そろっと開けたドアの先には、今日の宴の準備に忙しそうなサンジの姿。
ダイニングテーブルで作業をしていたサンジは、わたしに気がつくと動かしていた手を止めて優しい笑顔を向けた。
「なまえちゃん、いらっしゃい。何か飲み物でも入れようか?」
「大丈夫だよ。それより、何か手伝えることある?」
「優しいなぁなまえちゃんは…でも、主役に手伝わせるわけにはいかないよ」
眉を下げて笑うサンジに、わたしは「それはそうかもしれないけど…」と歯切れ悪く呟いて、その場に留まった。
今日はわたしの誕生日を祝う宴だ。
「何か食べたいものはある?」
一週間ほど前、サンジからそう聞かれたわたしは、「大きくてかわいいケーキが食べたい」という、なんとも抽象的なリクエストをしていた。
「任せて!なまえちゃんのために、とびきりうまくて、でかくて、かわいいケーキを作るからね!」
とっても楽しげに答えたサンジは、その日から夜遅くまでレシピを考えていたり、空いた時間があればキッチンで何かを作っていたり…
割と普段からそんな感じなのだけれど、その真剣な様子と自分でリクエストした手前、なんだか邪魔してはいけないような気がして、この一週間サンジと過ごす時間を遠慮していた訳である。
…でも、今日はわたしの誕生日だし、ケーキも気になるし、ここに居てもいいよね…?
もじもじと言い淀んでいるわたしに、あ!と声を出したサンジ。
「そういえば、ちょうどなまえちゃんに手伝って欲しいことがあったんだった。」
その言葉に自分の手元から顔をあげると、おいでおいで、と手招きをされて、それに吸い寄せられるようにサンジの側に立つ。
「はい、あーん♡」
目の前に差し出されたのは、ほんのりピンク色をしたクリームがたっぷり乗ったスプーン。
「手伝いってこれ?」
「そう。味見してみて♡」
にこにこしながらわたしの動きを待つサンジに、これって手伝いになるのかな…?と疑問ではあるけれど。
底なしの優しさを、目の前のクリームと一緒にありがたくいただいた。
口元に運んでくれたクリームを、溢しそうになりながら口に含むと、ふわふわで、ほんのり甘酸っぱい。あっという間に口内から消えた、まさに魔法のような美味しさに、私は思わず「ん〜〜〜〜」と声を上げた。
「おいしい…!!!」
「気に入った?」
うんうん!と首を縦に振れば、サンジはくすっと笑ってわたしの口の端に指を伸ばす。
「ついてたよ」
そのままぺろ、っと指を舐めたサンジの姿に、自分の顔が赤くなったのが、鏡を見なくともよくわかる。
「…ありがとう、」
わたしの小さなお礼の言葉を拾ったサンジは、長い腕を広げた後、わたしをその中に閉じ込めた。
「あー、もう!かわいいなぁぁぁ…」
かわいい、かわいい、と頭を愛でる様は恋人というよりは母親のようで。
「また、そうやって揶揄う…」
「揶揄ってなんかいねぇよ?」
そうしていたかと思えば、頬を包む大きな手と低く甘く響く声。
サンジの手の動きに自然と従うように顔を上げれば、
「かわいいなぁ、なまえちゃん」
満足そうに笑って、ゆっくりと近づいてくる薄い唇。
唇を軽く合わせた程度のキスでも耳の先まで真っ赤になる自分。
それに対してサンジは少しも顔色が変わっていないから、ちょっと悔しい。
「サンジも付いてるよ、クリーム」
爪先立ちをしてサンジの頬に首を伸ばす。
それでも届かなくて、サンジの肩に手を添えて更に距離を詰めた。
ちゅ、と音を立てて唇を落とした場所には、もちろんクリームなんてついていなかったけれど。
それはいつも受け取りっぱなしの愛情をお返しする、ちょっとしたいたずらのつもりだった。
ぽかん、と口を開けて何も発しないサンジに、沈黙が自分で仕掛けた行為を更に恥ずかしくさせる。
「あの…サンジ…?」
「あ、あぁ…、ありがとう…」
声をかけると、ハッとしたように、手で口元を隠して顔を逸らしたサンジ。
もしかして嫌だっただろうか…
ネガティブな感情に傾こうとしていた時、手で隠れていない部分がすごく赤いことに気がついた。
「サンジ…もしかして、照れてる…?」
「……」
わたしの言葉に罰が悪そうにこちらに視線を向けたサンジが、今度はその目を隠すようにして額に手をあてて「あー…クソかっこわりぃな、おれ…」と呟く。
…照れている。
いつも余裕の様子で、キスしたり抱きしめてきたり、それ以上のことをしてくるあのサンジが、ほっぺにキスで照れている…。
驚きと可愛らしさで、思わずジィっと見つめてしまう。
それに気づいたサンジの顔がさらに赤くなって面白い。
「…なんだか楽しそうだね」
「だって、珍しくて…」
「…不意打ちは卑怯だよ、なまえちゃん…」
サンジは少し恨めしそうな目を向けた後、胸ポケットに忍ばせているタバコの箱に手を伸ばした。
「これでも、いつも抑えるのに必死なんだぜ?」
咥えたタバコに火をつけずに、ため息混じりにそう吐き出したサンジ。
いつもと逆転した立場がおかしくて、思わずふふ、と溢れた笑い声。
「やっぱり、ただでは受け取ってもらえないね」
「ん?」
お返しのつもりだったのに、反対に貰ってしまった貴重なプレゼントはしっかりと胸の中にしまっておくことにしよう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リクエスト『サンジくんにいつも〇〇してもらってるヒロインから何かしてあげようとして、される事に慣れてないサンジが照れちゃうお話』
LER:S様との相互記念に、幸村様に捧げます。
全く自信ないですがこんな感じで大丈夫でしょうか…?
よければお持ち帰りください…!!!
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ダイニングテーブルで作業をしていたサンジは、わたしに気がつくと動かしていた手を止めて優しい笑顔を向けた。
「なまえちゃん、いらっしゃい。何か飲み物でも入れようか?」
「大丈夫だよ。それより、何か手伝えることある?」
「優しいなぁなまえちゃんは…でも、主役に手伝わせるわけにはいかないよ」
眉を下げて笑うサンジに、わたしは「それはそうかもしれないけど…」と歯切れ悪く呟いて、その場に留まった。
今日はわたしの誕生日を祝う宴だ。
「何か食べたいものはある?」
一週間ほど前、サンジからそう聞かれたわたしは、「大きくてかわいいケーキが食べたい」という、なんとも抽象的なリクエストをしていた。
「任せて!なまえちゃんのために、とびきりうまくて、でかくて、かわいいケーキを作るからね!」
とっても楽しげに答えたサンジは、その日から夜遅くまでレシピを考えていたり、空いた時間があればキッチンで何かを作っていたり…
割と普段からそんな感じなのだけれど、その真剣な様子と自分でリクエストした手前、なんだか邪魔してはいけないような気がして、この一週間サンジと過ごす時間を遠慮していた訳である。
…でも、今日はわたしの誕生日だし、ケーキも気になるし、ここに居てもいいよね…?
もじもじと言い淀んでいるわたしに、あ!と声を出したサンジ。
「そういえば、ちょうどなまえちゃんに手伝って欲しいことがあったんだった。」
その言葉に自分の手元から顔をあげると、おいでおいで、と手招きをされて、それに吸い寄せられるようにサンジの側に立つ。
「はい、あーん♡」
目の前に差し出されたのは、ほんのりピンク色をしたクリームがたっぷり乗ったスプーン。
「手伝いってこれ?」
「そう。味見してみて♡」
にこにこしながらわたしの動きを待つサンジに、これって手伝いになるのかな…?と疑問ではあるけれど。
底なしの優しさを、目の前のクリームと一緒にありがたくいただいた。
口元に運んでくれたクリームを、溢しそうになりながら口に含むと、ふわふわで、ほんのり甘酸っぱい。あっという間に口内から消えた、まさに魔法のような美味しさに、私は思わず「ん〜〜〜〜」と声を上げた。
「おいしい…!!!」
「気に入った?」
うんうん!と首を縦に振れば、サンジはくすっと笑ってわたしの口の端に指を伸ばす。
「ついてたよ」
そのままぺろ、っと指を舐めたサンジの姿に、自分の顔が赤くなったのが、鏡を見なくともよくわかる。
「…ありがとう、」
わたしの小さなお礼の言葉を拾ったサンジは、長い腕を広げた後、わたしをその中に閉じ込めた。
「あー、もう!かわいいなぁぁぁ…」
かわいい、かわいい、と頭を愛でる様は恋人というよりは母親のようで。
「また、そうやって揶揄う…」
「揶揄ってなんかいねぇよ?」
そうしていたかと思えば、頬を包む大きな手と低く甘く響く声。
サンジの手の動きに自然と従うように顔を上げれば、
「かわいいなぁ、なまえちゃん」
満足そうに笑って、ゆっくりと近づいてくる薄い唇。
唇を軽く合わせた程度のキスでも耳の先まで真っ赤になる自分。
それに対してサンジは少しも顔色が変わっていないから、ちょっと悔しい。
「サンジも付いてるよ、クリーム」
爪先立ちをしてサンジの頬に首を伸ばす。
それでも届かなくて、サンジの肩に手を添えて更に距離を詰めた。
ちゅ、と音を立てて唇を落とした場所には、もちろんクリームなんてついていなかったけれど。
それはいつも受け取りっぱなしの愛情をお返しする、ちょっとしたいたずらのつもりだった。
ぽかん、と口を開けて何も発しないサンジに、沈黙が自分で仕掛けた行為を更に恥ずかしくさせる。
「あの…サンジ…?」
「あ、あぁ…、ありがとう…」
声をかけると、ハッとしたように、手で口元を隠して顔を逸らしたサンジ。
もしかして嫌だっただろうか…
ネガティブな感情に傾こうとしていた時、手で隠れていない部分がすごく赤いことに気がついた。
「サンジ…もしかして、照れてる…?」
「……」
わたしの言葉に罰が悪そうにこちらに視線を向けたサンジが、今度はその目を隠すようにして額に手をあてて「あー…クソかっこわりぃな、おれ…」と呟く。
…照れている。
いつも余裕の様子で、キスしたり抱きしめてきたり、それ以上のことをしてくるあのサンジが、ほっぺにキスで照れている…。
驚きと可愛らしさで、思わずジィっと見つめてしまう。
それに気づいたサンジの顔がさらに赤くなって面白い。
「…なんだか楽しそうだね」
「だって、珍しくて…」
「…不意打ちは卑怯だよ、なまえちゃん…」
サンジは少し恨めしそうな目を向けた後、胸ポケットに忍ばせているタバコの箱に手を伸ばした。
「これでも、いつも抑えるのに必死なんだぜ?」
咥えたタバコに火をつけずに、ため息混じりにそう吐き出したサンジ。
いつもと逆転した立場がおかしくて、思わずふふ、と溢れた笑い声。
「やっぱり、ただでは受け取ってもらえないね」
「ん?」
お返しのつもりだったのに、反対に貰ってしまった貴重なプレゼントはしっかりと胸の中にしまっておくことにしよう
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リクエスト『サンジくんにいつも〇〇してもらってるヒロインから何かしてあげようとして、される事に慣れてないサンジが照れちゃうお話』
LER:S様との相互記念に、幸村様に捧げます。
全く自信ないですがこんな感じで大丈夫でしょうか…?
よければお持ち帰りください…!!!