今日のゲームを終えて賭博場を後にする。夜もだいぶ更けているが、まだまだ賭博場の中は賑やかで熱気に溢れていた。すっかり静まった街を眺めながら、さて帰路につこうと足を踏み出した時。あ……と控えめな声がした。
「あの……あ……何か……お金でお困り、なんですか……?」
その人はだいぶ大きな体をしながら、声は小さく、ちぐはぐだった。うろうろと彷徨う目線に私が映るのはほんの少しだけ。
「あら! ええ、ええ、お金はあるだけ困りませんわね。教会の寄付は常に受け付けておりますわ!」
「え、寄付……あ……えと……少ないですが、……どうぞ」
そういって菊の花札……つまりは百円を何枚か手渡してくれた。なんと優しいひとだろうか。初めて出会ったばかりの自分に寄付をしてくださるなんて。
「まぁ、まぁ! ありがとうございますわ。あなたさまの残りの今日が、明日が、いいものになりますように」
「あ……ありがとう、ございます……」
小さくお辞儀をして立ち去ろうとする彼の背中に、慌てて声をかけた。
「あなたさま、もしよければ今度は教会においでくださいませね!」
ビクッと体を震わせてこちらを振り向き、彼はもう一度お辞儀する。すぐにその姿は闇に溶けてしまった。
不器用な彼 / トロフィム
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