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・がんばれ瀬見先輩!(req)


「なぁ太一」

「なんですか瀬見さん」

「お前、どんな子がタイプだ?」


部誌を書いていると、背後から非常に興味深い会話が聞こえてきたのだった。
私は川西くんとはクラスも同じで、何かと関わる機会も多いはずだ。けれどもいまいち川西くんのキャラを掴みきれていないような気がする。川西くんはイケメン高身長さんだから、私も何かとクラス内外の女子から川西くんについての情報提供依頼を受ける。しかして「川西くんってどんな人?」と聞かれてしまうと、「掴みどころが無い人」というなんともまぁ元も子も無い返答しかできないのが現状だ。
だから今回の瀬見さんの質問には、私も物凄く興味があった。さすが瀬見さん。さりげなくいちいちファインプレーをかましてくれる頼れる先輩だ。


「えー・・・どちらかと言えばモフモフした子ですかね」


・・・モフモフ?


「あー・・・、太一もしかしてサモエドとか好きか?」

「サモエドいいっすねぇ。四六時中埋まっていたいです」

「そうか!いいなそれ!それはそうと、女の子のタイプはどうなんだ?」


さすが瀬見さん。何故かモフモフ方向に向かい始めた軌道を即座に修正してくれた。
というかタイプと聞かれていきなりそれを「犬のタイプ」に変換する川西くんもどうなんだろう。よっぽどの犬好きさんなのだろうか。


「あ、俺、あんまり性別とか気にしないっス。猫だと女の子のほうが性格キツイとかって聞きますけれども、結局は個体差だと思うんで」

「そうか!たしかにおっとりしたメスもいればアグレッシブなオスもいるもんな!それはそうと、人間についてはどうなんだ?」


さすが瀬見さん。修正しきれていなかったらしい軌道を根本的なところから正してくれた。
というか川西くん、やっぱりよほどの動物好きさんなのだろうか。たしかに頻繁に野良猫と会話しているシーンを見かけるような気もするけれども。


「え、俺・・・別にそういう趣味は・・・」

「そうだよな!無いよな!そうじゃなくて、好みの問題だよ好みの問題。ほら太一って基本的に誰とでもうまく接するイメージあるからさ、」


さすが瀬見さん。あからさまにドン引きした表情を浮かべる川西くんに臆することなく、且つ頭ごなしに勘違いを指摘するでもなく、的確に核心へと話を近づけてくれたのだった。しかして川西くんの言うところの「そういう趣味」ってなんなのだろう。川西くんは果たして瀬見さんからの質問をどんな形で受け取ったのだろう。そこは気にならないわけでは無かった。


「俺、基本的に嫌いな人はいません」

「そうか!素晴らしいぞその博愛精神!ちなみに、強いて言えばその中でも好きなやつってどんなタイプだ?」


さすが瀬見さん。物凄く食い下がる。なんだか意地でも川西くんから好きな子のタイプを聞き出そうという執念がひしひしと伝わってくるようだ。それにしても何が瀬見さんをそこまで駆り立てるのだろう。


「状況にもよりますよね」

「状況?」

「適材適所、というか・・・。例えば弟にしたいという意味では工ですし、オトンにしたいのは獅音さん。あ、ちなみに兄貴にしたいのは瀬見さんですダントツで」

「そうか!嬉しいこと言ってくれんじゃねぇか!でもな、兄ちゃんそういうことが聞きたいんじゃねぇんだよ。あのな、お前の女の子の好みが知りてぇんだよ!」


瀬見さん、なんだかめちゃくちゃ嬉しそう。良かったねお兄ちゃん。しかしそれでも絆されないでしがみつくあたりが、やっぱりさすがだと思う。なんだか川西くんも大概だと思うけれども、瀬見さんも相当だ。


「それは、どういう子が好きか、ってことですか?」

「そう!そうだよ太一!それだよ!」


おお。瀬見さん、ようやくの悲願達成。なんだかもはや川西くんどうのこうのより瀬見さんが不憫になりつつあったから、私まで妙な達成感に包まれてしまった。反射的に拍手をしてしまいそうになったけれども、折角瀬見さんがこぎつけたこの状況に水を差してしまいそうだったから、必死に堪えた。


「えっと・・・まぁできれば俺より身長が低い子ですね。高くても別にいいんですけれども」

「そうか!というか太一お前188.3cm以上の女の子に会ったことあるのか?」

「ありません」

「そうだよな!よーし!じゃあもう少し範囲狭めて行ってみようぜ!」


いい加減瀬見さんのテンションがおかしなことになってきた気がする。どういうわけか額には血管もうっすら浮き始めたような気もするし。それにしても川西くん、ひょっとしたら確信犯なんじゃないだろうか。私は川西くんのことをよく知らないから勝手な予想に過ぎないけれども、川西くんってさりげにそういうところ強かそうなイメージがある。


「えーっと・・髪が、黒かこげ茶色」

「そうだよ!そういうのだよ!なんてったってうちの学校俺やお前含めて髪色何かとファンキーなやつばっかだもんな!でもな、基本的に日本人である限りはやっぱりそれ9割くらいに当て嵌まるような条件なんだよ!きっと俺らは誇張表現なんだよ!」


瀬見さんは一体、何の話をしているのだろうか。さすがの川西くんもきょとんとしながら首を傾げている。


「瀬見さん、あの、何がしたいんスか」


そしてついに、川西くんが核心を突いたのだった。いや、核心も何も、瀬見さんずっとそのままのことしか聞いていないのだけれども。やっぱり川西くんはひたすらに掴みどころが無い。


「もういいよ!いっそお前の好きな女の子の名前俺に教えろ!」



よく考えたら、川西くんは伊達にずっとあの天童さんの隣でミドルブロッカーをやっていなかった。
そうか。この、ある意味でのマイペースなスタンスが川西くんのキャラのブレなさの所以なのだろうか。キャラがブレないのに掴みどころが無いって、なんだか物凄い人だなぁ川西くんって。UMAみたい。


「#NAME2##NAME1#さん」

「えっ」

「ん?呼んだ?」


なんだか唐突に名前を呼ばれたような気がした。
なんだか話の流れがとんでも無い方向に行ったような気がするけれども、全く聞いていなかった。肝心なところで私はモノローグに浸ってしまったらしい。


「別に呼んでないよー」

「そっかぁー」


川西くんはいつも通り、あまり覇気の無い声で気だるげに返事をしてきたのだった。
それはそうと、瀬見さんが口を開いたまま固まっているのが物凄く気になる。どういうわけか視線は川西くんにではなく私のほうに向いている。
なんというか、瀬見さんって本当に面白い先輩だと思った。


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