ナマエが顔をあげれば、すぐさま口を塞がれた。舌先を突き出して、打ち付ける腰に併せてお互いの舌を絡めた。粘膜質な糸が伸びて零れ落ちるが、気にもせず唇を合わせる。

「ううっ、ああ、そんなっ、強く、しないで」
「はっ、エッロい顔」
「ううっ、あっ…」

ピンポイントで一番気持ちのよいところばかりをついてくるエースが憎たらしくて、首の手を滑らせて背中に爪を立てる。

「痛ってェ、このっ」
「わっ、あ、ああっ!」

逆効果だったようで、さらに激しく突き上げられる。この体位ではしがみつくのに必死で、ナマエは自由に動くことが出来ない。ベッドの上なら、もっとやり返してやれるのに。それをわかっているのか、余裕のあるエースの表情がさらに憎たらしい。

「えーすっ、」
「ん?」
「次の、しようっ」
「物足りないか?」
「これも、いいっ、けど」
「仕方ねェな」

挿入したまま、ナマエを抱えてエースはベッドへ向かった。そして背からナマエをゆっくりと下ろして、片手で本を引きよせた。

「さて、どれにする?」
「えっとね、」

できれば次はナマエが優位に立てるものがいい。

「…お?これなんてどうだ」
「え?…っひゃっ、ああっ…!」

吟味しようとした矢先、エースは一度熱を取り出して、寝そべるナマエの体を横向きにした。ナマエの足を広げて片方の足に跨る。そしてもう片方の足を持ち上げて己の肩にたてかけ、開かれた膣口へと腰を進めたのだった。ぬちゃっと淫音をたてて、いとも簡単にエースの熱塊を再び受け入れる。先程までの体位よりも奥に到達した熱は、子宮の入り口まで届いたようだった。

「はっ、あ、あんっ」
「うぅっ…」

エースが今日初めて唸った。余裕を浮かべていた顔が歪んだのであった。

「これは、たまんねェな」

肩に置かれた足の腿をエースの逞しい両腕が掴み、激しく打ちつける。執拗に何度も何度もつかれてジンジンと痺れ出す。

「ま、待って、まってっ!」
「すまねェ…無理、そうだっ!」
「あっ、あっ!あぁっ…!」

早いピストン運動に、襞の中を熱塊が暴れ回るように動き、ナマエは快楽に襲われて意識を飛ばしそうになる。

「まだ、いくなよ」
「やだっ、もう、いっちゃう」
「我慢しろっ」
「あ、やだっ、んん、あぅ」

ナマエは横目でエースを見た。
恍惚と汗を滲ませて、頬をほのかに朱に染めたエースがナマエを見て笑っている。その顔をみると、さらにきゅうっと子宮がしめつけられ、絶頂が近付いたのだった。
エースに触れたいのに、横向きにされて足までとられては、手も届きやしない。キスだって、こんなにしたいのに、できない。
気持ちよさに、やり返してやりたいなんて気持ちはもうどこかへいった。ただただ、もっとエースを感じたい。

「あぁっ…!」

もどかしさを抱えながら、ナマエは絶頂を迎え、目の前が白くかすんだのだった。

「イったな?」

エースの問いにコクコクと力なく顎を動かせば、彼は笑いながら休む暇もなく中を掻き乱す。蜜が溢れ出た中から、明らかに大きくなった水音が鳴った。
エースはこの体位を気に入ったようで、このまま熱が果てるまで続けるようだ。けれどナマエはエースに触れたかった。彼と自分を隔てる足が恨めしかった。

「え、す」
「ん?」
「キス、した、いっ」

ナマエがこぼれこぼれに言葉を紡いで懇願すれば、エースは少し目を見開いた。エースの口元がゆるゆると緩んで、照れ隠しか鼻を手の甲ですする。

「お前、可愛いこというなよ」

ズポッと再び熱を引き抜くと、すぐさまエースはナマエの足を肩から下ろし、その体に覆い被さった。唇をゆっくりと重ねて、僅かに開いた隙間に優しく舌が侵入した。ナマエも答えようと舌を動かせば、ちゅうっと舌を吸われる。
酷く攻めてもくるくせに、こうやって存分甘くもしてくれる男である。
ナマエはエースの背に腕をまわして抱きしめ、二人の体は隙間なく密着したのであった。

「嬉しそうだな」
「やっぱり、これが、いいね」
「他のはイマイチだったか?」
「…そんなのわかってるくせに…」

ナマエがどの体位でも気持ちよくなっているかなんて、一番にわかっているはずなのに、わざと尋ねて意地悪だ。

「そうだな。悪かった」

白い歯をみせて笑い、キスを繰り返す。
倦怠期≠ネんて言葉、調べる必要なんてなかった。やっぱりこの言葉は私たちに当てはまりはしなかった。
密着した腹に、まだ熱く硬さを衰えさせないエースの熱を感じる。ナマエは両足を広げてエースの腰へと回したのだった。何も言わずに視線が交わった。もう一度キスをして、エースの熱はナマエの中へと入ってくる。

「うっ…はは、やっぱりこれいいな。一番しめつけて、くるっ」
「離れ、ないで」
「わかってる」

舌を舐め合って、お互いの胸と腹をくっつける。ナマエが両足にさらに力を入れれば、熱塊は更に深く深く入りこんでくる。

「ぐっあ、っ、くっ」
「はあっ、んんっ、んあ」

まだ試していない体位は山ほどあるのに、何故だかこの体位が一番気持ちいいような気がした。お互いの顔を見ながら体を密着させて、腰がゆれるたびに快楽が押し寄せる。心も体も満たされるような気がした。

「好きだよ…」

ぎゅっ、と彼を強く抱きしめると、ふっと柔らかくエースが笑った。
そしてナマエは二度目の絶頂を迎え、後を追ってエースも果てたのだった。


◇ ◇ ◇


「しかしとんでもない本だなこれ」

ナマエと横並びに寝そべって、エースは本をめくった。
今日はお互いに果てた後に、尻を叩かれることもなく熱いキスをしてもらえてナマエは機嫌が存分によい。

「…あっ、思い出した!」
「え?」
「この本ワノ国でみた本に似てるんだよ」

エースが白ひげ海賊団に入る前に訪れたという国である。オヤジたちも過去にそこへ大冒険をしたと聞くが、ナマエの生まれる前の話である。
そしてワノ国出身で、現在この船にのっているといえば自ずと本の持ち主はしぼられる。

「…もしかしてイゾウ隊長?」
「イゾウのやつ、こんなもの隠し持ってたのか」
「…イメージないけどな」

女性かと見間違えるほど美しい見目で、何事も卒なくこなすイゾウが、こんな情欲まみれの本を読んでる姿は想像しがたい。しかしエースはイゾウの弱みを見つけたとでも思っているのか、にやにやと楽しそうである。

「今度聞いてみるか」
「私は勇気ないからエース頼むね」
「おう、まかせとけ。…それより次はどれにするんだ?」

不意に問いかけられ、言葉に詰まった。
今回の体位では、結局いつもの体位が一番よかったけれど、正直他の体位への興味は尽きていない。

「これ全部しようと思ったら、どれぐらいかかるんだろ」
「お前これ全部やるつもりか?」

ぶっとエースが噴き出して、ついつい口走ってしまったことに気が付いた。
恥ずかしくなって枕に顔をうずめれば、エースはナマエの頭を一撫でして耳元に口を寄せる。

「時間ならいくらでもあるだろ?ゆっくりやってきゃいい」

息があたってくすぐったく、変な声がでてしまいそうだ。けれどエースがこの先も二人の関係が続くことを話してくれたことは素直に嬉しかった。
ナマエはゆっくりと本に指を伸ばして、とある頁の男女を指さした。

「へ、これか。なるほど」

そうか、そうかとニヤケながらエースは頷く。そして恥じらうナマエの額へとキスを落としたのだった。

・本日の成果
《 立ち鼎   櫓立ち  丁字引き  網代本手 》

二人が十分に楽しんだ後。
本を渡したイゾウが叫び声をあげるのは、また別のお話。

「おでんさまああああ」