
序章
足元を涼しい風が吹き抜けていく。
大量の荷物を持ちながら河川敷を歩く女、神田幸縁は、汗をかきながらその涼しさと赤々と横顔を照らす夕暮れに笑みを浮かべ帰路についていた。
「これくらい揃えればしばらくの間大丈夫かな?」
就職活動の準備のため久々に外出した彼女は余計な物まで買って予想外の出費をし、交通費を浮かすために今歩いている最中だ。
袋の紐が手に食い込んで痛い。
「こんなときに自分の車があればなぁ〜…。だめだ、車酔いするわきっと」
自分が運転する姿を想像し笑いながら独り言を呟くと同時。身体に衝撃が走り、幸縁は宙に舞っていた。
手から離れる荷物を見ながら自分にぶつかったものを探すが、すぐに彼女は河川敷下の川に背中から落ちた。
目撃者はいない。
彼女はいつまで経っても、川から出てくることはなかった。