もうずっと

いつからだろう。彼とのスキマを感じたのは。
元々私達は同期で、いつも行動を共にしていた。

食事も、訓練も、休日だって。
2人でペアを組む時だって、リヴァイの方からさっさとやるぞ、だなんて声をかけて来て。 それが嬉しくもあり自慢だった。

普段人と関わろうとしないリヴァイが、私とだけ行動を共にしている。

そんな優越感みたいなもの。

けれどいつの間にやら気が付けばリヴァイは兵長という、それは偉い立場になって、私はというと一介の兵士。


遠い遠い存在となってしまったのだ。


それに気が付くと、あの時の様に“リヴァイ”だなんて名前で呼ぶのが恥ずかしくなって……

彼の顔を見かければ、私は逃げる様にその場を去った。


「オイ、名前」
「っ、」

突如肩を掴まれて、私は大袈裟に反応してしまった。

突然のことで驚いた為か、
はたまたその声の主の所為か。


「………オイ、返事くらいしたらどうだ」

穏やかな声だが、顔は決して機嫌がいいモノでは無かった。

私は無理やり声を絞り出す。


「何でしょう、へいちょう」


喉があつい。
なにかがつかかっている様で、呼吸が上手くできない。

息苦しい。

「……気に入らねぇ。何故手前ぇは俺と敬語で話す。

何故俺を階級で呼ぶ」

「……それは、」


彼の眉間の皺はより一層深く刻まれた。
掴まれてる肩が痛い。


もう訓練兵の時の私達では無いのだと自分に言い聞かせる為、私は彼をどうしても呼ぶ事がある時は“兵長”と呼んだ。


だけど呼べば呼吸は苦しくて、呼吸の仕方なんて忘れてしまって。


胸の痛みは日々増していた。



…あ、だめ。泣いちゃう。


そう思った時にはもう遅かった。

一粒落ちて行けばそれは止まる術を無くしてただただ下へと落ちてゆく。


「……何故泣く」
「もう、構わないで下さい。
兵長と話すと痛いんです」

ここが。

そう言って私は力無くトントンと己の心臓を叩く。



「それは名前、お前が勝手に線を引くからだろう。
俺はお前に敬語で来られると息が詰まる」

「だって痛いんです。痛いんです。もう構わないで下さい。兵長とは違うんです。私は貴方の傍に居てはいけないんです。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……」



私はその場にへたり込むと子供の様に泣きじゃくりながら、ただ“痛い”を繰り返す。





「…………なぁ、名前よ」


そう言って私の高さにまで腰を下ろすと、優しい声で兵長は言った。



「俺にはお前の“痛い”が、“居たい”にしか聞こえねぇ」





もうずっといたいのです

(貴方とのスキマを感じた時から)

(貴方の傍に、

リヴァイの傍に。

ずっと、ずっと…)


END

愛してなじって罵って