01
彼女は美しく聡明だった。
そして儚い雰囲気をまとい、彼女自身が意図せずともその鴇色に魅せられた男達は守らなければという衝動に駆られる。
そして彼女の周りの景色に溶け込むような儚さはあの花を連想させた。
いつだったか耳にしたあの花の逸話。
「知っていましたか?桜は、人の命を吸って咲くんですよ」
咲くそばから散っていくその姿は人の命そのものだと、誰かが言った。
嗚呼、あの日あの時あの瞬間、彼女と出会いさえしなければ。
もっと違った運命があったのだろうか?
桜咲く日に恋が散る
水曜日に香るモントブレチア
イゾウと出掛けたはずの長男坊が不死鳥の姿で戻ってきた時、何か問題が起きたのかと焦ったのは珍しく船に残っていた4番隊隊長のサッチだった。
聞けば何も問題は無かったと言うマルコだが、その様子は尋常ではなく、まるで何かに怯えるような素振りさえ見えるマルコにサッチは困惑していた。
とりあえず落ち着くまで待ってから話を聞こうと決め、見張りをクルーに任せ、マルコを食堂へ連れて行くとマルコが好んでよく飲む濃いめのコーヒーを淹れた。
ほわほわと嗅ぎ慣れたその匂いに幾分か落ち着いたのかマルコは一口含むと、深く息を吐いた。
「で、どうしたんだよ。あんなに焦ったお前久しぶりに見るぞ」
「…………サクラ、がいた……」
「サクラって、この前言ってた?」
「よい…………部屋に戻る、落ち着いたらまた顔出すからしばらくひとりにしてくれ」
「え、あ、おい、マルコ……、」
サッチの止める声も聞こえているのか不確かなままマルコはそう言うと青白い顔で食堂を出て不安定な足取りで部屋へ戻る。
心配そうに後ろ姿を見送る悪友の視線に気付かぬままマルコは廊下の向こうへと姿を消した。