It’s always darkest before the dawn.
父と母は奴隷だった。
だったというのは、奴隷解放の際に逃れることができたから。
けれど、その父は海賊に殺されて、母は海軍に殺された。
命を踏みにじる奴、ないがしろにする奴、買う奴、奪う奴。
僕は 絶対 許さない。
そんな気持ちを汲んでかは知らないし、知りたくもないけれど、
モンキー・D・ドラゴンと名乗った、革命軍のボス。
―――僕は、革命軍と旅をした。
* * *
――偉大なる航路・白土の島「バルティゴ」
ここには革命軍の本部がある。その1フロアの廊下を二つの影が歩いている。
「ちょうど幹部がそろっているので、顔みせだ…。個性の強い連中が集まっているが、君なら大丈夫だろう……」
前を歩くボスに、僕はただ黙ってついてく。
雇い主と雇われ兵。僕ら二人の関係はそんな感じだ。
観音開きの扉につくと、そこで一度足を止めた。
ボスは振り返って僕を見る。
「我々には現状、やろうとしていることに対して、あまりに人員が少ない。顔合わせがすんだら、早速だが仕事だ……。問題解決を手伝ってもらう。同時に……君の性能テストを兼ねている」
そういって、ボスは僕に一振りの太刀と、一丁の銃を渡した。
僕が受け取るのを確認すると、観音扉を開いて、中へと進んだ。
「注目。彼が新しく我々の仲間となるルイだ……。ギルテオ、彼にもわかるよう現状の説明を」
タバコを吸った男が、ボスの指示で説明を始める。
「南の海の島・タルベテラ王国で3週間前から内戦が勃発している。この島には俺たちの仲間が5人潜入し、この内戦を開幕させたが、同時にこの内戦のせいで帰還出来ない。反乱軍と王国軍が思ったより均衡して内戦が長引いているせいだな。この内戦が続けば共倒れ、ひいては別の海賊・海兵に利を奪われ、作戦が破たんする可能性がある」
「つまり、だ。今回の任務は、5人の仲間の帰還であり、内戦の終結だ」
ボスがわかりやすく、僕に目線を合わせて言ってくれた。
「……そういうのはいいよ。必要なのは、”誰を・どこで” 殺すかだ」
「船の準備を……。ルイ、君はハックについていきなさい」
ハックと呼ばれた魚人が「よろしく」というので、「どうも」と僕は返した。
* * *
タルベテラ王国は金山を保有する金輸出国であり、近年軍事力を強化し、近隣諸島への侵略を始めていた。
正規で武器を仕入れる以外に、秘密裏の取引も行われているらしい。――というよりも、そうでもしないと金の動きが合わない。
また、国外へ戦意を向けるのは、内部事情が芳しくないと相場が決まっている。
潜入した5人の仲間は、これらの情報をつかみ、国王へ不信感を持つ組織へ少しずつ流していた。
内戦のきっかけは、武器の詰まったコンテナが、不慮の事故で爆発したことだった。秘密裏に運ばれていた爆薬が、梱包ミスで爆発したのだ。
「――これまでの国王への不信と、流れてくる内政の不正証拠。鬱憤はつもりに積もって、たまたま、コンテナの爆発がきっかけになったに過ぎない」
だが、戦争を仕掛けるには兵力や武力が満ち足りていなかった。
戦局は泥沼と化し、慢性化した。
「王国の資金も、動ける兵士も尽きてきている。このままでは漁夫の利を狙う輩が上陸してきてもおかしくない。――と、いうか近頃海賊船をこの島近辺でよく見かけるようになっている」
船の中で詳しい説明を聞かされながら、僕はちらりと、直属の上司・ハックの顔をうかがった。
「僕らの仕事は?」
革命軍は武器商船と偽って国に入ることになっている。
「ボスの護衛と退路の確保だな」
* * *
「これはこれは、ご足労どうも」
まだ屋根もついて無事な建物が、現状王国軍の本部の様だった。
その一室に、ボスは案内された。僕とハックは、その建物のすぐ近くにある建物に入り、外からボスを確認した。近くでは爆音が響いている。
ボスと交渉に当たっているのは、この戦場の指揮官の一人だ。
「このまま、あの指揮官の頭を撃ち抜くってのは?」
いくら指揮官に護衛が2人ついているとはいえ、ボス自身相当強い。ボスがその気になれば、あの場にいる3人ぐらい、容易であると思うのだが。
……と、いうより、護衛の数、あまりに少なくない? 舐められてるのかなぁ。
「……だいたい、交渉することなんてある?」
僕はいささか不満気に、ハックに言えば、ハックは苦笑した。
「もし、あいつらが妙なことをしたらすぐに動けるように、俺らがここにいるんだ」
そういわれてしまえば、僕はもう何も言えなかった。
いつでもあの部屋へ乱入し、ボスを逃がせるように、しかして、彼らに存在を気取られないように、モノの陰に隠れながら、銃の引き金に指をかける。
しばらくして、ボスが部屋から出て来て、ハックが持ってる子電伝虫が鳴る。
『交渉は終わりだ…。コンテナを港に置く準備をしろ』
コンテナには武器なんてもちろん入っていない。土塊だけが入ったコンテナを置くだけだ。
積み荷を降ろしているどさくさに紛れて潜入員を船に帰還し、この国から撤退する。
「…あの指揮官は?」
『……何もしなくていい』
ボスがそういうのと同時に、僕は指揮官がいる部屋へ、窓から飛び込んだ。
初めに2発、指揮官の護衛の眉間を撃ち抜いて、驚く指揮官の首を太刀ではねた。
殺しちゃだめと言ってないなら、殺しておいたほうがいい。
ハックがなにか言いたげな顔をしていたが、結局何も言わなかった。
* * *
この後の顛末はあっけないものだった。
指揮官を失った部隊がの統率が取れなくなったことにより、この隙を突いて反乱軍が勢力を増した。なし崩し的に王国軍は、統率が取れなくなり、まだ誰も抑えていなかった金山をついに反乱軍が獲った。その熱量が冷めないまま、王族の首を次々刎ねて、かくしてタルベテラ王国は陥落した。
* * *
「どうして革命を起こすの?」
任務の後、僕は、ボスを見上げて尋ねた。
「世界の不条理を、正すために」
このすぐあと、船は東の海へ出航した。
天竜人を乗せた船が、東の海にある王国へ視察に来るという情報をつかんだからだ。
その日をきっかけに、ボスは、今まで細々としていた活動を、革命軍として大々的に活動する決断を下す。
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