うるおい馴染む

 机を拭いた布巾を洗っているとき、硬くなった指の関節がぱっくりと割れて水が染みる。
 痛みをそのままに布巾を絞ろうとすると、隣で作業をしていたサンジくんに呼ばれて。

 白くて長い指が濡れたままのわたしの手から布巾を抜き取り、代わりに被せられた乾いたタオルがわたしの手の水分をふきとってくれた。

 わたしの指先を優しく捕らえた彼の視線は、痛みを感じる箇所に向いていて小さな傷に気づかれたことを知る。

「どうしてわかったの?」
「んー?大好きだから、かな?」

 手を引かれて近くのイスに座らされて、
エプロンのポケットから何やらチューブのようなもの取り出したサンジくん。
 所々かさついたり切れたりしているわたしの手にその中身をのせる。

 丁寧に指の先まで優しくマッサージしてくれる骨張った、だけど綺麗な手。

 自分の手との明らかな差に、「サンジくんの手はどうしてそんなに綺麗なの」と羨む声をかけた。

「手に怪我してらんねぇからな、職業柄」

 マッサージしながら伏し目がちに答えた彼の顔もまた絵になる。

 世の中は不公平だと思いながら、すっかりしっとりと潤った手を見て、まぁいっかと一人納得をした。

「また塗ってもらってもいい?」
「よろこんで〜♡」

 

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