友達


ヴィランが侵入してから最初のヒーロー基礎学では、レスキュー訓練をするとなって戦闘訓練とはまた違った興奮が生徒に生まれた。
けれど騒ぎ出した生徒を一睨みで黙らせたのはさすが相澤先生。入学間もないのによく躾られてる。

ほとんどの人がコスチュームを着ていき、例に漏れず私も着るためにコスチュームを持って更衣室に向かう。

「すぐに乗れるように出席番号順に並んでおこう!」

飯田君がホイッスルを持ってキビキビと列を作っていくが、いざ中にはいると予想していたものとは違ってショックを受けていた。

私はというと、ほとんどの人が座ったで席が空いておらず、仕方なく唯一空いていた轟の隣に腰を下ろす。

「…………」
「………………」
「…………」
「………………」
「……視線がうっとうしいからやめてくれる?」

横から無言の視線が鬱陶しくなり、声をかけそちらを向くと奴はこちらをじっと見ていた。

「…悪い、」
「………この前からなにか言いたげだけど、なに?」
「いや、」

轟は視線をうろうろさせ、最後に意を決したように私に固定される。

「この前は、悪かった。」
「いや別に気にしてない」
「………だけど、あれからお前のことが気になって見てた。それで思った。
俺は、もっとお前のことが知りたい」
「…………………………は?」

なんだか話の雲行きがおかしな方向になってきた感じがし、顔がひきつる。
幸いなことにバス内はみんなが思い思いのことを話して賑わっているのでこちらを気にしている人も会話を聞いている人もいない。

「よければ友達から始めてくれないか?」
「いやいやいや、ちょっと落ち着こう」
「俺は落ち着いてる」
「いや友達になるのは構わないけど、なんか言い方が……」
「普通に言ってもお前は拒絶するだろ。大体こんなところで言いたくない。なら、友達から始めて振り向かせればいい」
「………うん。もう突っ込まない」

なんだかもういろいろ疲れて、椅子に脱力するように寄っ掛かる。

これから訓練なのに今からこんな疲れてどうするんだ。

「うん。じゃあよろしくね」
「ああよろしく頼む」

そういえば友達というものは始めてだ。
それに気がつくと少しこっぱずかしくなった。


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