雨の日


地面が濡れ、雨の匂いが香る中、楓はALIVEを後にして家へと戻るため、傘を持っていな買った彼女は頭に通学かばんを乗せ、シュリを濡れないように抱いて走っていた。

(はやく、なるべく早く帰らないと。濡れてシュリが故障しちゃう)

歩くスピードから競歩程度のスピードで水玉を踏んでいく。スピードをあげることしか考えていなかった彼女は突如として何かとぶつかる。柔らかくも、硬くもない.......そう人だ。しかも衝突した人は傘を持っていたらしく、衝突した振動で傘からは雫が震えて彼女のもとへと落ちる。おかさまで少し、濡れてしまった。

「.......くしゅっ」

楓から出ないはずの声、もとい空気が吹き出される。もともと少し濡れていたが、傘のせいで更に濡れ身体が冷えたのか彼女はくしゃみをした。自分のことより、シュリのことを考えていた楓はすぐさま相手にお辞儀をして、去ろうとしたが、それは叶わず、通り過ぎようとした途端右腕を掴まれる。

「楓!」

目線を掴まれる右腕、そして衝突した人の顔の当たりを見るとよく見る顔の男がそこにはいた。

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(どうしてこうなっちゃたんだろう)

楓が衝突したのは頼城紫暮。彼女の2つ上の先輩でラ・クロワのヒーローだ。彼は楓の双子の兄の柊と楓のことを過保護過ぎるほど世話焼きで。双子の兄の柊からは少々嫌われている。楓は彼の事を特別嫌ってるわけでも無かった。確かにこうして濡れている楓を止め、家へと招きシャワー、そして制服が乾くまでの服を用意してくれた事から悪い人ではなくむしろ過保護すぎる優しさを持っている人だとおもうが、これは兄が苦手がるのも少し納得してしまう。

(…すこし、いたずらしようかな)
やけに大きいバスタブから出て、柔らかそうなタオルで身体を拭いていく。手に取るのは彼から渡された彼のものであろうワイシャツ。それに袖を通し、下着を着る。まだかまだかとその状態のまましばらく待つと、扉からノックが聞こえる。

「楓!もう着替えたか?…入るぞ」

扉が空き、足から洗面所に入ってくる。紫暮は目線を楓の足元から上に向けると、一時停止したように固まる。そう、彼女は下着の上にワイシャツを羽織っているだけでボタンを閉めていない。これが楓の考えた”いたずら”であった。いつも完璧で世話焼きの紫暮がどう言った反応するのか、楓は内心楽しみにしていたが、少々恥ずかしさもあり、顔が少し火照る。

「…………楓」

いつもより低い声で名前を呼ばれ、楓の肩が揺れた。楓が顔を上げるといつのまにか紫暮の顔が数センチ離れたところにあり、目を見開く。紫暮は楓が羽織っていたワイシャツのボタンを上から下に止めていき。最後のボタンを止め終わると、楓に目線を合わせ、微笑む

「俺以外に素肌を見せてはいけないぞ。」

楓の頭は真っ白になり、この男は何を言ってるのかと瞬きを二回ほどした。風邪を引くからちゃんと切るんだぞ、と紫暮は言うと、洗面所を後にした。楓は一人洗面所で、先程言われた言葉の意味を改めてよく考え、顔を真っ赤にした。

当の本人、頼城紫暮も洗面所の扉に背を向け顔を赤くしたのを使用人が見たとか見てないとか..............