鼻歌混じりに道を駆ける少女の背中で、熊のぬいぐるみが揺れている。太陽が燦々と輝いている、すこし暑い日だった。
「ベアさま」
通りがかりの彼女の名を呼ぶと、パッと嬉しそうにこちらを見る。たったった、と軽快にこちらへ寄ってきた彼女ははるかに自分より小さく、こちらを見上げている。
「ふふ、よければ氷菓子はいかがですか? 先ほど、寄付でいただいたのですわ」
「わ! ほんと? 食べる食べるー!」
ぴょんぴょん飛び回る彼女が可愛らしく、つい頬が緩むのを感じた。教会の中に誘い、奥の冷蔵庫から二人分のアイスバーを取り出して彼女に渡す。暑かったのか、彼女は手でパタパタと扇ぎながらフゥ、と一息ついていた。自分が差し出したアイスバーを受け取ると、彼女は嬉しそうにビニールを破いた。
「美味しいでしょうか?」
「うん! 冷たくて美味しい、ありがとう!」
「ふふ、喜んでいただけたなら嬉しいですわ」
横に並び、軒先の影の中で教会の庭を眺めながら二人してアイスバーを頬張る。ほんの少しキーンとしたのか、ベアは瞳をぎゅっと瞑り、小さく呻いていたが、変わらず美味しく味わっているようだ。舌には冷たい感触が当たって、喉を通れば体が中から涼んでいくかのような感覚に陥る。
揺れる向日葵が、その空間の穏やかさを演出していた。