籠 り   main diary mail reply  
#01 広がる空
side:主人公2


鳥のさえずりが聞こえる。
いつもの窓越しではないすぐ近くで。
それに風に流される草の音が耳をくすぐり、何かが頬を撫ぜた。
大地と太陽の匂いがする。


「なん、だ?」


違和感を覚え身体を起こす。
いつもの家では、ない。
見慣れた自分の部屋でもない。
だだっ広い新緑と、どこまでも続く澄んだ群青がそこにあった。
ベットで寝たはずだったのにどうしたんだろう。
夢かもしれない、と自分の頬を叩く。
感覚は良好。だが、目が覚めることはない。
ヒリヒリとする頬の痛みとともにジリジリと身に現実味というものが染みてくると、背筋に悪寒が走った。
悪寒に縮こまって肩を抱いていると、後ろから草を掻き分ける音が聞こえてきた。
それが近付くにつれ、己の鼓動が早くなるのが分かる。
背中側の森を注意深く凝視していると、それより深い翠が中から現れた。


「アンタ、ここで何やってんの?」


まさか。
思わず息を飲む。
奇抜な服装に奇抜な仮面。
それは正しく機械を通して見た事がある人物。

烈風のシンク

シンクらしき彼は草を掻き分け、こちらに歩いてくる。


「ねぇ、聞いてるの?」
「え、あ……」


質問にどう答えればいいのか詰まってしまう。
正直に話しても今は色々な事が混じり合ってそれすらマトモに説明出来ない。
言葉を探して視線を空に漂わせていれば、あからさまに面倒臭そうな溜め息が聞こえた。
仮面越しからも呆れたような視線を感じる。


「ここ立入禁止の場所なんだけど、一体どこから入ってきたの」
「……あ、あの」
「何」
「ここって、一体どこなんだ?」


空間が止まる。
不審がる視線が更に深く突き刺さり、仮面の奥の眉が顰められたのが分かった。


「……ふざけてる訳?」
「ち、違う!」


身体全体を使って全力で否定する。
オレは知り合いとは違い相手をからかうようなふざけ方はしない。
というか、緑溢れる景色しか広がっていないのにここがどこだか分かる人はいるのだろうかと素朴な疑問を抱く。

その間もシンクは探るような視線で俺を見ており、しばらくすると考え込むように俯いたかと思えばひとつ深いため息をはいて森の中へと歩き出した。
もしや自分の手には負えないと判断して帰るつもりなのか。
どこへ行くんだと呼び止めようと手を伸ばせば、触れるより先に相手が振り返った。


「とりあえず付いてきなよ」
「え?」
「ここはローレライ教団総本山ダアト……そこに僕の所属する神託の盾本部って言うのがある」


マジかよ。ここダアトかよ。
起き抜けにフル活動していた思考も一気に停止し、言葉の通り頭が真っ白になった。
ここからはあまり記憶が定かではないが、俺の伸ばしていた手を握った時にシンクの口端が上がっていたような気がする。


「だからそこでキッチリ話を聞かせてもらうよ」




広がる空
目を開けた時に見た空はとてもとても広かった。

090129:181012
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