As soon as man is born he begins to die. 2



 1羽のカラスを拾った。
 戦禍に巻き込まれたのか、羽がひどく折れていた。
 僕は服の端をちぎって帯を作り、木の枝を添えて巻いた。
 戦禍から少しだけ離れた海沿いの崖の近くの洞窟に、いくつかの果物を添えて置いてきた。

 ただ、忍びなかったのだ。
 人間同士の争いに、巻き込んでしまって。
 だから、そんな真似をしたのだと、思う。


  *   *   *


 民衆軍を扇動していた白旗を掲げる女性の名を、ベロ・ベティと言った。
 彼女の口上を聞いていると、どうにも力が溢れてきて、なるほど、これは王国軍が苦戦するわけだと納得した。

 民衆軍の拠点から少し離れた場所にある、王国軍軍事工作部隊第1部隊の”隠れ家”に、僕らは集合した。

「あのベロ・ベティの統率力はかなりのものだ。士気が上がるから、下手な内部の霍乱はうまく作動しないだろうな」
「だけど、このままだと勢いと人数が増えて押しつぶされる。第2・第5合同部隊が壊滅したのを忘れたわけじゃないでしょ」
「子供を攻撃することのためらいも、口上を聞くと無くしちゃうからなぁ。正面からは無理だよ」

 部隊員の報告を聞きながら、僕は必死に頭を回した。

「爆薬の量はどれぐらいある?」
「そんなにないかな、連中、武器庫押さえちゃったから」

「情報統制を崩せないなら……そうだな、足を奪おう。反乱軍の内部霍乱組は、できるだけ多くの反乱軍の人と接触し爆弾を持たせる。足にくくりつけるのが一番だけれど、多分難しいから、ポケットに滑り込ませるとか、服に引っ掛けるのでもいい。できればあの女の口上の後、士気が上がってるときがいい。その後、別働隊が火を浴びせて爆弾に着火させる。混乱に応じて、銃での狙撃を行う」
「ベロ・ベティは次は2日後に再び王宮を攻めるといっていた。狙うならこのときだ」
「わかった。現状の脅威はあの旗手・ベロ・ベティだ。第3部隊を合流させよう。そこで霍乱班・着火班・狙撃班に分ける」
「なら、第3部隊には俺が報告に行こう」
「任せた」

 僕はふぅと息をついた。
 あと数ヶ月程度で終わると思っていたこの戦争は、予想外に長引いた。王宮正面の衝突は、王国軍が民衆軍を撃退。裏手から攻め込んでいた民衆軍はこれを受けて一時撤退。こんな様なことをずっと繰り返して、僕が軍事工作部隊総隊長に昇格して、5ヶ月はたった。僕の年は1つ増えた。
 民衆軍の港に攻撃作戦を仕掛けた第2・第5部隊が、ベロ・ベティ率いる民衆軍に壊滅させられてから、戦況は少しずつ民衆軍側に傾いている。

「第3部隊が来るまで、少し休息をとろう。お前たちも、休めるときに休んでくれ」


 このまま、民衆軍を抑えたとして。
 国を立て直すことが果たしてできるのだろうかと、ふと思う。

 こないだ拾った1羽のカラスは、元気になっただろうか。
 もうの国には来ないほうがいい。別の島に飛んで行ってくれてればいいのに、と。


 眉間を指で揉んで、僕は少しだけ目を閉じた。
 




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