神にさえ教えたくない
 ────体が次第に蝕まれていく様は美しい。

 女の心臓が弱まるのを確認するとおれの胸は反対に高まるのを感じる。

 医者の立場を利用し懐に入り込んで信用させる。医学の知識がない女に毒薬を盛らせるのは簡単だった。

 顔色を窺い愛想を振る舞うだけの犬に懐かれるのはまア悪くない。お前の信頼していた者に殺されるのだと知った時の顔は、それは愉快なものになるだろうから。



「ほ〜ら、よく見てみろ!先週より脳が萎縮している!母親の名前は思い出せるか?腸なんてもう4分の1程度だ!!」

 ベッドに数ヶ月寝たきりの女はレントゲンを前に表情を硬くし、目に涙を浮かべてわなわなと震えだした。

「私の体を使って遊ぶのは楽しい?ねえ……返してよ、わたしのカラダ、返してよ、ねぇ……」

 縋り、依存し、体が衰弱するのと比例して私に怒りと恨みを抱くようになった女の顔に、絶望の色が染まりきるのはいつだろう。

 この至福の瞬間は、神にさえ教えたくない。

END

20190622
top
愛してなじって罵って