As soon as man is born he begins to die.



 世界は鉄と火薬で出来ているんだと思っていた。


  *   *   *


 目の前で、人間が爆死する光景も。
 首から赤い飛沫を撒き散らしてくのも。
 蜂の巣にされていくのも。
 ほとんどが子供で、それももう見飽きた。


 ――ここは偉大なる航路・世界政府非加盟国”コルムペリス”。
 僕が生まれたころはまだ世界政府加盟国家だった。
 僕が5つのとき、海賊がこの国を3年かけて乗っ取って、世界政府から脱退した。 
 海賊は恐怖政治の独裁国家を採った。けれどその支配は長くは続かなかった。
 どこの誰かが言い出したのかは知れないが、”民は王の奴隷ではない”という思想が瞬く間に国中に広がった。このスローガンを背負い、民衆は王に対し、反旗を翻した。
 しかし、この時まだ国家は資金が潤沢にあり、民衆の反発は鎮圧された。――だが、民衆に手を貸した何者かがいたらしい。一時は鎮圧したように見えた民衆軍は、再び武器を手に、王宮への襲撃を開始した。
 この一連の武力衝突は1年ほど続き、国土はほとんど焼失、王国軍も民衆軍もどちらの統率も少しずつ崩れてきていた。

 そんな最中で、僕は育った。
 文字の読み書きを覚えるよりも先に、銃の扱いを覚え。
 計算の仕方を覚えるよりも先に、火薬の調合を覚えた。

 僕は、子供だったから、民衆軍は僕を哀れんでよくしてくれた。大人より少し多くのスープとパンを。武器の扱い方も、火炎瓶の作り方も、最初に学んだのは民衆軍の人たちからだった。
 子供の数が多かった。ずっと戦争をしていたし、なにより先の鎮圧戦で主力の大人たちがみんな殺されたからだ。
 それでも民衆軍の士気が高かったから。


 ―――高かったから、一向に戦争が終わらないんじゃないか。


 取り入り方を知った。裏切り方を学んだ。
 人体の限界を知った。口の割らせ方を学んだ。
 良心の呵責は殺した。多分最初からなかった。

 こうして実績を積み上げて、僕は、齢10にして、王国軍側の軍事工作部の1部隊隊長の地位にいた。


  *   *   *


 大きな白旗を掲げた女性が率いる民衆軍が、国王軍を撃破し、王宮裏手から攻め込んできたという報告を受けた。
 僕らがいるのは王宮外も外。そも工作部隊は本部にはいまい。だというのに情報部隊が僕らのところに報告を飛ばしてきた。

「この襲撃を受け、軍事工作部隊総隊長が殉職。現時刻をもってルイ殿に軍事工作部隊総隊長へ昇格。――指揮を」

 僕はぎゅ、と目を閉じて少ない頭を回した。
 軍事工作部隊は、主に少年兵で構成された組織だ。もちろん部隊長は基本的に大人だったし、総隊長は国王護衛兵の経験がある人だったはずだ。でも今はもう違う。

「現状の動ける工作部隊の数は?」
「南方エリア担当の第3部隊、東方エリア担当の第5部隊は戦力維持していますが、北方エリアの第2部隊は部隊の過半数が死亡、西方エリア担当の第4部隊は現在王宮襲撃中の反乱軍により隊員の一人を残し死亡しています」

 また、と報告兵は伝える。

「前線歩兵指揮官より、軍事工作部隊第6部隊は王宮正面の白兵戦に参加させろとの命令が下っています」

 報告兵が一番伝えたかったのはこれだ。
 僕は頭の一番奥が痛むのを無視した。

 軍事工作部隊は、前総隊長の地位が高かったことより、指揮命令系統の上部に位置している。つまり歩兵指揮官が軍事工作部隊に命令することは不可能であった。
 だが。総隊長の死去により、軍事工作部隊の地位はなくなった。

――ただまあ予想通りの流れではある。

 現総隊長の僕の地位は、王国軍の中で最も低い。

「……第6部隊を王宮正面に向かわせろ。王宮正面の指揮官・アズファルトに好きに使えと伝令を」
「承知しました」

 僕の命令を聞くと、情報部隊はその場を去った。
 僕は、僕の部隊に今後の動きを伝える。

「第2部隊は第5部隊と合流するよう、デルタ、伝えてきてくれ」
「了解」
「タージャは第3部隊に、南方には反乱軍のリーダー格の一人がいる部隊がある。場所はつかんであるはずだ。殲滅戦を開始しろと」
「了解」
「残りは僕と、王宮裏手の反乱軍に潜り込む」

 この国の王に、何か忠義があるわけじゃない。
 こんな状況だ。正直僕らは寝返ってもいい。
 予感がする。もうきっと、この戦いは長くない。

 だけれど今はそのときじゃない。
 そのタイミングを計りかねていて。


「作戦・開始」


 ずっと頭が痛いんだ。






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