※ネタ→コスプレじゃないんですから派生
「こんばんわお嬢さん。こんなところでどうしたんだい?」
「オォウ…」
初対面での返事が黒歴史確定になってしまったのは訳がある。
秋風の吹く会社からの帰り道。私は通り魔に襲われたのだ。
耳にかけていた白いイヤフォンと髪を引っ張られ。体勢を崩した私にそいつは馬乗りになり、何度も包丁を振り下ろした。
そして目が覚めたら見知らぬ暗い道。
(誰でもビビらずにはいられないと思う)
おかげでちょっと涙目だ。
声を掛けてきた男性はあまりにも長身で、カラフルでポップな見た目をしていた。
帽子にキャンディが刺さってるし、大きな渦巻きキャンディを杖の様にして持っている。
ハロウィンの仮装だろうか?飴が好きなのかな?大きい舌で舐めるのだろうか?だとしたらかわいい。
「えっと、迷子です」
「そんな恰好で?」
自分の姿を見る。
なるほど。胸から下腹部にかけて衣服は切り裂かれ、ちらりと見えてはいけないものまで見えていた。
「……」
「ハロウィンの仮装かな?」
男性はよく出来ているなと笑ってくれた。
普通暗闇に臓物むき出しの女がいたら声なんて掛けないだろうに。
「あはは…ハッピーハロウィーンです。お菓子をくれなきゃ悪戯しますよ!」
「おや。どんな悪戯かな?」
「え!?え〜と…」
イベント事が好きなのか。案外乗り気な彼の様子に言葉が出てこない。
(どうしよう)
「か、考えてなかったです」
「…」
「すみません」
何も思い浮かばない。せっかく話に乗ってもらったのに良い返しが出来なくて俯く。
「なら、私から
悪戯をしよう」
「へ?」
そう言うと彼は杖を振った。
月の光を夜露の様に纏った飴の波が、私の身体をそっと持ち上げる。
童話の魔法使いのような所業に、私は目を丸くすることしかできなかった。
「私は今仕事が終わって暇でね。散歩をしていたんだ」
「は、はあ…」
「よろしければお茶の相手をしてはくれないかね?」
「私なんかでいいんですか?その、服はボロボロですし」
「あぁ。皆お祭り騒ぎをして楽しんでいるのに、私達だけつまらないなんて不公平だろう?」
確かに理不尽なことが起こり、つまらない気持ちになっていたところだ。
(どうせ行く当てもないし)
「……じゃあ、よろしくお願いします。魔法使いさん」
「おやおや。では、期待に応えるよう努力しよう」
ペロリン、ペロリン。
特徴的な笑い声と共に彼が歩き出しながら杖を振るうと、歩調に合わせて飴の波が動き出す。
まるでアトラクションだ。
「わぁ…!」
「そうだ。名前を教えてくれないか?お茶をするのにいつまでもお嬢さんでは味気ないからね」
「みょうじ、みょうじなまえです!魔法使いさん!」
「私はシャーロット・ペロスペロー。これからよろしく頼むよ。なまえ」
「はい!」
この時、ワクワクと辺りを見渡していた私は。チェシャ猫のように笑う彼の様子にちっとも気づかなかったのだ。