個性把握テスト



正直いってこのテストは月華の個性ではまともに使っていてはほとんど役になど立たないだろう。

けれど個性とは創意工夫だ。
元がどんなものであれ、使い方次第でどうにでもなる。


最初の50m走で後ろに壁のような結界を作る。合図と共に側面に足をつけ、その箇所に横から新たにゴール場所まで結界を作る。するとそのまま押し出され、一気にゴール。
記録は2秒15。


「すっげーな!お前の個性!」

すると切島や他のやつらが話しかけてきた。

「どんな個性なんだ?」
「結界。形も場所も自由自在なんだ。ところで君は誰?私は狭間月華。」
「お!悪いな!俺は瀬呂範太!個性はテープだ!」
「おい!?なんか俺のときと反応がちがくねぇか!?」
「いや、朝は面倒だったし」


二人とも親しみやすく、そのまま次の競技まで話していた。


次は上体起こし。これはどうにもならないから普通にやる。
結果は85回。

「うわ〜。凄いね!」
「誰?」
「麗日お茶子!よろしくね!」
「狭間月華。よろしく」
「ね!ね!ふっきん見せて!」
「え……いいけど」
「うわぁ!凄い!」


握力。これも普通に。
結果は右65kg 左60kg。

「お前、素でそれかよ………」
「女じゃねぇな」
「黙れ」


立ち幅跳び。これには個性が使えるかもしれない。

「先生」
「なんだ」
「立ち幅跳びは、跳んでから地面に足がつかなければ何をしてもいいんですか?」
「ああ。それが個性を使ったもんならいい」
「分かりました」

よし。大丈夫だ。


位置について、ジャンプする。すぐに足元に横まっすぐに伸ばした結界を作って着地。そのまま結界の上を歩いていく。
計測器を通りすぎて端にあったはずの砂場から校庭の逆側までついて先生に止められた。

「待て、どこまで行くつもりだ」
「結界が作れなくなるまでですけど?」
「外にまでいなくなってどうする。終了だ」
「でもまだ出来ます。先生個性を使ったもので地面に足がつかなければいいって言ったじゃないですか。まだ出来るものを止めて結果が駄目になってもいいんですか?」
「………仕方ねぇ。お前以上のやつもいねぇし、無限にしといてやる」

渋々といったように記録表に書く先生に内心ガッツポーズをしといた。




ソフトボール投げ。


円の中に立ち、思いきりボールを投げる。
そこそこにまで飛んだあと、落下し始めるボールに丁度当たるように結界を作り出す。すると押し出されたことによってボールがさらに加速した。
結果は1085m。


中指と人差し指を合わせて向けていた腕を下ろし、ゆっくりと息をはく。

これ、なんとかできたけど集中力が半端ない。

もう一度やったが、うまく結界とボールが当たらずいまいち記録は伸びなかった。




緑色のモジャモジャ頭が先生に何かを言われていた。
よく聞こえなかったが、それよりも月華は自分の判断が合っていたことに少しだけ上機嫌になっていた。



残りは特に個性が使える競技ではないので、普通にやることにする。







結果としては21人中5位という好成績。
そのときに、先生が除籍は合理的虚偽だといい、月華はホッと一安心した。










「狭間!」

帰ろうと歩いていると、後ろから呼ばれ振り替えると瀬呂と切島がいた。

「駅か?途中まで一緒に帰ろうぜ!」
「いいよ」


話題は当然と言えば当然だが、さっきの個性把握テストと、ヒーローのことだった。

「だけど除籍が嘘でよかったなー」
「嘘でも本当でも、三人とも大丈夫だったじゃねぇか」
「うん。でも多分先生は本気だったよ」
「え、」
「んじゃあなんで合理的虚偽なんて言ったんだよ」
「知らない。気紛れじゃない?」
「気紛れって……」
「にしても狭間はすげーな!素の身体能力であんな記録なんだからよ!」
「鍛えてるからね」
「やっぱヒーローになるためには個性だけじゃなく基盤もしっかりしなけりゃ駄目ってことか?」
「あとは私の個性だとどうしても決定力にかけるし、私自身を狙われたり結界が壊されたゃどうしようもないからね」
「すげーなー……」
「もうそんなことまで考えてんのかよ」
「まあね。あ、ちょっと寄るところあるからここでいいや」
「そうか?じゃあな」
「また明日な!」
「じゃあね」



改札で二人と別れて逆方向に行く。









(一日目から濃かったなー)


さすが雄英といっておきましょうか。


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