今度こそ伝えるから
頭をかすめるのは、いつだって彼の声、彼のボロボロの姿。私はいつも彼のその姿を見て泣いて何かを言っている。
その光景は最初彼の顔にモザイクがかかっているように見えなくて、声すらも聞こえなかったが、日に日にそれは見えるように、聞こえるようになって、全て思い出した。
彼に対しての感情、思い。ボロボロの彼の言った言葉、私が彼に最期にしたこと、彼に伝えられなかったこと。
それは今ここにいる私のものではないかもしれない。それでも私は___________
「大好きです。紫暮さん。」
前の世界で言えなかった言葉、ずっと心の底に眠っていた言葉。
眩しいほど太陽のような彼、私には持っていないものを持っている彼、私は彼に惹かれていたんだ。
最初は苦手だった。けど、前の世界でボロボロになってまで仲間を守ろうとして前を向く彼を見ていられなかった、彼を止めたかった。私の隣にいてほしかった。
『戻ったら伝えたい事があるんです。紫暮さん。』
そう言って彼にキスをした前の世界の私、その言葉を今ここで伝えた私。
止まっていた時計を動かさなくちゃいけない。一歩前に進まなくちゃいけない。全ては"私"に追いつく為。
「私、貴方に恋してるんですよ。」
秒針は静かに動いて、私の身体に伝わるのは彼の温もり。
"私"の気持ちも、私の気持ちも伝えただけで私は糸がちぎれたように彼の背中を抱きしめれば涙を流した。
これはきっと恋だよね?"私"。