Bridal Escape!!
俺はいかなる時も 病める時も 健やかなる時も 富める時も 貧しき時も
君を愛し敬い慈しむ事を誓うよ
何が誓いますだ 馬鹿野郎
そう三ヶ月前に私に誓った男は、どうやら別の女にその愛を誓うようだ。
「運命の人に出会ったんだ!」
ある日男はまるで浜辺で人魚でも見つけたかのように目を輝かせ、頬を染めながら言った。それを第一声恋人の私に言うか?と思ったが、彼はよくも悪くも素直な人だった。
そして人魚というのもあながち間違いではなかった。その女は海賊で、海を愛した女だった。
ログがたまるまでの間だけ…と島に降り立って、そのわずか七日の間に私の恋人と出会い恋に落ちた。欲しいものは力づくで奪うという海賊らしく、恋人がいようが関係なく私の恋人を口説いたらしい。それにコロッといってしまった恋人も恋人だが、私と築いてきた三年の付き合いなんて、一瞬で泡となって消えてしまうほど彼女との出会いは衝撃的だったようである。
そして別れようという言葉もなく、私たちの関係は消滅した。女は船を降り、それから三ヶ月後の今日、彼と結婚するのだ。
こんがりと焼けた肌にチャーミングな笑顔で快活な女は、すぐに島民に愛された。女はまるでこの島で生まれ育ったかのように島民たちと話し、笑いあい、溶け込んでいる。みんな私が彼の恋人であったことを忘れたかのようだ。
その極めつけに男から結婚式の招待状が届いたとき、私は唖然とした。人間究極に自分の理解が及ばぬことが起こると思考が停止するのだと知った。悲しいとか、怒りとか全部の感情を通り過ぎて無になる。涙も出ない。彼の中で私と過ごした記憶は完全にリセットされたようで、元恋人でもなく、それ以前の女友達にまで時間を巻き戻したらしい。
そうですか。貴方がそういう態度をとるのなら。貴方が私を友人として招待しようというならば、招待されてあげようじゃないの。
そして私は二人へのささやかな祝福を送ろうと思うのだ。
式の当日。私は戦闘服を身に纏い、開場へと足を踏み入れた。
この日のためだけに、普段はいかないような高級ブティックで購入した真っ白なワンピース。本当はウェディングドレスを着てやりたかったけれど、これはせめてもの二人への優しさだ。そして何より本当に大好きな人と結ばれる時の為に、ウェディングドレスは取っておきたかった。だから限りなくウェディングドレスに近いような、レースをふんだんにあしらったマキシ丈のワンピースにした。島一番の美容師に髪の毛と化粧を施してもらって、過去一番に綺麗に仕上げてもらった私は最強である。
式場は旧貴族の館である。近くのチャペルで挙式をした後、バラ咲き誇る美しいガーデンテラスで披露宴というわけだ。挙式は親族のみで行うようで、ゲストは挙式からの参加である。
今日の日の為に整えられたかのような雲一つない空が、二人の門出を祝福している。
そんな良き日に、突如マナー違反の白いワンピースの女が招待状を差し出したものだから受付の女性は目を丸くした。白は花嫁だけが着ることを許された色である。ゲストがその色を避けなければいけないのは常識だ。
会場の全員が私を白い目でみた。そんな人たちに作り笑顔で会釈して、自分のネームプレートが置かれた席へついた。同じテーブルのゲスト達はやはり目を合わせようとはしなかった。
「それでは、新郎・新婦の入場です‼」
しばらくして、司会進行の女性が声高らかにいい、BGMが流れ始める。館の荘厳な扉が式場のスタッフに引かれて開き、白のタキシードとプリンセスラインのドレスを身に纏った二人が現れたのだった。パニエで膨らんだドレスはボリュームたっぷりで胸元にはビシューが散りばめられ、私のストレートですとんと落ちたワンピースとは比べ物にならないほど豪華絢爛である。割れんばかりの拍手に包まれて、二人は腕を組んで幸福な笑顔をバラまいてテーブルの合間を通っていく。
そして私の姿を見た女は目を見開いて笑顔を崩し、化け物でも見たかのように口をあんぐりと開けて固まったのだった。何故お前がその色を着ているのだと言いたげな視線に私は皮肉を込めて言ってやる。
「結婚、おめでとう」
私の言葉に女は美しく化粧された眉をつりあげて私を睨みつける。
何が元海賊だ。怖くなんてないんだから。決して目を逸らすまいと負けじと睨み返した。
嫌でも何かあったことを悟った同テーブルのゲストたちは皆修羅場だと目を泳がせる。花嫁の後ろにつく介添人もたじろいでいる。しかしその険悪なムードを壊したのは、私の元恋人であった。
「ありがとう‼とっても嬉しいよ!」
と満面の笑みを浮かべて、本当に心からその言葉を口にしたのだ。嘘偽りのない彼の言葉に、それは火に油だとその場は恐々とするが、私の心は凪のようにスンっと穏やかになった。
ああ、そうだよね。貴方は母親の体内から今生まれたかのように純粋な人だった。
そんなところも素敵なんて思っていた自分が疎ましい。
お前が捨てた女を招待するんじゃない、大馬鹿者め!
「お幸せにっ!」
そう言って、私は二人に満面の笑顔を向ける。そんな馬鹿男あんたにくれてやるのだと、眉間に力をこめて強く振るまう。そして男は女に無理やり引っ張られて、ようやく二人は高砂席にたどり着いたのだった。
二人から開会の挨拶がなされると、この気まずいテーブルから離れようとそそくさとゲストたちは席をたった。私はテーブルで一人になり、緊張がほぐれ、ふうっと息を吐き出したのだった。やりきった。もう思い残すことは…ない。運ばれてくる料理はもったいないけれど、これ以上自分の首を締める必要なんてないと席を立つことを決めた。
ところが、
「いや〜、ちょっとお尋ねしたいことがありまして」
そう言って私の横に男がどこからともなく現れたのだった。
上半身裸で、鍛えられたいい体をした、オレンジの帽子を被った男である。帽子の影で顔ははっきりと見えないが、私と同じぐらいこの場に似つかわしくない格好の男の登場に私は目を点にした。TPOをわきまえない者がもう一人増えたと、周囲の人たちから益々白々しい視線を向けられているようだが、私はこの男の登場でそれどころではない。
「おっ、美味そうな料理だな。ちょうど腹が減ってんだ」
肩にかけたリュックを椅子の背もたれにかけて隣に座った男は、我が物顔でフォークを持つと前菜の鯛のマリネにぶっ刺した。
「ティーチっていう男を探してんだが、あんた知らないか?」
口をもぐもぐと動かしながら、男は後ろ手でリュックから紙を引き抜くと、ほれっと渡してくる。それは手配書であった。手配書にはお世辞にも美しいとはとてもいえない悪人面のもじゃもじゃの男が載っている。
「すっごい悪い顔してるわね、この人」
「ははっ!間違いねェ。そいつは大悪人だ」
「…残念だけど、見たことないわ」
「そうか?次の航路ではここを通ると思ったんだが違ったか。それにしても、これ美味いな!」
「それなら私の分も食べていいわよ」
皿を男の方へスライドさせると、男はあんたいい人だな!と声をあげた。そして帽子の鍔を持ち上げて、男が顔を上げたので、私はようやくまともに男の顔を見たのであった。
少し日に焼けて眩しい笑顔を浮かべた男は、顔いっぱいに口を広げて白い歯をみせた。上がった頬のそばかすが可愛いらしく、屈強な体から想像していたよりも年齢は若くみえる。
「この島に来ているとしても、こんな結婚式会場には来ないでしょう?」
「けっこんしき?」
私の言葉に男はキョロキョロと周りを見渡して、今自分がどこにいるか気が付いたらしい。
「腹が減って、いい匂いに釣られちまった」とさっぱりと笑う。
呆れた。こんな人がいるなんて。匂いに釣られて勝手に屋敷に入ってきたというのか。
屋敷は三mほどの塀に囲まれているし、入るならば正々堂々と正面玄関から入らなければいけないはずだ。流石に玄関にはスタッフが常駐しているはずだし、不可解な男である。
男に気がついたのか、式場のスタッフがこそこそとこちらを見て話をしている。悪い人ではなさそうだけど、これ以上見知らぬ男といて面倒に巻き込まれるのもね…と私は再度席を立とうとする。
しかし、じゃあねと立ち上がり、男を一瞥した私は固まった。男が皿に顔を突っ伏したからである。ベチャっとマリネに顔を埋め込んで倒れたものだから、じゃあねと言うつもりが「うあわっ!」という悲鳴に変わった。
「ちょ、ちょっと‼大丈夫!?」
慌てて男の肩をゆするが、びくりとも動かない。嘘でしょう?今の今まで会話をしていたのに。嫌な予感がする。まさか…シんだ!?突発性の心臓病とか!?
ちょっと誰か‼と助けを呼べばいいものの、咄嗟のことで軽いパニックを起こした私は男の肩をとにかくゆすり続けた。
「ぷほっっ‼」
「きゃあああ‼」
男がいきなり顔をあげたのでまた悲鳴をあげてしまった。男の顔にはマリネのドレッシングやら鯛の切り身やら難しい名前の野菜やらが貼り付いている。生きてるの?と尋ねようと男の顔色を覗った。
しかし、男は急に私のワンピースの裾をもちあげて、あろうことか顔をごしごしと拭き始めたのだった!「何かこれ肌ざわり悪ィな」と文句をいいながら、真っ白なワンピースにドレッシングのオレンジ色が移っていく。レースなんだから肌触りが悪いのなんて当たり前だ。
「いや〜まいった…………眠っちまった」
「何なのよ!あなたわっ‼」
息巻いて男の頭を思わずひっぱたけば、「いてっ!」と男は声を上げて、ゆったりと
「おお、あんたか」なんて私に今気づいたみたいに悪気もなく言うのだった。そして男は何やらマジマジと私を見て言葉を続けた。
「あんたのその服…似合ってんな。綺麗だ」
「はい!?今あなたに汚されたん、ですけどっ…!」
次々に文句を言ってやりたいのに、何故だか私は言葉に詰まる。
何でだ。「おめでとう」と二人を祝福したときにさえ堪えたのに。
本当は彼に言って欲しかった言葉を、今出会ったばかりの不審な男に言われただけなのに込み上げてくるものがある。
ああ、だめだ。
鼻をすすると、堰を切ったように涙が溢れだす。男は急に私が泣き出したものだからポカンと間抜けな顔をしている。口は相変わらずもごもごとしているけれど。
「どうした、どっか痛ェのか?」
「違う違う、違うの…」
必死に涙を拭くが、すぐに止まりそうにはなかった。
今さら気がついたけれど、この男との一連のやり取りはかなり目立っていたようで。あれほど私たちを白々しく見て避けていた会場の誰もが私と彼に注目していた。そして高砂席の花嫁は怒り心頭の形相で人様の結婚式で騒いでいる私たちを睨みつけている。
ああ、これは流石に海兵でも呼ばれそうなやばい雰囲気だ。この場所から直ぐに出ていかなければ。
「ちょっと、あなたも来て!」
「何だよ、まだ食事中だ」
「いいからっ!」
一人で逃げればいいものの、何だかこの男のことを放っておけなかった。涙を流したまま、マイペースに食事を続ける男の腕を引くがびくともしない。
「あなたも逮捕されるわよ!」
「オレは大丈夫だ」
「何の自信よ!」
全体重をかけるがやはり男は動かず、余裕に私の力む顔をみて笑っている。その時だ。
「ポートガス・D・エースはいるか‼」
屋敷の扉を開けて、銃や刀剣を持った海兵が急に雪崩込んできたのだ。
うそ!もう通報されていたの?と思ったが、私より先に叫んだのは花嫁だった。
「か、海兵‼」と海賊から足を洗ったはずの彼女は反射的にか、顔を真っ青にして高砂席から逃げ出した。会場はざわめきが起こり、「ポートガス・D・エースだって!?」と所かしこから声が上がる。
何よ、そんなに有名な人なの?
しかし指揮官らしき人は会場を見渡し、私の横に座る男を見つけると刀を振り下ろす。
「あそこだっ!取り囲めっ‼」といきなり号令を叫び、一斉に海兵たちはこちらへ向かって進んでくる。結婚式はもはや大混乱でゲストやスタッフたちはおおあらわで叫び声をあげて我先にと逃げ出した。
「ねえ、あの海兵さん。あなたを指さしてこっちに駆けてこない?」
「はっはっは‼そうみたいだな!もう見つかっちまったか」
「見つかっちまったかじゃないわよっ!」
しかし押し寄せる海兵をもう一度見た私は、目を剥いた。そこに花婿も加わって駆けてくるからだ。私の名を呼びながら、手を伸ばして何故だかこちらに向かってくる。
まさか私を助けようとか思ってる?何を今さら。王子様にでもなろうというのか。私の心をぐちゃぐちゃ傷つけておいて。
「さて、そろそろ行くか」
三十はいるだろう海兵の数に焦りもせずに、ようやく男は悠然とリュックを手にとって席を立った。
「じゃあな。ご馳走様」と一人で去ろうとする男のズボンのベルトを私は咄嗟につかんだ。そして「うぉっ!」と男が変な声をあげてこっちを振り向いた瞬間、私は捲し立てるように叫んだのだった。
「何でもするから、ここから連れ出してっっ‼」
とにかくあの男に捕まってたまるかとの一心で大胆な台詞が出てしまった。あんな奴に捕まるなら、この不審な男にもすがってやる。
涙はこんな大混乱でいつのまにか引っ込んでいたが、ベルトを掴んだ手は震えている。
「おう。いいぜ」
あられもない申し出に断れると思っていたがあっさりと受け入れられて、「へっ」と声をあげたときには、ポスっと彼の帽子を被せられた。そして次には浮遊感があって、なるほど私は彼にいわゆるお姫様抱っこというものをされたようだった。
「しっかり捕まっておけよ!あ、ついでにこれも頼んだ」
どこから手に入れたのか骨付き肉をほいっと片手に持たされて、彼が前屈みに構えたので、振り落とされまいと私はその首根っこにしがみついたのだ。
「貴様、一般市民を人質にとるなどっっ!」
海兵がお門違いなことを叫んでいる。うぉぉと海兵たちの雄叫びが近づく中、彼の通った声が鼓膜を震わせたのだ。
「火炎網っっ‼」
どこからともなく炎が放たれて、駆けてくる海兵と花婿の前に線を引くように炎の壁が現れる。あちちっ!と海兵がたじろいで立ち往生する。けれど不思議とその炎の熱さを私は感じない。まるで魔法のようだ。
炎の揺らめきの間から、私のかつて愛した男の泣きそうな情けない顔が見える。純粋な正義心か元恋人への未練か。もう理由などどうでもよかった。二度と彼に会うことはないだろうと思えた。それならば「お幸せに」だなんて強がった皮肉じゃなくて、本当に言ってやりたかった言葉をぶつけてやりたい。
「あんたなんて大っ嫌いっっ‼さようなら‼」
そう口にした瞬間、涙が出てきそうになったが堪えた。
三年間の思い出との完全なる決別である。
泣いたら私に未練があるみたいだから絶対に泣いてやるものか。
私を抱えた男は、何がおかしいのかケタケタと笑って走り出す。彼の首に回した手に力を込めれば、さらに愉快そうに男は笑う。
「あんた面白いな」
「…そう?最低な女だけどね」
「話はさっぱりわかんねェけど、かっこいいと思うぜ」
「……ありがとう」
男の背中越しに見る花婿は、どんどん小さくなっていく。
あーあー、あんなに泣いちゃって。何で私あの人のこと好きだったのかな。
ざまあみろ。さようなら。
一番言ってやりたかった言葉を口にしたことですっきりと心が晴れて、笑えてくる。このエースという男が汚したドレッシング付きのワンピースもいっそ清々しい。
私にはこんな綺麗な服は不似合いだ。
「で、どこまであんたを連れていきゃいいんだ?」
「えっと…遠く!とにかく遠く!」
「ははっ!何だそりゃ」
男は私を抱えたまま炎を上げて軽々と屋敷の塀を越えていく。
「ママ見て!お姫様っ!」
島を駆け抜けていく私たちをみて小さな女の子が声をあげる。
子どもから見ればレースたっぷりのワンピースを着た私はお姫様に見えるのかもしれないが、半裸の男はどうみても王子様とは程遠い。その実態は、ほんの数分前に出会った海兵に追われる何やらすごそうな男と、恋人を取られた仕返しのために花嫁の白を着込んだ哀れな女である。しかも骨付き肉を持った。
「ねぇ、あなたって海賊なの?」
「ああ。言ってなかったか?白ひげ海賊団、ポートガス・D・エースだ」
海賊は大嫌いだった。力づくで私の愛した人を奪ったから。
けれどその海賊≠フ大胆さに今私が救われたのも事実で、一概に大嫌いと言い切れず、「そう…」と答えるだけに留めた。
常識破りな男だけれど、惹かれるものがあるのも事実である。私を支える腕は逞しく、島の男たちでは到底及ばない。若そうに見えるくせに、やけに世間を知っているような大人びた顔をしている。けれど少年のようにも笑う不思議な男だ。もしかしたら花婿も花嫁の海賊≠ニしての型破りなところに魅力されたのかもしれなかった。
「ねぇポートガスさん」
「エースでいい」
「じゃあエース」
「何だ?」
「さっき何でもするって言ったけど、何がいいの?」
「とりあえずは食いもんだな」
「そんなのいくらでも食べさせてあげるわよ。何ならログがたまるまで寝床もつけてあげる」
「あんた気前いいな!助かるぜ」
「………なんなら、一晩相手もしてあげる」
と小さめの声で耳元で言えば、エースはきょとんとして私を見下ろしたのであった。
虚をつかれた顔は幼く可愛らしい。
こんな言葉がでるなんて自分でもびっくりだ。尻軽な女ではないと自負しているけれど、彼ならばそうなってもいいと思ってしまったのだ。
「そこまでしてもらう義理はねェよ…」
とエースは顔を逸らした。
けれど私は気づいているのだ。
彼の喉が大きく上下したことを。男は腐っても男である。
「……本当にいらないの?」
彼を後押しするようにもう一声かければ、エースは「あんた、簡単にそんなこと言うもんじゃないぜ」とか何とかゴニョゴニョと言っている。その様子がおかしくて、ぷふっと吹き出せば、揶揄われたと思ったのかエースが不機嫌に顔をずいっと近づけた。
「な、何…?」
怒らせた?確かに出会ったばかりの女に抱かせてやるなんて言われたら、馬鹿にされたみたいで引いちゃうか。
海賊ってこっちの方面にはもっと緩くて、来るもの拒まず、すぐに手を出すと思っていたから意外だった。
しかし彼は私の顔を見ながら言うのだ。
「…味見だけっつーのも、あり?」
下心ありありのくせに、格好をつけていたなんて!内緒話をするように言ってくるものだから、いよいよ私は可笑しくて、声を上げて心から笑ってしまった。
雲一つない空に笑い声が響く。
日差しが心地よく、全てをリセットするに相応しい日である。
大嫌いな男と決別し、大嫌いだった海賊≠ナある男に抱えられての大逃亡劇。
現実は小説より奇なりとはよくいったもので、気分は最高潮だ。
だから私は大きく息を吸い込んで、とびっきりの笑顔でエースの問いに答えてやるのだ。
「ありありの、ありっ!」