「辞めないでくださいね」
わたしはその言葉を裏切ってしまった。体調が悪くなる一方で、地方で一人暮らしを続けるのは厳しくなってきたからだ。わたしは社長の事が好きだった。向こうは大して深い意味など無かったと思うけど、一番辛い時に一番心配してくれていたからだ。朝、外で会うとわたしの顔を見てはたまに「顔色悪いですけど大丈夫ですか?」なんて言ってくれたりして。普段から社長は冷酷な感じだったけど「社長はあんたに優しい」と良く周囲の人達は言っていた。自惚れるけど自分でもそう思っていた。よく目も合っていたし、ずっと一緒に居たいとも思っていたけど、わたしには勿体無かった。住む世界が違うのだ。頭が切れていて、きっとわたしは付き合ったとしても平等に隣には居れなかっただろう。こんな病弱で社会に長く馴染めないわたしに社長は不釣り合いだと、バレンタインに意を決してケーキを渡した後に気付いた。そのバレンタインも、人生で初めて片想いの人に渡した。とてもドキドキして、夜にきたラインがとても嬉しかったのを覚えている。


2017/08/01(Tue)
三年前