審神者さんは 山姥切国広 とお姫様抱っこしないと出られない部屋に閉じ込められました。山姥切国広 は頬を掻きながら、上をみあげています。



時空の歪みか神域の類いか。最近刀剣男士と審神者が突発的に閉鎖的空間に閉じ込められることが多発しているという。
そして、その空間からの脱出方法としては1つの司令を実行すること。この奇怪な現象について政府は現在調査中らしく、充分に注意せよ。そんな内容の文を読んだのはつい数刻前だったか、と審神者はどこか遠くで思った。

何の変哲もないある日、審神者は庭先を歩いていた近侍に駆け寄り、声を掛けようとした。その際に石に躓き、助けようと手を伸ばした近侍と共に池に落ちた。その時はそのまま意識が薄れたのだが。

真っ白な部屋に二人。正確には一人と一振りだろう。
こんな状況、本丸で流行っている賽を使う遊びに似ているな、と審神者はぼんやり考える。それはいいとして。

「まさか自分達がこんな目に合うなんてねえ……」

ため息混じりに呟くと隣に居た近侍−山姥切国広は柳眉を歪ませた。

「国広も巻き込んじゃってごめんね。身体は大丈夫かな?」

「問題ない…俺がちゃんと手を引いていたらこんな事にはならなかった…俺が写しだから、」

「巻き込んだのは私の責任だし、国広のせいじゃないよ。助けようとしてくれて有難う」

遮るように言葉を紡ぐとぎゅ、と布を握って「あんたの護衛も近侍の仕事だからな」と言ってそっぽをむいてしまった。

「とりあえず何か脱出する手がかりでも探そうか」

そう言って腰を上げると微かに足に痛みが走る。どうやら池に落ちるときに足をひねったようだ。参ったな、と審神者は思う。
流石にこれ以上迷惑はかけられない為、審神者は痛みで声が出そうになるのをぐっと堪えた。
幸いにもそっぽをむいていた山姥切は気づかなかったようだ。「分かった」と返事をすると部屋を探索し始めた。

部屋には簡易ベッドに照明、勉強机と椅子、そして取り付けられたような扉があった。手分けして探すと扉は鍵がかかっていて開く様子は無い。どうしたものかな、と思っていると勉強机を調べていた山姥切がおい、と呼ぶ。その顔は苦虫を噛み潰した様な顔で。

「どうしたの、国広?」

「……こんな紙があった」

それを覗き見るようにして身を乗り出すと、そこには『お姫様だっこをしないと出られない』と書いてあった。
「お姫様だっこねえ……」
これはどうするべきか。山姥切の方を見ると頬を人差し指で掻きながら、天井を見上げていた。
妙な空気が流れる。
姫抱きするには山姥切が全力で拒否してくるだろう。なるべく穏便に済ませたい。刀に戻って貰えば……と悶々考えていると山姥切が此方を見ていることに気がついた。透き通った瞳と視線がぶつかる。

「ど、どうしたの?なにか思いついたとか?」

「あんた、池に落ちるときに足をひねっただろう」

「!なんで分かっ、」

「さっき左足を引きずっていたからな。」

そう言うと一息吐いてから目を伏せて続ける。

「…俺が写しだからか」

「は?」

「俺が写しだから、あんたは俺を頼らないのか」

「ち、違う!!」

反動的に叫んだ。山姥切は声に驚いたのかびくりと肩を震わせる。審神者は切羽詰まったように続けた。

「こんな状況で足を捻りましたーなんて言ったら国広に迷惑かかると思って、それで」

「迷惑じゃない」

「へ」

「何のための近侍だと思っているんだ、あんたは」

「いや、でも、」

「…少し目を瞑っていてくれ」

「?うん」

素直に目を閉じると肩と膝裏に温かい感触。それから耳元で、悪い、という囁きが聴こえたと思うとふわりと地面から浮く感覚が襲う。驚いて目を開くと山姥切の顔がドアップで見えた。
「〜〜?、!?!?」
心臓が煩いくらいに鳴る。


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