好きじゃなくて、狂気。
露伴


 カレーが好きだ。
 牛肉がゴロッと切られていて、野菜も食感がやや残されている程度の大きさのジャガイモが入ってないカレー。これが僕の口にした中で最も旨くて高かった所のカレーライスだ。
 それに比べると名前のカレーは真反対と言っても良い。
 野菜はどれも小さく切られ二日目となるともう形も殆ど残っちゃあいない。肉は豚肉で、ルーは緩くて安い、特別旨くもないカレー。
 けれど時々無性に食べたくなるのは何時も名前のカレーなのだ。

 母のカレーなんて昔のことで忘れたが、これからはこのカレーが、僕にとっての家庭のカレーになるんだろうな。




セッコ


 女はチョコラータの電話一本で全ての用事を蹴って此処へ来る。
 蔑まれ、詰られ、痛めつけられ、犯されて、
 そんな事をされても毎度女は電話があればチョコラータのもとへ訪れ、泣きながら帰って行く。
 チョコラータが出て行き俺と二人になったアイツは何時ものようにめそめそと泣いていた。俺は女の腕を掴むと折れるんじゃないか、ってくらい握っている手に力を込める。
「被害者ぶって泣くのはやめろよな。アイツに傷付けられたくて、何度も会いに行ってるクセに」
「そんなこと……」
 俯いた女の口許は笑っていて、俺はそいつの耳に思いっきり噛みついてやった。




定助


 僕にはたぶん、失ったり奪う事しか出来ないのだろう。

 僕を見つけてくれる目線が好きだ。
 僕の名を呼んでくれる声が好きだ。
 僕の声を一生懸命拾ってくれる耳が好きだ。

 だけど他の男にもそれをするのなら嫌いだ。

 視力も聴力も奪われた君は不安なのか必死に口を開けて何かを言っている。だけど僕はそれを許さない。スタンド能力でシャボン玉に変わった沢山の言葉が、僕達の周りを浮遊して上へ昇っていく。




吉影


「───っ、」
 放課後の屋上。
 受験勉強の息抜きにと、僕と名前は時折此処で落ち合ってはちょっとした悪戯をしている。

「いっぱい出ちゃったね。」
 収まりきらずに口の端から垂れる精子を彼女は細くしなやかな指で掬うと赤い舌先で舐めとった。
 穢れなんて似合わない綺麗な彼女の手で行われるこの行為が僕には堪らなく落ち着いて、けれど心がどう仕様もなくざわめく。




テレンス


「あなたとダニエルって似てないわよね。」
「兄の話は止めなさい。」
 この女は何時も私を見て此処にはいない兄を想っている。
 女は気にせず続けた。
「お兄さんはギャンブルに勝ちたい、スリルを味わうのが好きって、それって負けもあり得る勝負を好んでるって事じゃあない?だけど貴方は絶対に勝てる勝負しかしない。」
「それが格好悪い事だと。貴方はそう言いたいのですか?」
「じゃなくてただ単に反対だなって思っただけよ。」
 兄の性格を、まるで宝物でも見つけたかの様に語り名前は微笑む。その表情を見た瞬間、私は沸騰するほどの嫉妬心に駆られた。
「みくびるなよ、このアマが。」

 不毛な勝負なら、とっくの前からしているさ。


END


20180825
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愛してなじって罵って