好好爺は実験好き(1)



『やぁやぁ、よく来てくれたね』
「こんにちわおじちゃん。お邪魔します」
『我が研究所にようこそ。改めて挨拶させておくれ。私の名前はホイルジャック。仲の良い同僚からはキューと呼ばれているよ』
「こうだしえんです。しえんが名前だよ!今日はよろしくお願いします」
『大人しくしていろよシエン』
「はーい!」


丁寧に幸縁に向かい挨拶したトランスフォーマーはどこか申し訳なさそうに彼女を見ていた。

勉強の時間以外暇をもて余している幸縁は、ラチェットに話し相手になってもらおうと考えていた。
しかし、訓練場で事故があり予定は崩れた。
存在がバレないよう息を潜めていた幸縁を回収し、ホイルジャックの研究所に連絡を入れたのはアイアンハイドで。
事後承諾となったため、三人は先程までメガトロンに怒られていたのだ。


「広いね!」
『君から見たら何処の空間も広いんじゃないかな?』
「うん!でも、場所ごとに色んな物があったりして楽しいよ!この間はね、ラチェが使ってるリペア工具?を見せてもらった!」
『ほう』
「でね、今日は別のを見せてもらおうと思ってたの…」
『そうだったのか』
『アイツが動くことで怪我した連中が直るんだ。楽しみにしてたとこ悪いが、我慢してくれ』
「うん。痛いのはやだもんね。怪我した訓練生さんは大丈夫かな」

その訓練生の中にジャズはいない。
負傷したのは飛行能力を有する部隊であり、ブラックアウトは訓練生ではないため知り合いもいない。
だが、治す力があるにも関わらず使えない幸縁は、負傷者の安否をずっと気にしていた。

『ラチェットに後で聞いてみよう』
「ありがとう!ほいゆう…うぅ……」
『呼びづらいならキューでいいよ』
「え?いいの?」
『あぁ。その代わりと言ってはなんだが、君の話が聞きたいな』
「いいよ!」

代替案を出してくれたホイルジャックに賛同した幸縁は、アイアンハイドと共に語らいを始めた。
しばらくして。


『君がキューブの力を得たのはどうしてかな』
「え゛」
『驚かせてすまない。ただ、純粋に興味を惹かれてね』
「…地球に送られたそれを触れたからです」
『ふむ、それなら君は何らかの施設に忍び込んだのかい?』
「え?」
『我々の技術は人間には扱えない。扱えたとしてもごく一部から真似るくらいだろう。そんな高度な技術の粋が集まっている物質を保管するには、極秘に施設を作り隠蔽工作をする必要がある。よって、君はその施設に何らかの形で入り込んだんだろう』
「あ、はい。拉致されました」
『なんと!!』
『幼子を拉致するとは…』
『利益への固執か情報媒体に対する受容体を確保し文明の発展の足掛かりにしようとしたのか?だがしかしキューブの操作方法は知らんから彼女の能力を利用しようと?もしくは』
『キュー。おい…駄目だ、自分の世界に入っちまった』
「おわぁ…」


一人で考え込んでしまったホイルジャックに顔を見合わせた幸縁とアイアンハイド。


『こうなると長いんだ。腕はいいんだがな』
「うで?」
『発明家としての腕だ。分かるか?』
「うん!物作りが得意なんだね!」
『そうだ。キューは他の科学者や発明家と共に、はるか昔に破損したサイバトロン星の数々の機器を何百年もの間修繕して、市民の生活を豊かにしてきた』
「匠、凄腕職人なんだね!」
『あぁ』

彼は仲間を自慢げに説明する。

サイバトロン星は、アルファ・ケンタウリ星系に造られた惑星。
初代では登場人物の地球人が特別な装備なしで不自由なく活動できていることから、大気組成や重力、気候等は地球と近似していると考えられる。

(破損…。私は、キューブの力のおかげで呼吸も正常にできてるけど。あまり変なところに行かないほうがいいな)

彼女はこっそり用心した。
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