「ごめんくださいませ」
店の門扉をくぐり、店を覗くと、そこにいたのはその店で働く少女だった。こちらを一瞥して軽くお辞儀をすると店内の商品の整理に戻った。美しい花々とかわいらしい小物が所せましと並ぶ店内に、彼女の姿すらもかわいらしい展示品のように見えた。まるで物に神様が宿っているとでもいうかのように、彼女の手つきは丁寧で優しかった。
「実は、先日こちらで購入したお菓子が大変美味しかったのですわ。もしよければまた売ってくださらないかしら?」
「………………少々、お待ちください」
たっぷりと間をあけて絞りだされた言葉を置いて、彼女は店の奥に入っていった。周りのものを静かに物色しながら彼女を待つ。ひときわ目を引く赤い花。町中にもあることが多いその花は、柔らかな店内では明け方の太陽みたいな存在感を醸し出していた。かわいらしい文房具や髪飾りなどが並ぶ雑貨コーナーと、美味しそうなお菓子が並ぶ棚を見ていると、バトラが店の奥から戻ってきていた。
「………………あの、……こちら、ですか」
「ええ、そうですわ! ふふ、覚えてて下さったのですね」
差し出された商品の代金を、シスター服のポケットから取り出して彼女に手渡した。彼女はレジから袋をとると、その中に商品を入れる。袋を差し出す彼女の手に、もう一つ何か別のものがあるのが見えた。
「ありがとうございますわ。……こちらは?」
「いつも、来てくださるので……私が、作りました」
「まぁ! 以前お願いしたのを、覚えてくださっていたのですか? 嬉しいですわ! ええ、ええ、たくさん味わって食べさせていただきます!」
以前にもこの店に訪れた際、バトラがお菓子作りにはまっていることは聞いていた。何の気なしに、食べてみたいと言ったのを彼女は覚えていてくれたのだろう。
「……その、あまり、得意では、ないので……」
「ふふ、構いませんわ! わたくしにくださった、その事実だけでこのお菓子は大変美味しくなりますもの」
「……はい」
心なしか少し嬉しそうな表情をした彼女から、袋とお菓子を受け取った。店の先まで見送りに出てくれた彼女に向き直る。
「走れば躓きますわ、バトラさま。ごゆっくり、あなたさまのペースで。今度は教会にいらしてくださいますか? ふふ、お待ちしておりますわ」
鼻からバトラの返事など、待っていないかのようにその場を去った。