初日
教室につくと既に何人か来ていた。
「おはよう!初めまして!ぼ、俺は私立聡明中学出身飯田天哉だ!よろしく!」
「(何こいつ)狭間月華」
「狭間君か!座席は前に貼ってあるぞ!」
そういうとまた次の人がきたのか、そちらの方に行く飯田。
(一人ずつにやってんのか……?)
何はともあれ、飯田が言うように黒板に貼ってある座席表を見て席につく。
「よう!俺は切島鋭児郎!よろしくな!」
「ん。」
「いやいやいや!もっとなんかあんだろ!?名前とか!」
「狭間月華」
「いや、まあ、うん!とにかくよろしくな!」
前の席の赤い髪。切島に話しかけられたが、面倒になった月華は返事だけ返した。けれどそれが引っ掛かったのか、グイグイくる切島に名前だけ言うと、微妙な顔をしたが最後には爽やかな笑顔になる。
「お友だちごっこしたいんなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
するとドアの方から声が聞こえ、そちらに顔を向けると妙なものがいた。
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」
(あれって、イレイザーヘッド?)
パッと身は不審者のようだが、母親から徹底的にヒーローについて仕込まれていた月華はその風貌からアングラ系ヒーロー。イレイザーヘッドだと判断した。
けれどいかんせん見た目が悪すぎる。自分の判断を疑いそうだ。
「担任の相澤消太だ。よろしくね」
(そしてまさかの担任)
なんだか最初の顔合わせから嫌な予感しかせず、微かに眉を潜める月華。
着替えてグラウンドに出るようで渡された体育着は生暖かかった。
(てかどうやって入ってたんだ?)
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「「「個性把握……テストォ!?」」」
入学式もガイダンスもせずにいきなりテスト。自由な校風っていっても、自由すぎないか?
困惑ぎみだった生徒は、しかし最初に見本として見せた爆豪のソフトボール投げを見るや否や。思いっきり個性が使えるのだと沸き立った。
「面白そう!」
けれど、その一言で先生の雰囲気が変わった。
「面白そう……か。ヒーローになる為の三年間。そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?
よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
相澤の言葉に、月華は静かに目を見開いた。
除籍処分。
つまりここから立ち去るということ。
ヒーローとしての道が断ち切られるということ。
気がつけば音がなっているのではないかと思うぐらい手を握りしめていた。拳は白くなっている。
それでも、周りのように不平不満を言わず。
ただ静かに、けれど隠しきれなかった殺気を伴って。相澤をまっすぐに見据えた。
(こんな程度、振り落とされてたまるか)
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