To keep our balance, we must keep moving.
ぽっかりと。
深遠がこっちを見てる。
* * *
夢を見る。
僕が死なせた47人の部下から責め立てられる夢。
自分たちを死地に追いやって、自分だけのうのうとよく生きられるなと、口々に言い募られて、頭の中が飽和する。
――僕だって、死ぬつもりだったんだ。
お前たちを、そこに置いて往くわけにいかなかったから。
――どうして。
「―――」
重たい頭を持ち上げて、布団から出た。夜明け前。不寝番だけが起きている時間。
僕は体を引きずるようにして、部屋を出て、甲板に出る。
海風が頬をなでる。東の向こうが白んで、西の闇が一等暗くなる時間が、僕は嫌いじゃない。
「ルイ、顔色が悪いぜ。まだ寝てろよ」
「寝れないから出てきたんだよリンドバーグ」
それから、リンドバーグは不寝番じゃなかっただろ、と僕は言った。寝不足はお互い様だ。
「この船、バルティゴに向かってないな? どこに行くんだ」
つい数日前、戦争を起こして、終結させた。仕事が終わったから、てっきり本部に戻るかと思ったのだけど。
「奇妙な話を聞いたんだよ。なんでも、幽霊部隊を雇ったとか」
「……はあ?」
先の島での戦争は、そんなに難しくなかったように見える。なら、味方側の話か。
部隊というからには、複数人。
「幽霊達の名前は?」
「名前はしらねぇ。ただ雇い主は幽霊をこう呼んでたぜ」
――シムラクルム。
……僕は、ついさっき見た夢を思い出した。
「それで? その幽霊とこの船の行き先に関係が?」
「その幽霊達が次に向かった島だよ」
南の海。各国でちらちらとクーデターが起こり始めている。
先の島もそうで、
次にいくところも、たぶんそう。
「……ふぅん」
戦場を渡り歩く、幽霊。シムラクルム。
僕はたぶん、彼らを知っている。
* * *
島が見えた。いたるところから灰色の煙が昇っている。
島に下りると、火薬と血のにおいがした。戦場の香り。
この島に来るのはリンドバーグの独断。任務外での戦場。あまり長居をするつもりはない。
――隊長、と呼ぶ声がした。
気のせいかと思って、振り向くと、暗い森だけが目に移る。その森が、いつかとダブって見えた。
この国にきたことはない。けれど、
この先に、シムラクルムと名乗る人たちの”隠れ家”がある。
* * *
船に戻ると、ふてくされたリンドバーグが居た。
幽霊にあえなくて拗ねているらしい。
あわよくば革命軍に勧誘しようとしたらしいことを聞いて、僕が先に見つけておいてよかったと思った。
* * *
耐えられなかった、と言った。
平和で、争いのない生活に、耐えられなかったのだと。
それで結局、海に出て、戦場を渡り歩くように、生きてきたのだと。
そう聞いて僕は、ほかの8人も、そうなのだろうかと、思う。
生き延びたほうが奇跡だ。王国軍に所属していたもののうち、生き残ったのはきっと、僕含めた13人。生きていてほしいと願った。この先、長く。けれどそれは、彼らにとって良い選択だったのだろうか。
「――リンドバーグ、僕は間違ってたか」
「何の話だ。俺が知るかよ、お前何もしゃべってねぇじゃねぇか」
答えがほしけりゃ、それまでを話せとリンドバーグが言うので、それは確かにそのとおりだと僕は思った。
リンドバーグに、僕のこれまでを話すつもりはないから、この話はここでおしまい。
僕はただ黙りこんで、しばらくして、甲板を後にした。
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