毎日キスしていい?
ふらっとどこかへ行きふらりと帰ってくる彼は、私にとってはそこらの野良猫と同じだ。
と、
彼は思っているのだろう。
そんな筈は無いのである。
こんな人間の、ましてや成人を過ぎた男を猫と同等とされてたまるか。食費だって猫と比べると馬鹿にならないし、男を囲ってるだなんてそんな事が社内で広まればたちまち私は奇異の目で見られ、結婚なんていう人生のイベントは益々遠のくばかりだ。
そう、ビヨンドを囲っているのは100%私の下心なのである。
それを彼は知らない。
「キスしていい?」
お風呂から上がり、冷蔵庫から飲み物を取ると帰ってきたビヨンドがリビングで寛いでいたので声を掛けた。すると彼はぎょろりとした目を更に見開かせた。
「おかえりの言葉がそれですか。」
「おかえりの言葉は別よ。お帰りなさい。それで?貴方にキスしていいかしら?」
今度は目を細めると何かを考える様に爪をかじり私を見た。私はグラスをテーブルに置くとじりじりと詰め寄る。
彼に跨がり、背もたれに左手を置いてもう片方はビヨンドの髪を撫で、そこから頬へと滑らせる。
するりとした音が私の背中を刺激させた。
「良いですよ。」
もっと渋るかと思っていたので、私はその返答に内心で驚いた。
確認するのもおかしな話だと思い、今度は両手で頬に触れると少し上を向かせ唇を重ねるだけの稚拙なキスをした。
柔らかくてもどかしい感覚すら気持ち良くて私は目をそっと閉じた。
最後に見たビヨンドの目線を感じる。きっと彼は目を閉じないタイプなんだろうと思うと同時に、なんだか彼らしいとも思った。
唇を離すとまたもどかしさが奥からやってきて顔を近づけるが、唇が触れそうな所で思い直して代替えに質問を投げつけた。
「明日もキスしていい?」
「いいですよ。」
二度目の返事は早くてどこか優しいものだった。
少しだけ引き寄せられた感覚で、さっきの背中の感覚はビヨンドが回してきた腕だったのだとようやく気付く。
もしかしたら……彼の知らない私の心情の様に、私が知らない、彼の私への心情もあるのかもしれない。
END
20190120
愛してなじって罵って