鬼のような林間合宿初日、死ぬ気で魔獣の森を抜けて、温泉で峰田くんの襲撃をくらい、この辺は普通の学校だねって笑い合っていたのにさすがは雄英高校。みんな明日に向けて寝るのが早い。

「普通さあ、合宿って言ったら夜更しして恋ばなとか女子トークするものだと思うんだよ。せっかく個性持ってるんだから枕投げデスマッチとかドキドキ先生サバイバルとかしてみたいじゃん? 女子全員寝ました」
「お前女子じゃなかったんだな」
「うるさい爆豪!!!! 小さいけどちゃんと女子です!!」
「ああそうか絶壁……」
「絶壁なの気にしてたんだ……」
「待って今喋ったの誰? しばく」

 暇を持て余した私は今男子部屋に遊びに来ている。三奈ちゃんご飯食べてる時に男子の大部屋見たいって騒いでたのにお風呂でハッスルしたせいかすっかりおねむの体勢になって付き合ってくれなかったんだ。百ちゃんの胸を生でお触りする機会はなかなかないしあそこではしゃいだのは間違いじゃなかったと思う。でもやっぱりお泊まりって言ったら大部屋に集合枕投げデスマッチとかあと怪談とかやって先生来た時同じ布団でドキッ☆とかした(相手をからかいた)かったから勇気を振り絞って男子部屋に単騎突入してきたのにこの就寝体制に入ってる野郎の多いことよ。

「ねえせっかく女の子が遊びに来たんだからなんかしよ!!! 遊ぼ!!!!」
「仕方ねぇな〜みょうじオイラが遊んでやるよ」
「峰田一人だと恐怖を感じるんだけど」
「あ〜みょうじわりぃ。誘ったの俺だけど正直体が限界来てるんだわ」
「上鳴情けないよ!! それでも男ですか!?」
「逆にみょうじはなんでそんなに元気なんだよ……」
「いや初めてのお泊まりだと思うとテンションあがって寝れなくて」
「ガキか」
「なぜ爆豪は会話に参加しないのに的確に悪口だけを挟んでくるのか」

 しかも布団の中に入って寝る準備しているのがムカつく。馴れ合わない一匹狼ってやつですか? うちのクラスにはもう常闇くんとか轟くんとかクールなイケメンがその枠あるからキャラかぶり甚だしいからやめたほうがいいと思う。性格的な意味で惨敗だし。

「う〜んもう皆こんな感じだしみょうじも女子部屋に帰ったらどうだ? 締め出されたら大変だろ」
「このくらいならピッキングできるもん」
「どこで身につけた」
「みょうじその技術について詳しく」
「独学」
「ヒーローっていうより犯罪者なんだけど」
「ねえそれより皆好きな子とか気になる子いないの? お風呂上がりに二人きりとか帰りのバスとか色々手伝うからなまえお姉さんに教えて欲しいな」

 沈黙。
 誘った手前と人柄でかろうじて相手してくれていた上鳴と切島も沈黙。飯田くんは既に寝ていてルールが〜!!っていう突っ込みもないし他のメンバーも大半が布団に潜っている。寝息も聞こえる……。ここまで存在を無視される女の子っていうのもなかなかいないんじゃない?

「つらい……遊ぼうよ……恋バナはいいから枕投げしようよ」
「明日五時半起きだから勘弁してくれ」
「えいっ!」
「あっお前!!」
「アアッ!? 誰だァ、俺に今枕ぶつけたの!! ブッコロス!!!!」
「切島くんでーす」
「覚悟しやがれ!!!!」
「チゲェ!!」
「ぐえっ」
「いてえ!」

 騙された爆豪と命の危険にさらされた切島への一方的なリンチが始まり、逃げる最中あちらこちらで踏まれる二次災害が発生し、爆発音やらなんやらで疲れているところをたたき起こされた1-Aのデスマッチが開始された。狙い通りである。あの温厚な尾白くんまで参戦してるのは寝起きが悪いからだろうか。

「峰田やめろ、それ投げんなくっつく!!」
「思い切り踏まれた恨みだ!」

 中にはそれでも起きない強者もいたが、概ね予想とおりの展開になって大満足。枕ではなく個性が飛び交うのも今時って感じでいいよね。漁夫の利を狙いつつ参戦していると、突然障子くんが「来る……!」と声を上げた。

「やべえ」
「電気消せ」
「隠れろ」
「みょうじもはやく!!!! お前が一番やべえぞ」
「う、うん」

 先生襲来か〜〜! やばい先に隠れる場所を確保してなかった。荷物の影は無理があるし押入れは散乱してるし、ここはもう布団に潜り込むしかない。意を決して一番ドアから遠い位置の乱れてない布団に潜り込む、と、ウッと呻いた声が聞こえた。勢いをつけすぎてちょっと肘を腹に入れてしまった。誰かわからないけどごめん!

「おいお前らうるせーぞ。明日の練習倍にされたいのか」
「すいませ〜ん!」

 頭まで布団をすっぽりかぶった故の息苦しさ。そして誰かの心音が聞こえる。

「みょうじ?」
「轟くんか……ごめん起こして。先生出て行くまで匿って」
「なにやってんだよ」
「ごめん……」

 轟くんは大きいから、身体がはみ出ないようにするには密着するしかない。こんなことなら、セクハラされそうだけど、峰田のところに行けばよかったかも。サイズ的に。いかにも電気がつけられて眩しい、というように自然な感じに寝返りを打って、轟くんが私を横から抱き込むようにした。確かにこの形は私より大きい轟くんが壁になって見えないけどやばい、本当にこの状態はやばい。

「ちょ、轟くん?!」
「暴れんな。声も出すな」
「むぐっ」

 声を出すなということだろうか、口を手のひらで塞がれる。まじで、これ見られたら言い逃れできないんだけど。それから障子くんが先生が完全にいなくなったと声をかけてくれるまで、私は緊張してやかましい心臓の音がどうか聞こえませんようにと、必死に祈っていた。


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