summer vacationでワイワイ!(8)
次に起きた時、外は暗闇に包まれていたが。ジェイドはきちんとおつかいを済ませたようで、空にはたまに打ち上げ花火が上がっていた。
コンビニで売っている花火セットをたくさん買うように頼んだのだ。
「皆、楽しんでくれてたらいいな」
一人鮮やかな夜景を眺めながら、彼が買ってきたお握りと冷やし中華を貪る。
お茶で喉を潤すと、数十時間ぶりの食事が終わった。
眠気は無い。
ベッドサイドの壁に寄りかかり、傷の様子を見ると、想像よりも深く抉れた傷の具合に鳥肌が立つ。
「い"い゛っ、つぅ…」
「大丈夫か」
「?!」
「包帯を貸せ」
いつ入ってきたのか。
色違いで購入してたシャツに身を包んだブロッケンJrが、沙希の出す癒しの炎と外の花火に照らされて立っていた。
素直に包帯を手渡すと、痛みを与えないよう丁寧に処置されていく。
沈黙に耐えきれず、彼女は口を開いた。
「ご迷惑、おかけしました」
「…あぁ。まさか指示をないがしろにされるとは思ってなかった」
「え」
「何のために君を救助者の手当てに回したと思ってる」
「…その能力があるから?」
「馬鹿者。自分の言葉を忘れたのか」
「…あ」
「クラゲにびびって要救助者を助けられないと困るからだ。それをお前…」
「あはは…頭から吹っ飛んでました」
「頼むから、一人でどっか行かないでくれ。何かあったら周りの若いのを頼れ。な?」
「はい。本当にごめんなさい。でも、あまり年下を頼るのはちょっとなぁ…」
(年長者としての威厳が…それに迷惑だろうし)
うんうんと唸りながら悩んでいると。
「なら、俺を頼れ」
「ブロッケンJrさん…?」
「君になら、どんな我が儘を言われても構わない」
笑って流すには苦しい程の眼差しと言葉を向けられ、突如変わった空気に彼の膝の上に置かれた沙希の足が跳ねる。闘いに明け暮れた男の手が、壊れ物に触るように彼女の足を撫でた。
「あっ…!」
「分かったか?」
「分かった、分かったから離してください!」
(こんなことされたら心臓壊れちゃうよっ!)
「…分かってくれたならいいんだ。さぁ部屋まで送ろう。車椅子を借りてきたんだ」
「あ、ありがとうございます」
目の前に車椅子を運ばれた沙希は乗ろうとしたが、途中で動きを止めた。
「その…」
「どうした?」
「我が儘を、言ってもいいですか?」
「あぁ」
「………まだ、側にいてほしいんです」
「!」
「駄目でしょうか?」
記憶が戻らなくても、彼に惹かれている心は分かる。
沙希は勇気を振り絞り、ブロッケンJrの手を握った。
長く感じる数秒後。
ゆっくりと大きな手が、彼女の手を包むと肩を抱く。
そのまま身体を抱き上げると、俗に言うお姫様だっこの体勢になった。
「きゃっ!」
「なら、約束通り。散歩でもしようか」
「は、はいっ」
傷に響かないように歩く、彼の腕の中は暖かい。
すっぽりと収まった沙希は、穏やかな気持ちで夜道を散歩した。
夏の終わりを肌で感じながら、二人は幸せな時を過ごしたのだった。