「円」
けたたましいクラッカーの音。おめでとう、の声が自分とニスケの二人分重なって、これ以上にないほどの笑顔を見せた。机の上にはケーキ、いつもの部屋は華やかに飾り付けを。ニスケが彼女に誕生日プレゼントを渡して。
「なに? イヴ姉」
いつも以上に笑顔が似合う彼女の黒髪に、赤い紙吹雪がふりかかっている。可愛らしいあなた。わたくしのたからもの。
「こちらはわたくしからのプレゼントですわ」
渡したのは小さな小包。口元をキュッと引き締めた彼女が、恐る恐るといったようにその包みを受け取る。
「開けていい?」
「ええもちろんですわ」
包んでいた紙が円の指先で一つずつ開かれていく。中に現れたのはやはり、そのものを隠すはこで、彼女はゆっくりと開いた。
「わ……砂時計?」
「ええ」
それはまるで星のかけらを、砂浜の砂を、混ぜ合わせたような真っ白の砂が流れる3分ほど測れる砂時計だった。星空をかたどった深い青と金色の装飾が散りばめられ、ガラス越しに円の瞳を写す。
「ふふ、円は朝の準備が少し、遅いですから。その砂時計の砂が落ちるまでに準備ができれば遅刻もしませんわ」
「そういうこと!?」
目を丸くする円は、それでもその砂時計を高く掲げ、キラキラと瞳を輝かせる。嬉しそうな彼女の顔を見て、ああよかった、と少し、安堵した。これからはなんでもない日常に、あの砂時計が少しだけ彩ってくれたら、と思うのだった。
「円、誕生日おめでとうございますわ」