籠 り   main diary mail reply  
I my mine
僕達の司書さんはふらっと現れて、ふらっと消えていく。
そんな人だ。

僕が一人になりたくないのを思ってか、司書さんが司書さんに就任した日から図書館にいる間中は、ずっと僕を助手として隣に置いてくれている。
そして司書さんが図書館から離れる時は、僕と親交のある誰かに僕のことを頼んでから去っていく。
司書さんが僕を誰かに預けるのは、司書さんがいなくなることの暗黙の了解みたいになっていた。

暗黙の了解なのでいつも別れの挨拶等は言わない。
僕はそんな、勝手に手の届かないところへ去っていく司書さんのことを傍若無人だと、いつも恨めしく思っていた。


「朔太郎くん、」


司書さんは諌めるように僕の名前を呼ぶ。
犀に僕のことを頼んだ司書さんの袖を、僕が離せないでいるからだ。

間接的に諌めても無言を貫く僕に、司書さんはまるで子供をあやすかのように僕を抱きしめて頭を撫でた。
それが情けなくて、虚しくて、寂しくて、悲しくて、嬉しくて、袖を掴んでいた手から力が抜ける。
司書さんはそれを確認すると、何事もなかったかのようにするりと横を抜けて去っていく。

きっと戻ってきても彼女は何事もなかったように、僕を隣に置くのだろう。
いつものように。


「朔、」
「……うん、分かってる。分かってるよ、犀」


いつかちゃんと『いってらっしゃい』と、笑顔できみを見送ることはできるのだろうか。
そしてきみはそれに『いってきます』と応えてくれるだろうか。
そしてそれからちゃんと此処に帰ってきてくれるだろうか。

今はまだ分からない。
でもいつかは絶対に言ってやろう。
きみはぼくのことを置いて行ってるんだって、思い知らせるんだ。

ぼくたちの関係は曖昧だけど、きっとぼくはきみのもので、きみはぼくのものなんだから。




20191107
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