What is bred in the bone will not out of the flesh.



 ガラガラと骸骨を転がす音がする。
 積み上げるのは死体だけ。裏切りと流血で築き上げた道。

 ――結局のところ、僕はこれしか生き方を知らないのだ。


  *   *   *


「情報が遅い!!!」

 誰かの怒声が響く。
 本部内がなんだかバタバタとしている。

「あ! ルイいた!! 司令室まで急いで!」

 忙しない革命軍の人たちを眺めていたら、コアラが僕の前を走り去りながら言った。


  *   *   *


 北の海で、革命軍の同志が拠点にしている島が、サイファーポールに割れた。……のが1週間前の話。
 その情報が今届いたんだから、なるほど、これは「情報が遅い」と怒りたくもなる。

「そういうわけだ……。現状どういう状態になっているかはわからないが… 今回の任務は同志の救出だ。部隊を整えるまでの間の斥候を頼む」

 チームは僕とサボ、コアラ、ハックのいつもの面子。
 ベティは本隊の指揮で後から上陸、モーリーとリンドバーグは別の任務に当たっている。
 凪の帯を抜けたら、僕とサボはカラスで、さらに一足先に島に上陸する。


 銃に刀。僕の装備。短剣もいくつか持っているし、靴にも仕込みがある。そんな武器だらけの僕と対照的に、サボの装備は鉄パイプ一本だけ。

「……なんだよ、ルイ?」

 じーっと見すぎていたらしい。視線に気づいたサボがこっちを見る。

「別に?」

 貧相な僕の体に比べてサボは筋肉もある。いいなぁと思ってるけど、サボには絶対言わない。

 島を視認できる距離まできた。
 上空から見る島は、思っていたより静かだった。

「おれは北側、ルイは南側から上陸。それでいいか?」
「問題ない」

 カラスが二手に分かれる。サボを乗せたほうと、僕を乗せたほう。
 僕が島に下りるとカラスはサボのほうに向かって飛んでいった。どこか近くで戦闘中らしい。時折銃声が聞こえて、怒声も聞こえる。
 僕は武器を構えて、静かに音のするほうへと向かう。

 僕は森の木々の上を飛ぶようにかけた。その下の地面を、革命軍の人たちは走っていた。隊として規律はなく、ただ追っ手から逃げるように走っていた。
 すれ違いざまに、僕はその一団に向かって叫んだ。

「――革命軍同志! 本部より救援!! 埠頭まで逃げ延びて下さい!!」

 はっ、とその一団の一人が僕を見上げる。
 そしてすぐに前を見て、遠ざかって行った。

 一団が通り抜けると、白い服の集団――海兵だ――がまとまりを持って、同志たちを追いかけて行く。

「――それは、だめだよ」

 君たちはここで、おしまい。
 僕は木々の間を縫うように、海兵たちに奇襲をかけた。


  *   *   *


 水を得た魚は、こんな気分なんだろうと、僕は思った。
 ここで海兵を一人でも逃がせば、守るべき同志を失う。
 隊として体をなしてなかった同志。きっと、たくさん死んだはずだ。
 だから、一人も生かしてこの場にいさせるわけにはいかない。

――そう思ったら、視界がはれた。
 ものがよく見えるようになった。誰がいま、どこで、何をしているか。
 目の前の敵が、次何をしようとしているか。

 よく視えた(、、、、、)。

 そうして、動いているものが僕だけになって、
 ……たぶん、正気に戻ったんだと思う。

 豪雨を浴びたように、体中血まみれで重たくて。鉄のいやなにおいが鼻をついた。
 

――このまま、船には戻れないなぁ。


 ぼんやりと、そんなことを思った。



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