轟焦凍という少年
授業が終わり、これで帰れると思ったらなぜか全員で反省会なるものをすることになっていた。
「…………」
「狭間!みんなで反省会やろうぜ!」
「やだ。第三者の目線で気がつくこともあるけど、自分で気がつくのが一番いいんじゃないの?やりたいんならやりたい人だけでやればいい。私は帰る」
私の言葉に納得したのか、微妙な表情だったが何もいってこないのでそのまま教室を出ることにする。
すると後ろから走ってくる音が聞こえ、足を止めて振り返るとそこには轟がいた。
「なに?」
「俺も帰る。」
「そっか」
歩き始めるが、そのまま轟は私のとなりを歩いていた。
「………なに」
「帰っている」
「そうじゃなくて、なんで一緒に歩いているのか聞いたんだけど」
「校門までは一緒だろう」
「先に行けばいいじゃん」
そこで轟は黙りこむが、歩く早さを遅くしても早くしても私のペースに合わせているので、もういっそのこと無視することにした。
校門に到着すると、やっと轟が口を開く。
「今日の戦闘訓練。お前の目を見て、思った。いや、さっきだけじゃない。初めて見たときからずっと思っていた。俺とお前は同じだと。
お前と、話がしたいとずっと思っていた」
なにやら真剣な表情だったので、近くの公園のベンチに座り話すことになった。
そこで轟はいろんなことを話してくれた。
父親のこと。個性婚のこと。自分のこと。
話終えると黙りこむが、私は小さくため息をはいた。
「君と私が同じ?少なくとも、私の両親は個性婚なんかじゃないけど」
「そうだとしても、同じだ。お前も、親に囚われているんだろ」
ゆっくりと轟の言葉を理解する。
「なら、君も父親に囚われているんだ」
「ああ。……認めたくないがな」
「だから"本来の力"を使わない」
「そうだ。使わずにヒーローになって、あいつのすべてを否定する」
彼のことを理解すると、地面を見ていた顔をあげて彼の左右違う目をまっすぐに見返した。
「正直に言って、なんで会って数日の赤の他人にこんな重い話をするのか理解できないけど、一つだけはっきりしている。
私と君は同じじゃないよ」
僅かに、轟の目が見開いた。
「だって、炎を使わないとしても、例え父親への憎悪からだとしても、それは君自身のためでしょう?」
「俺、自身のため……?」
「うん。君がヒーローを目指すのも。君が炎を使わないのも。君が決めた君自身のためのこと。
でも私は違う。私がヒーローを目指すのは母さんのため。私がヒーローでなければ、母さんはきっと壊れてしまう」
立ち上がると、それを追うように轟も顔を上げる。
「囚われている。というのならばきっとそうなんだろうね。その点でいえば確かに私と君は同じだよ。
でも、君は自分の意思でヒーローになりたいんでしょ?例えそこに父親への憎悪があっても、今君がそこにいるのは、君が望んだことなんでしょう?
私は、母さんが望んでいるからヒーローになる。それ以外に理由なんてない」
「君と私は同じじゃないよ」
歩き出すが、今度は轟は追ってこなかった。
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